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エネルギー効率に優れた最新のデータ・センターの主要特性を探る

また、目に見えないことが多いものの、データ・センターへの依存度が急増していることに疑う余地はもありません。分析企業であるIDCが行った「Data Age 2025」というレポートでは、今後4年以内で、生成されるデータの量は年間175ゼタバイト(ZByte)になると予測しています。これは現在の2〜3倍の量です。このレポートでは、2025年までには60億人のユーザーがインターネットに接続し、その1人ひとりが1日に約5,000回データ・センターにアクセスすると予測しています。これは、2015年の10倍です。

クラウドベースのサービスは、特にモバイルデバイスや数十億のIoTノードを経由して増加しており、ますますデータ・センターへの依存が高まっています。これまでデータ・センターは、主にデータを保管するために使用され、アクセス時間は重要ではありませんでした。しかし現在では、需要の高いアプリケーションや音声アシスタント、動画ストリーミングなどの性能をサポートするための、低レイテンシーのオペレーションが「ノルマ」になりつつあります。データの世界の急速な変化を受けて、現代的なデータ・センターが備えていなければならない特性が一新され、柔軟性と適応性、スケーラビリティ、そして何よりも信頼性が重視されるようになりました。そしてあらゆる点で、効率性に対するニーズにスポットライトが当てられています。

データ・センターが消費するエネルギーが不可避的に上昇する中で、データ・センターが効率性を備えていることは「望ましいこと」ではなく「必要不可欠なこと」になりました。国際エネルギー機関は2018年11月、「デジタル化とエネルギー」と題した報告書で、世界のエネルギーの1〜1.5%がデータセンターで消費されると予測しました。効率化により、エネルギーの使用量がデータと全く同じペースで増加することはありませんが、近い将来データ・センターが、さらに大きなエネルギー消費要因となる可能性があることは明らかです。

自前でデータ・センターを構築している組織(またはそのために提携先を利用している組織)は、予測しなかったエネルギー関連の問題に直面しています。そのような組織の多くが、パフォーマンスを定期的にモニターするための様々な測定基準を導入しています。中でも、一般的なのはPUE(電力使用効率)です。これには、IT機器を作動させるために消費する総電力量と、バッテリー管理、UPS、冷却などその他のインフラストラクチャに対して使用される総電力量を測定します。基本的にPUEでは、データ・センターに対して、価値を付加しない活動に対してはできる限りエネルギーを消費しないようにすることが課題です。 

データ・センターの場所の選定 - 主な懸念点

データ・センターが、ますます大きくなる顧客のデータ要件を満たしながら、環境も配慮し、利益をもたらすよう設計し管理することは、様々な側面から取り組まなければならない、難しい課題です。重要な意思決定の1つとなるのはデータ・センターの場所の選定です。現地の経済、顧客との距離、手頃な料金であり信頼できるだけでなく十分な電力の可用性、好ましいネットワーク接続、課税状況などの要因を念頭に置いて決断しなければなりません。環境とPUEの観点からは、地理的な場所が、多くの人が思うより優先順位が高くなります。

たいていは、エネルギーコスト、また再生エネルギーが利用可能な度合いは場所によって決まります。また、必要なエネルギーのコストも決まります。エネルギーコストは、データ・センターの存続期間全体のコストの非常に大きな割合を占めることが多く、その割合は上昇しています。データ・センターが配置されることが現地経済の利益になり、洞察力のある事業者はしばしば場所を比較して、最終的最良の条件を得られるようします。

場所が運営費の低減につながることもあります。サーバーによって発生する熱は損失の非常に良い尺度であり、非効率的な運営に繋がり、廃熱を軽減する必要があります。寒冷気候では、外気を濾過して熱交換器に通すことで1年の大半の冷却が可能となり、空調を使用するという瑣末ではないコストの削減になります。アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)は毎年、世界のどこで「無料の冷却」が可能か、そしてどの程度の期間可能かを記載した、温度ガイドラインを発行しています。「無料」冷却のもう一つの手段としては、湾岸にあるデータ・センターの海水利用があります。

一部あるいあ全部を問わず、環境的要素を使ってデータ・センターを冷却することは非常に魅力的ですが、湿気やその他の有害物質が内部に入り、低品質のコンポーネントを劣化させることは避けられません。さらに、外気補助冷却を備えていないデータ・センターに対して、必要とされるデータ伝送と電力を提供するコネクターの多くは、最高レベルのメッキを施し、そのような条件下で効率的に作動できることを確認するための完全なテストと適格性評価が必要です。

