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レポート

境界を打破する: コネクター設計での高耐久化と小型化を統合する

長い間エレクトロニクス産業は、堅牢性と小型化の間にあるトレードオフに取り組んできました。劣悪な環境下での耐久性を与えられたコンポーネントは、多くの場合、追加的な保護のために大型化し重くなります。反対に、小さなフォームファクターに価値を求める小型コンポーネントは、より繊細かつ堅牢さに欠けるものと捉えられがちです。両立が困難な理由とは?

コネクターにおける高耐久と小型化の間のトレードオフ


私達は今、1つのターニングポイントに立っています。先進的なマテリアルサイエンス、革新的な設計技術、そして進化しつづける製造プロセスが、新世代のコネクターの登場を後押ししています。これらのコネクターでは、従来のトレードオフを克服して、他に類を見ないような耐久性と小型さを実現しています。 

空間効率に優れつつ劣悪な環境にも耐え得る相互接続は、オートモーティブ業界で生み出されたもので、新しい電子機能を満載した車両におけるニーズを満たすものとなっています。この性能の組み合わせは、今、他の産業界にも転用されつつあり、最も過酷な環境にも勝つことができる小型で軽量かつ信頼性に優れた製品の開発を可能にしています。

高耐久で小型なコネクターは、エレクトロニクスデバイスが置かれた状況を、どのように前進させるでしょうか? その先を見てみましょう。

私達は今、1つのターニングポイントに立っています。先進的なマテリアルサイエンス、革新的な設計技術、そして進化しつづける製造プロセスが、新世代のコネクターの登場を後押ししています。これらのコネクターでは、従来のトレードオフを克服して、他に類を見ないような耐久性と小型さを実現しています。 

空間効率に優れつつ劣悪な環境にも耐え得る相互接続は、オートモーティブ業界で生み出されたもので、新しい電子機能を満載した車両におけるニーズを満たすものとなっています。この性能の組み合わせは、今、他の産業界にも転用されつつあり、最も過酷な環境にも勝つことができる小型で軽量かつ信頼性に優れた製品の開発を可能にしています。

高耐久で小型なコネクターは、エレクトロニクスデバイスが置かれた状況を、どのように前進させるでしょうか? その先を見てみましょう。

高耐久化と小型化の合流


産業界全体において、設計エンジニアは、耐久性を与えられたコンポーネントは同時に大型でもある、との考えを依然として持っているでしょう。歴史的に見れば、高耐久のエレクトロニクスコンポーネントは大きなフォームファクターを持ち、一方、小型なコンポーネントは繊細なものだとの認識がありました。小ささと力強さがどのように融合するのかを理解するため、その起源を、自動車産業の中で見ていきましょう。  

オートモーティブの革命

必要性こそ発明の母。20世紀の終盤、アンチロックブレーキ、電子式燃料噴射、そして初期のインフォティンメント システムといった機能が生み出されました。これらの電子機能に対する需要が高まるにつれ、より小型で信頼性もあるコネクターも必要とされるようになりました。コネクターを小型化する初期の取り組みでは、しばしば、オートモーティブの厳しい環境に対する堅牢さを、そのコンポーネントから奪う結果となりました。製造メーカーは、環境的な要求が厳しい場合にも耐え得る、堅牢な小型コネクターの開発に向けたイノベーションを促されました。

車輪の上のデータ・センター

電気自動車(EV)およびハイブリッド電気自動車(HEV)の普及は、小型で耐久性が高いコネクターの必要性をまさに強化するものでした。最近の車両で、より多くの電子システムが導入される中、信頼できスペースも取らないコンポーネントのニーズは、ますます確かなものとなっています。平均的な自動車には、1マイル(約1.6キロメートル)におよぶ配線が搭載されており、その重さは100ポンド(45キログラム以上)になると想定されます。

また、現代の自動車では、センサー、カメラ、そして通信システムなどが詰め込まれており、限られたスペース内で高性能な相互接続が要求されます。

オートモーティブにおけるこれらの発展は、現在私たちが目にするような小型かつ堅牢なコネクターの基礎を築き上げ、またそれ以来、自動車や運輸を超えた多くの産業界でも、アプリケーションを生み出してきました。

広がる地平線

オートモーティブ産業で生まれたこの堅牢・小型化のトレンドは、現在、民生エレクトロニクスやIoTデバイスから、工業機械やスマートアグリカルチャーにいたるまで、多種の産業界に広がっています。市販され利用が可能な小型堅牢ハードウェアの広範な選択肢は、設計エンジニアにとってのゲームチェンジャーであり、以下のようなアプリケーションにおいて主要な機能を実現させています:

