産業とアプリケーション
はじめに
信頼性とは何ですか? この一見単純な質問に対する答えが、製品発売が成功するか、ブランドの評判が失われるかを区別する要因となる可能性があります。最も単純な形に要約すると、信頼性は製品のライフサイクル全体にわたる期待に対する一貫性の尺度です。ただ実際には、信頼性の定義はさらに流動的です。一貫性、期待、製品ライフサイクルは、業界やアプリケーションによって大きく異なります。また、同じ種類のシステムやデバイス内であっても異なります。では、信頼性とは実際に何を意味しますか?
このレポートは、いくつかの主要業界で働くシステムアーキテクト、エンジニア、技術マネージャーを対象とした、Molexの信頼性とハードウェア設計に関する調査で収集されたデータをもとに編集されており、信頼性に関して相反する期待、妥協、不確実性、楽観主義の世界を明らかにしています。今日のエンジニアは、信頼性への期待の高まりとテスト時間の短縮との間でバランスを取るよう迫られています。コストと製造可能性は、パフォーマンス特性と市場投入までの時間と衝突します。また、製品はより複雑になる一方で、労働者の高齢化に伴い知識のギャップが生じており、重要な役割を若くて経験の浅い人材が担うことになります。
しかし、この調査結果は、将来への期待も示しています。人工知能(AI)、シミュレーション、高度な分析などのデジタルテクノロジーは、信頼性にプラスの影響を与えることが期待されています。これらのテクノロジーは、経験豊富な従業員の喪失を補うことができるでしょうか?
このレポートでは、信頼性の現状を検証するとともに、信頼性を設計する際に企業が直面する課題と、近々実現される魅力的なイノベーションを掘り下げます。
調査方法と参加者
調査の目標
シグナル用とパワー用の両方にわたってアプリケーションの要求がますます厳しくなる、新時代におけるハードウェアデバイスの信頼性の重要性を理解します。
調査方法
さまざまなシステムアーキテクト、エンジニア、技術マネージャーが、オンライン調査への参加のため招待されました。彼らに、信頼できるソリューション構築に関連する一連の質問をしました。質問では、信頼性の現状、信頼性の実現に向けた課題、および信頼性に対するイノベーションの影響という3つの主要テーマが取り上げられました。
調査は英語、簡体字中国語、繁体字中国語、ドイツ語、日本語、韓国語、イタリア語、スペイン語で実施されました。回答は、2023年10月6日から10月18日までに収集されました。
参加者
合計756人の適格な参加者が調査に回答しました。全員が、コネクターやその他の電子部品を備えたデバイスの信頼性に影響を与える、ハードウェア設計技術チームの一員として働いていたか、現在勤務しています。参加者は、システムアーキテクチャを直接担当するか、設計エンジニアリングまたは技術マネージャーの役割でハードウェアシステムアーキテクチャを担当する個人またはチームと直接連携していました。代表される業界には、オートモーティブ・輸送機器、コンスーマエレクトロニクスまたはモビリティ、データセンターまたはクラウド、防衛または航空宇宙、エネルギー管理、ヘルスケアまたは医療機器、産業および電気通信またはネットワーキングが含まれますが、これらに限定されません。
調査対象国
調査対象者
調査対象企業
信頼性の現状
重要なポイント:
信頼性の現状は流動的であり、製品に信頼性を設計するために活用されているさまざまなアプローチを浮き彫りにしています。ただし、明らかなことが1つあります。それは、信頼性を犠牲にすることはできないということです。エンジニアの54%は、信頼性に関するエンドユーザーの体験がブランドロイヤルティを高める要因としてますます重要になっていると考えています。お客様が製品レビューに簡単にアクセスでき、デバイスの故障に関する情報が急速に広まる可能性がある時代においては、製品が期待に応えられるようにするためのプロセス、チーム、方法論の整備がさらに重要になります。
しかし、理想的な動作条件下で信頼性を確保するだけでは十分ではありません。回答者の52%は、お客様が埃、水、振動などのあらゆる環境条件下でも信頼性が維持されることを期待していると回答しています。高耐久化は設計基準リストの最上位に移動させる必要があり、環境テスト、シミュレーション、実際のユースケースで実証される必要があります。
企業は、責任の所在、設計基準、タイミングの面で、信頼性をどのように確保しているのでしょうか? また、成功を測定するためにどのような指標を使用しているのでしょうか?