ヨーロッパでは、パリ、フランクフルト、アムステルダムを抜いて英国のロンドンが最大のデータ・センターハブとなっており、495MWのデータ・センター向け電力容量を備えています。そしてロンドンは、高度に確立された豊富なファイバーネットワークを誇り、多くのコロケーションやクラウドプロバイダーが金融の中心地に近いロンドンに拠点を置いています。ただし、ロンドンの不動産価格の上昇や高いエネルギーコストを受けて、超大規模事業者(Facebook、Micrsoft、Amazon)は、税金・土地・エネルギー料金が安いスウェーデンやデンマーク、アイルランドを優先しています。しかし、ロンドンは涼しく温暖な気候のため、1年の大半で外気冷却が可能であり、前述の組織は喧噪し直するかもしれません。

これをシンガポールと比較してみましょう。シンガポールは、アジアのビジネスハブおよび金融中心地としての地位を獲得するためのカギはデータセンターと見ています。シンガポールはデータ・センター向けに290MWの電力を供給しており、この数字は急速に上昇しています。しかし、土地は狭く(したがって高価で)、年間を通して高温多湿な気候のため、いかなる形式の蒸発冷却も不可能であり、冷却機を恒久的に使用する必要があります。強制冷却によるコストへの影響は非常に大きいため、シンガポール政府は、より効率的な電力ソリューションを模索する期間として、2021年まで新しいデータ・センターの建設を一時停止することを決定しました。

段階的な改善が役立つ

データ・センターで発生する熱は、データ・センターの効率性の優れた指針です。エンジニアたちは、廃熱を排除する最善の方法は、そもそも廃熱を発生させないことであることをずっと理解していました。このことを達成するために、特に高度なトポロジーと新しい半導体材料の分野のサーバー電力供給の領域で、効率性を高める多大な取り組みが行われてきました。ただし、電力システム内で大幅に継続的な利益が得られる機会はほとんどないため、設計者はしばしば設計の他の側面に目を注いでいます。

高品質で効率的な相互接続コンポーネントを組み込むことは、エネルギー消費を削減できる一つの方法です。サーバーあたりの節約額は比較的小さいかもしれませんが、データ・センター内のすべてのサーバーで合計すると、かなりの利益になります。例えば、モレックスのバイパスソリューションでは、テンプフレックス高速伝送用Twinaxを活用することで損失の多いプリント基板をバイパスでき、そうすることで、設計者はスイッチまたはルーターのASICからラック内の別のサーバーに接続する際の挿入損失を低減することができます。ヒートシンクテクノロジーの利点は、効率性・信頼性・弾力性が高い温度管理戦略を可能にすることで、銅線ケーブルと光ファイバーケーブル両方の接続での高密度化に対応できることです。将来を考えると、優れたシグナルインテグリティ(信号品位)性能と低挿入損失性能によって、設計者はリタイマーを排除し、リタイマーが消費するエネルギーを節約できます。

モレックスは20年以上にわたって、様々なエンジニアリングテクノロジーを統合するために高度な温度シミュレーションと、高度なソフトウェアを活用し、グローバルな顧客ベースに対して革新的かつ信頼性の高い設計を提供してきました。温度シミュレーションによって、それぞれのエアフローと温度の状態が分かり、エンジニアはそのデータを利用してより良い冷却システムを設計することができます。モレックスは、データ・センターの顧客が抱える課題を理解し、従来のやり方を破る革新的な思考で、温度問題を解決するサービスを展開するようになりました。

環境スチュワードシップへのコミットメント

データを大量消費する世界では、デジタル化への移行は加速する一方です。その結果、柔軟性・適応性・スケーラビリティ・信頼性が、現代のデータ・センターが備えるべき主な特性となっています。しかし、依然として第一の懸念点はエネルギー消費の効率性です。データ・センターについては、地理的な場所が最も重要な意思決定の一つとなります。それでも、場所の問題さえ解決すれば、 環境スチュワードシップにコミットしているイノベーターと提携することで、エネルギー効率の高い設計がデータ・センターの中核となり、システムの効率とサステナビリティを推進できるようになります。