民生エレクトロニクス

  • フィットネストラッカーとスマートウォッチ
    これらのデバイスは計量かつ高機能であり、日々の使用において、汗や水、そして衝撃に対する保護が要求されます。
  • アクションカメラ
    高密度な内蔵物を収めたアクションカメラでは、信号品位を保ち、また電力供給力を維持する必要があります。同時に、過激な活動中に内部コンポーネントを保護することも重要です。
  • スマートホームデバイス
    スマート温度調節器やカメラ付インターフォンでは、小型コネクターにより専有面積を削減することを可能にします。さらに、屋内および屋外の両方で、そのデバイスに信頼性と高い耐久性を実現できます。
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産業オートメーション

  • ヒューマン マシン インターフェース
    厳しい工場内の状況下においても、タッチスクリーンやボタンが、オペレーターの操作に信頼性を提供します。
  • 産業用ロボット
    ロボットアームは、工業界の要求の厳しい環境で運用するために、充分な量の電力とデータ通信を受け取る必要があります。
  • センサー
    センサー類は、粉塵や極端な振動と温度にさらされながらも、データを継続して正確に収集します。
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医療機器

  • 内視鏡
    これらのデバイスは、治療行為の間、光学画像の品質とデバイスとしての機能を保つ必要があります。
  • インスリンポンプ
    精密かつ中断のないインスリン供給は、内蔵コンポーネント間の強力な接続により実現されています。
  • ウェアラブル ヘルスモニター
    センサー類は、快適かつ気にならない状態で接続され、また汗や動きからも保護されます。
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航空/飛行デバイス

  • 電気式垂直離着陸機(eVTOL)
    低高度飛行での要因や状況にさらされながら、重要な飛行システムが信頼性のある電力と信号通信を受け取ります。
  • 地図作成および測量用ドローン
    高出力LiDARとカメラ装備が、コンパクトな設計の中でも適切に機能し、正確なデータ収集を実現します。
  • 配達ドローン
    ドローンでは、配達業務の厳しさに耐えながら、積み荷の安全とナビゲーションおよ通信の信頼性を同時に確保します。
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スマートアグリカルチャー

  • 垂直農法
    高湿度の環境の中でも、濃度センサーと照明設備の長期的な信頼性を維持します。
  • 収穫量モニタリングドローン
    最適なデータ収集のための飛行中、ドローンは侵入物と振動から保護されます。
  • 土壌水分量センサー
    埋設されたセンサーは、湿気、圧力、衝撃にさらされながらも、信頼性のあるデータ通信を実現します。
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拡大する堅牢・小型化の範囲

小型で堅牢なコンポーネントでは、依然として未開発な部分が多く、またそれらは認識すらされていません。堅牢小型なパーツは、飛行トラクター、宇宙探査、航空宇宙および防衛アプリケーション、ウェアラブルテクノロジー、そして遠隔の測候所などの分野をさらに生み出し、拡大させることができます。

堅牢化と小型化に依存する新興テクノロジー

仮に広く採用されたなら、スマートアグリカルチャーや運輸の未来を決定づけるかもしれない、急成長中の航空テクノロジー、2例について、ここで簡潔な検討を行ってみましょう。

飛行トラクター

スマートアグリカルチャーにおいて、「飛行トラクター」(または農業用ドローン)の出現は、現在知られている農業の姿を大きく再定義し得るものです。これらの無人航空機体(UAV)は、収穫量モニタリング、噴霧、データ収集などの農業業務を、正確に実行することができます。これを行うため、飛行トラクターでは、小型かつ強力なコネクターの利用が不可欠です。

離陸時や気流の乱れた空中での飛行中は振動の多い状況に置かれるため、農業用ドローン内部のコネクターには、振動と衝撃に対する高い耐性が求められます。屋外で動作する飛行トラクター内部のコネクターは、埃、湿気、過剰な温度、殺虫剤や肥料から出る腐食性化学物質など、農業アプリケーションに固有の極端な環境からの影響を受けます。農業用ドローンは、ナビゲーション、コントロール、データ収集などのためのリアルタイムデータ通信に依存します。農業従事者がリアルタイムで情報に基づく意思決定を行なうためのこれらの要件により、広帯域幅かつ低信号損失の小型コネクターが必要とされます。