重要なポイント:
ほとんどの企業(64%)は品質チームに依存しており、次にテストエンジニアリング(60%)と製品開発エンジニアリング(58%)が続きます。他の職種と比べると割合は小さいものの、経営幹部の17%が製品の信頼性要件への適合を確保する取り組みに関与しています。
重要なポイント:
他の業界と比較して、オートモーティブ・輸送機器(71%)では、製品が信頼性要件を満たしていることを確認する上で、テストエンジニアリングの役割がより顕著です。自動運転機能、電動パワートレインなど、現代の車両のサブシステムの数と複雑さが増大していることを考慮すると、厳格な信頼性テストがこれまで以上に重要になっています。
32%
信頼性の確保のため、必要以上に製品を過剰に設計する
17%
たとえ信頼性が定義より低い場合でも、最低コストに重点を置く
51%
定義された要件に対してバランスのとれた信頼性
重要なポイント:
企業は、低コストソリューションを追求するよりも、製品の過剰設計を2倍近く優先する傾向があります。信頼性を犠牲にして最も安価なオプションを選択した回答者はわずか17%でした。回答者のぎりぎり過半数(51%)がバランスのとれたアプローチを求めています。
14%
目標は、最小要件を満たすこと
42%
現在の要件を上回る設計
44%
現在の要件に加えて、将来起こり得る要件を満たすよう努める
重要なポイント:
大多数の信頼性関係者にとって、最小限を達成するだけではもはや十分ではありません。実際、42%は現在の業界認証や標準を超えることを目標にハードウェアを設計しており、さらに大きなグループ(44%)は将来起こり得る要件に合わせようと努めています。こうした標準を先取りしようとする姿勢が、製品の過剰設計につながっている可能性があります。
15%
目標は、最小要件を満たすこと
34%
現在の要件を上回る設計
51%
現在の要件に加えて、将来起こり得る要件を満たすよう努める
重要なポイント:
データ通信業界は、AIなどの新興テクノロジーの予想される需要を満たす将来の計画を立てています。調査対象となったデータ通信業界の半数以上は、現在のニーズに対応すると同時に、潜在的な将来の要件にも対応するよう努めています。
重要なポイント:
信頼性は非常に重要ですが、多くの場合、設計プロセスの後半で考慮されます。設計開始前に検証および妥当性確認計画を策定しているエンジニアは、わずか18%です。実際、回答者の約40%は、製品設計の第1段階が完了するまで、信頼性に関する計画を策定していません。
重要なポイント:
事実上すべての回答者が、信頼性を測定するために何らかの形のハードデータを使用していると報告しています。製品の検証および妥当性確認テストの結果が49%でリストの最上位を占めており、その後に44%のフィールド故障率が続きます。
信頼性を実現するための今日の課題
重要なポイント:
設計サイクルの短縮、製品の複雑さの増大、ユーザーエクスペリエンスのコンシューマライゼーションが進む今日の時代において、システムアーキテクトと設計エンジニアは、さまざまな課題に対処するだけでなく、それを克服する必要があります。回答者のほぼ98%が、信頼性を考慮した設計に課題があると回答しており、その中でも最も多かったのがテストにかかる時間(42%)でした。前のセクションの質問では、検証および妥当性確認計画の策定が製品設計プロセスの後半まで延期されることが多いことを示しました。ここで強調されているテスト時間の不足は、迅速で正確な意思決定の必要性をさらに強調するだけであり、専門家による迅速で正確な意思決定の必要性が強調されています。
信頼性は、設計基準やビジネス要件にわたってさまざまな影響が相互に関連する複雑なテーマです。小さな決断や単純な妥協が、非常に有害な結果を招く可能性があります。結局のところ、製品がテストおよび認証基準をどれほど満たしていても、製品の信頼性の最終的な尺度は顧客満足度にかかっています。信頼性を危険にさらす価値のある、設計のトレードオフは何でしょうか? そして、エンジニアはそれらのリスクを最小限に抑えるために、データやサプライヤーパートナーをどのように活用しているのでしょうか?
