産業とアプリケーション
ここ数年にかけて電気通信業界は、インターネット接続または「スマート」デバイスを重視した「コネクテッド」の時代から、インターネット接続デバイスを通じて獲得される情報が、サービスを実現して生活を改善するために利用できる「データ」の時代へとシフトしました。3Gおよび4G接続からLTEへの移行は、ネットワークを通じて極めて大量なデータが送受信できるようになった第一歩でした。今後すぐに、5G接続でさらにデータ処理レートが高まり、職場や街、自宅でデータを利用できる世界が開くことになります。
5Gの推進
近い将来5Gが使用されるようになる3つの主な方法があります。そうしたアプローチの1つ1つがより優れた接続への需要を押し上げています。
まず、完全にデジタルなライフスタイルを享受したいという消費者は、手持ちの携帯電話でギガバイトのデータをミリ秒単位で読み込める、または処理できる、高度なモバイルブロードバンドが必要となります。このようなユーザーには、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)テクノロジーを長時間利用している層、様々なコネクテッドデバイスやスマートデバイスを利用している層、8K以上のクオリティでHDビデオを鑑賞している層が含まれます。このような消費者は、できる限り高速で、中断のない一貫したシームレスな接続を求めると考えられます。
5Gの需要を促進する2番目のシナリオは、巨大なマシンタイプ通信(mMTC)です。多数の機器に間欠的に少量のデータを伝送する接続機能を提供します。日常生活では、mMTCはスマートシティの形態をとることになるでしょう。あらゆる通りに5G接続の街灯・ストップライト、建物があり、交通の流れなどの都市運営を制御する機能があります。また農村地帯には、収穫高を上げて食品のコストを下げることに繋がるコネクテッド農業システムがあります。
そして3つ目は、5G接続は極めて信頼性が高く低遅延の通信に不可欠でもあるということです。ほぼリアルタイムで繋がり決してダウンしない接続は、自動運転車、患者の遠隔モニター、工場や電気・ガス・水道における産業オートメーションなど、ハイリスクのインフラストラクチャに対する信頼できる土台になります。
内から外への接続
5Gを推進するこれらの3つの要因は、消費者および産業向けの主な運用コンポーネントにも影響すると考えられます。とはいえ、こうしたことは、徐々に展開されているとはいえ 5Gの能力をフルに活用できるデバイスがない限りは成功しません。専門家は、世界各地の都心部・農村部で広く普及するには多くの年月がかかると見ています。短期的には消費者は、都市あるいは地域のローカルの需要に基づいて、個別にテクノロジーが採用されていくのを目にすることになるでしょう。
このバラバラの展開アプローチのため、デバイスは5GとLTEまたはWi-Fi接続をシームレスに切り替える能力を備えていなければなりません。5Gは、レガシーネットワークとは異なるデバイスアーキテクチャを必要とするため、スマートフォンは内部のコンポーネントを根本的に修正しなくてはならず、そのようなデバイスの内部の「スペース」は急速に減少します。
携帯電話内の回路基板はますます混み合い、5Gが出現する以前ですら混み合っていました。アンテナを通じた迅速なデータ処理、データ転送能力に対する需要により、スマートフォンメーカーはPCBを積み上げぜるをえませんでした。携帯電話の薄さを保つために、設計者は内蔵回路のシールドを排除し、同軸ケーブルから、液晶ポリマーフレキシブルプリントケーブルへと移行しなければなりませんでした。現在、5G機能の内蔵に伴い、設計者はmmWave RFアンテナモジュールを組み込む必要があります。通常、適切な接続を実現するには1台あたり3つ必要です。こうした変更によって、デバイス内部のアンテナとシグナルインテグリティの複雑さが増し、バッテリーのさらなる消耗と過熱を回避し、その他のコンポーネント用のスペースの最小化するなどの課題が生まれています。
インフラストラクチャと展開
5Gの接続に必要となる変化の中には、デバイス以外で行う必要があるものもあります。専門家は、5GにはmmWave周波数が必要となるため、スモールセルサイトの数は現在の4Gセルサイト数の10倍になると推定しています。mmWaveの接続はより高速、より信頼できるものの、sub-6GHzの周波数までしか届かず、建物や樹木、雨によってすら簡単に遮断されてしまいます。ビームステアリングとトラッキングソリューションがこのような課題の一部に対処するために使用されることになりますが、特に建物の中で妨害のない5Gの接続を得るためには、スモールセルサイトを増やすことが重要です。
個人宅でスモールセルが一般的になるまでには長い年月がかかるかもしれませんが、5G mmWAveアンテナサイトは、コンサート会場やアリーナ、空港などのキャパシティの高いエリアに優先され、その後、職場やアパート/マンションなどの建物に拡がると思われます。
業界の専門家は、5Gが展開するスピードは、接続能力に対する市場のニーズによると強調しています。そのニーズは、データ主導の接続が消費者の日常生活に反映されていくに従って拡大するでしょう。例えば、エクササイズや睡眠、血圧、その他の身体データを追跡するスマートウォッチを持っている人は多く、そのような情報を手元に持つことは興味深いことですが、ほとんどの人はそのデータを実際にどうすればよいのか理解していません。この場合、5G主導のデータ処理能力は、リアルタイムのモニタリングと合わせて長期的な健康上のインサイトを提供でき、目新しいものではなく備えていなければならないアセットに変わります。例えば、特定の健康状態に対して、医療情報を医師に送信し血糖値をモニターすることができます。消費者および企業は、5Gが暮らしや市場をさまざまな形で豊かにできること理解しており、そのようなサービスに対する要求は高まると考えられます。そして、デバイスはそのことを実現できる必要があります。
5Gの展開がいかにモバイルデバイスを変えるかについてのインサイトは、モレックスのアンテナ用コア製品およびマイクロソリューション担当ディレクターのスティーブン・ドリナンの「周波数は重要」ポッドキャストをお聴きください。