電気式垂直離着陸機(eVTOL)

克服すべき規制上のハードルは存在しますが、人間を快適に移送する能力を持つドローンについても考えてみましょう。空飛ぶ自動車に最も近いものとして、しばしば引き合いに出されるeVTOLは、個人用交通手段での大きな飛躍となり得るものです。電気による推進システムで駆動され、これまでの常識を覆すこのような航空機は、自動飛行タクシーや飛行型のライドシェア機体などとして、日常化することもあり得ます。

eVTOLの基礎となるテクノロジーが都市型航空交通としてのすべての可能性を開放するかどうかは、堅牢な小型コネクターの存在にかかっています。電気式推進システムは、静粛でクリーンな動作を約束する一方で、飛行に必要なバッテリーの重量という大きな課題も存在しています。この制約は、安全に関する厳密な規制と相まって、軽量かつ耐久性のあるコンポーネントの必要性を高めます。コンパクトなサイズで頑強な素材を使用した小型コネクターにより、飛行機体全体の重量を削減し、航続距離と効率性を最大化し、さらに低空での事故が発生した場合でも重要なシステムの動作性を維持することで、前述の要求事項に対処できます。こういったレジリエンスは、eVTOLの安全性と経済的実現性にとって不可欠であり、これらの乗り物に代表される大規模な投資を守ります。EVTOLの企業は、その積載容量を増加することで、潜在的な顧客ベースを拡大することが可能になります。

現代のエンジニアたちは、「堅牢さ」と「小型」を相互に排他的だと考える必要がなくなりました。高耐久性のミニコネクターは、新たなタイプのデバイスやシステムを実現します。

小型堅牢コネクターを特徴付けるもの


堅牢で小型なコネクターの広範な導入は、各産業界にわたり、設計哲学におけるパラダイムシフトを示唆するものです。小型化と高耐久化は相反する方向性として認識されることはなくなり、今や、コンポーネントの新世代を生み出すために一体化しています。しかし、これらの革新的なコネクターを従来型から分けているものとは、そもそも何なのでしょうか?

2つの世界の最良な点を一体化

高耐久化と小型化の長所を一つにすることで、製品の設計と性能に新しい形を与えることができます。本レポートの文脈においては、小型コネクターとは、基本的にピッチが2.54mm以下のコネクターを意味します。堅牢なコネクターとは、厳しい環境状況と機械的なストレスに耐えられる特徴を持つコネクターとして定義されます。これらの特徴には、振動および衝撃への耐性、侵入物の防御、温度耐性、腐食耐性、および一般的な耐久性が含まれます。

強化されたスペース効率 

エレクトロニクス デバイス内部のスペースを開放することで、堅牢小型なコネクターは、よりコンパクトなデザインと機能性の強化を実現します。これは、サイズと重量の制限が主要因となるアプリケーションにおいては、特に重要です。全体的にコネクターの専有面積を削減することで、エンジニアは、より良い性能でより長いバッテリー寿命を発揮する、軽量なデバイスを設計できるようになります。

信頼性の向上

堅牢小型のコネクターは、その頑強な構造と、過剰な衝撃や振動や温度そして環境面での危険性に対するレジリエンスにより、困難な環境の厳しさに耐えるよう設計されています。このように耐久性を強化することは、より長い製品寿命、削減された保守要件、要求が厳しい動作状態での向上した信頼性があることを意味します。例えば、過酷な状態でコネクターが15年の寿命に耐えなければならないオートモーティブ業界では、前述の頑強なコンポーネントにより故障と停止時間が最小化され、車体寿命全体で一貫したパフォーマンスが保証されます。同様に、装置が持続的な振動と化学物質にさらされる産業分野においては、耐久性のあるコネクターが、システム全体のパフォーマンスを維持する重要な役目を担っています。

モレックスのリライアビリティ ラボ: プレッシャー下でのパフォーマンスを保証

信頼性へのモレックスのコミットメントは、設計や素材選択の範囲に留まりません。モレックスのグローバル リライアビリティ ラボでは、振動、温度サイクル、さらに強い化学物質への露出など、実世界のストレス源を再現した極端な状況下において、コネクターの厳密なテストを行っています。この包括的なテストにより、モレックスコネクターの性能は業界標準を満たすだけでなくそれを上回っており、エンジニアに対しては、長期的な性能と信頼性についての自信を与えています。弊社のラボは、研究室優越性(ラボラトリーエクセレンス)に関し国際的に認知されたISO/IEC 17025標準に従っているもので、顧客プロジェクトのテストと評価において、最高度の品質と能力を確保しています。