重要なポイント:
コンスーマエレクトロニクス業界の回答者は、設計サイクルの短縮(46%)と信頼性設計コストの増加(44%)を、2つの最大の懸念事項として挙げました。これらの統計は、低コストでより速く進化する製品に対する消費者の需要が高まり続けていることを浮き彫りにしています。
重要なポイント:
エンジニアが設計のトレードオフを迫られると、信頼性よりもコストと製造性を優先する可能性が高くなります。全体では、97%の回答者が信頼性よりも他の要素を優先すると回答しています。
重要なポイント:
消費者がより軽量で、より洗練され、より高性能なデバイスを求める時代であっても、エンジニアは設計上のトレードオフを行う際に、重量(35%)、機能(26%)、フォームファクター/サイズ(26%)を優先するために信頼性を犠牲にすることには依然として消極的です。
33%
データをベースとしたモデルを使用して、設計プロセス中に考えられるトレードオフの影響を分析している
54%
プロジェクトごとに最も重要な事柄の明確な優先順位を定義し、トレードオフを判断するときはそれらに従う
13%
設計者が作業を進めながらトレードオフについて主観的に判断している
重要なポイント:
設計上のトレードオフの評価にデータに基づくモデルを活用している回答者は、わずか33%です。ほとんどは、事前に決定された設計の優先順位と判断の組み合わせに依存しています。経験豊富な人材はこの意思決定を支えることができますが、人材の流出はこのアプローチにリスクをもたらします。
29%
データをベースとしたモデルを使用して、設計プロセス中に考えられるトレードオフの影響を分析している
60%
プロジェクトごとに最も重要な事柄の明確な優先順位を定義し、トレードオフを判断するときはそれらに従う
12%
設計者が作業を進めながらトレードオフについて主観的に判断している
重要なポイント:
コンスーマエレクトロニクス業界では、トレードオフはできるだけ早い段階で特定される傾向があります。回答者の60%は、設計段階で変更を加えるのではなく、プロジェクトの開始時に明確な優先順位を設定していると回答しています。これは、コンスーマエレクトロニクスが設計サイクルとコストの削減に敏感であり、その結果、設計が開始されると柔軟性が欠如することを反映している可能性があります。
重要なポイント:
サプライヤーとの強固な関係により、製品へのアクセスだけでなく、豊富な知識や経験、データも得られます。調査対象者の91%は、信頼できる実績のあるサプライヤーなしに信頼性の高い製品を構築することはできないと考えています。エンジニアの74%が、設計サイクルの短縮によって信頼性が損なわれる可能性があると考えていることを踏まえると、サプライヤーの専門知識と関与はさらに重要になります。
重要なポイント:
サプライヤーの選定に関しては、ほとんど妥協の余地はありません。調査回答者の96%が信頼性上の問題を理由に部品サプライヤーを変更した経験があり、4分の1以上がサプライヤーを頻繁に変更していると回答しています。
信頼性の未来
重要なポイント:
信頼性の未来は、多岐にわたる複雑な傾向を浮き彫りにしています。製品開発における新たな問題、労働力の高齢化、テクノロジーの進歩などがその筆頭です。回答者の大多数(96%)が、エレクトロニクス製品の全体的な信頼性について懸念を抱いており、その主な要因として、デバイスの複雑化(53%)とコスト削減に対するお客様の期待の高まり(49%)を挙げています。将来の見通しをさらに複雑にしているのは、退職により信頼性に関する専門知識が失われることが予想されることです。専門性の高いエンジニアが退職すると、その役割は総合型人材に置き換えられることがよくあります。そういった経験の浅い人員は、加速する市場投入スケジュールとますます複雑化するシステムのプレッシャーの下で、必要とされる正確な意思決定を行えるでしょうか? 経営陣はその点についてかなり懐疑的で、一部の業界では人材の喪失が壊滅的な影響を与える可能性があります。
しかし、リスクがある場所には大きな好機が存在します。エンジニアは、AIやその他のデジタルツールが、プロセスを改善し、高度なシミュレーションを生成し、データ分析を進化させることによって、信頼性を高める設計に山積する障害の一部を相殺できる可能性があると楽観視しています。これらのツールは、退職する信頼性の専門家をそのまま置き換えるものとして期待されているわけではありませんが、経験や専門知識が比較的少ないエンジニアの能力向上を支援し、その影響の軽減に役立つ可能性があります。
重要なポイント:
接続することがますます一般化し、データ需要が増大する世界において、データ通信業界の回答者の60%が、製品の複雑化を信頼性に関する最大の懸念事項として挙げていることは驚くべきことではありません。絶えず進化する環境の中で、6Gや224 Gbps-PAM4といった新技術の実用化が目前に迫る中、エンジニアはこれまでにない新たな課題に直面することになります。
重要なポイント:
今後5年間で、92%が信頼性に関する高度な専門知識を持つ人材を退職によって失うと予想しており、83%は、その喪失が従業員満足度やブランド評価、さらには収益の損失にもリスクをもたらすと考えています。企業はどのような予防策を講じているのでしょうか?
39%
入念に準備しており、正式な組織的計画がある
54%
問題の可能性を認識しており、各チームがそれぞれ対策を講じている
8%
誰も、それについて何も行っていない
重要なポイント:
リスクは認識されているかもしれませんが、多くの企業は今後数年間に起こる可能性のある「頭脳流出」に対する準備が整っていません。信頼性専門家の喪失に伴うリスクを軽減するための、正式な組織的計画を策定している企業はわずか39%です。
重要なポイント:
新しいテクノロジーにより、従業員の離職の影響が最小限に抑えられる可能性があります。回答者の5人中4人以上が、AIが製品の信頼性を向上させる可能性について楽観的です。AIの将来的な影響について否定的な見方をしているのは、わずか3%です。この楽観的な見方が、従業員の定年退職による知識損失から企業を救うものとなるのかもしれません。
重要なポイント:
データは救世主となるのでしょうか?回答者のほぼ半数は、AI、機械学習(ML)、シミュレーション、データ分析といったデータ駆動型技術の進歩が、エレクトロニクス製品の将来の信頼性向上に向けた最大の希望であると考えています。
重要なポイント:
輸送機器業界の回答者は、AIとMLがエレクトロニクス製品の信頼性向上に最大の可能性をもたらすと考えており(33%)、これは調査対象業界の中で最も高い割合です。興味深いことに、輸送機器業界では、他のデータ駆動型技術(高度なシミュレーション、データ分析)を有望視する回答は、それぞれ6%と低い水準にとどまりました。これは、業界の先進性と、オートモーティブ設計における高度なシミュレーションの長年の使用に起因すると考えられます。
信頼性は品質、エンジニアリングの専門知識、コラボレーションに基づいて構築される
このレポートは「信頼性とは何か?」という素朴な疑問から始まりました。そして答えは明白でした。信頼性とは、設計サイクルの短縮、製品の複雑さの増大、より厳しい環境条件やユースケース、その他の設計やビジネス上の考慮事項などのプレッシャーの下で、製品が期待どおりに動作することを保証する必要性です。また、ブランドの評判は信頼性に依存することも明らかになりました。一方で、信頼性確保の課題が増大するにつれ、組織は課題を克服する最良の手段である専門家の喪失という危険にさらされています。しかし、エンジニアは、AIなどのデジタルテクノロジーが製品の信頼性を向上させ、専門知識の損失のバランスを保つ上で役立つ可能性について楽観的な見方をしています。しかし、そのようなツールはまだ新興のものであり、間違いが許される余地はほとんどありません。
Molexブランドは、最高品質の相互接続ソリューション、比類のない協力的な顧客関係、業界をリードするエンジニアリング専門知識を提供することに基づいています。当社の分野横断的なグローバルエンジニアリングおよび製造の専門家は、設計の初期段階で信頼性に対するリスクを予測して特定し、それらに対処するための最新テクノロジーをすでに備えています。当社は貴社チームの一員として、重要な製品開発要件の実現を支援し、お客様が貴社製品の信頼性に疑問を抱くことのないよう取り組みます。