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信号品位の最適化

コンパクトながらも堅牢小型のコネクターでは、高い信号品位と電気的性能を維持しています。これは、革新的な接点設計、最適な信号の引回し、そして強力な伝導性を持つ高品質な素材の使用により実現したものです。高レベルの電磁干渉(EMI)や無線周波数干渉(RFI)がある困難な環境においても、データ伝送の信頼性、電力供給、さらに全体的な機能性を保証しています。

設計柔軟性の向上

堅牢小型のコネクターは、エンジニアがより多くの機能をより小さな空間に適合させることを可能にし、同時に、新たなフォームファクターを探索することで、以前の世代では不可能であった新規の製品を生み出せるようにします。新たに解放されたこの設計自由度は、製品デザインを革新に導きます。現在のスマートウォッチ設計者は、典型的な腕時計サイズの中により多くの診断機能を取り入れて、心拍数、血圧、酸素飽和度などのバイタルサインを、遠隔から継続的にモニタリングできるようにしています。

革新にともなう課題

堅牢小型コネクターは有益な利点を与えてくれるものですが、同時に、設計および製造上の障害も発生します。

素材の選定および処理

小さなフォームファクターの中で信頼できる信号と電力伝送を実現するため、求められる機械強度と電気特性を与えながら、軽量、小型、そして頑丈なコネクターを設計することは容易ではありません。複雑なコネクター内で各素材を配置することは、しばしば専門的な技術を必要とします。その例としては、超小型成形、高精度機械加工、レーザー溶着、選択的めっき加工などが挙げられます。これらの技術は、小型で壊れにくいコネクターが要求する入り組んだ形状や厳密な許容力に、エンジニアが取り組むことを可能にしています。

  • 温度管理
    デバイスがより小さくなり電力消費も多くなると、放熱の問題が生じてきます。表面積が小さくなる小型コネクターは、熱を放散させることが難しくなり、これは、性能低下やデバイスの故障を引き起こす場合があります。
  • 信号品位とクロストーク
    複数の信号ラインを小さなコネクター内に組み込むことは、クロストークと信号干渉のリスクを高め、データエラーとシステムの不安定さの原因にもなります。デバイスの相互接続が増加する中では、信号品位の確保は信頼性のための重要な課題です。エンジニアは、差動信号、遮蔽、PCBレイアウトの最適化などの手法を通じてこれらの問題を軽減しており、コンパクトなコネクター内部であっても、高性能のデータ伝送を実現しています。
  • 機械的信頼性
    ロック機構、ストレインリリーフ機能、接点設計などの特徴を導入することで、コネクターを振動、衝撃、そして繰り返しの嵌合サイクルといったストレスに耐えるよう最適化できます。
  • 製造上の複雑さ
    小さく頑強なコネクターの製造では、多くの場合そのプロセスは複雑で許容誤差も厳密であり、特別な設備が必要となります。製造者には、注意深い計画と最適化が求められます。

しかし、この課題があったとしても、堅牢小型なコネクターの利点は既に認知されています。これらの課題に対する解決策の多くは、マテリアルサイエンスの進歩により提供されたものです。

マテリアルサイエンスの進歩

小さく頑丈なコネクターに対し増加しつづけるニーズを満たすための、小さな重量、耐久性、電気的伝導性の理想的な組み合わせを提供する革新的な素材は、エンジニア達の関心をますます集めています。

銅からの脱却

より軽量で効率的なデザインに対する要求に後押しされ、エンジニア達は、銅の使用から離れて代替的な素材を好むようになっています。銅は導体として優れていますが、その重量と容積は課題となり、それが「軽量化」のトレンドにつながります。

アルミニウム合金や特殊な高張力鋼などの軽量な代替案は、銅に匹敵する、あるいは上回る導電性を実現し、同時にコネクター全体の重量を大幅に削減できます。しかしながら、これらを銅と比較した場合の熱膨張係数、腐食耐性、および機械的性質などの要素を、エンジニアは注意深く検討することが必須です。意図したアプリケーションでの環境的ストレスや動作状況に、選択した素材が耐えられることを保証するには、徹底的な評価を完了する必要があります。

高性能ポリマーの弾力性

高性能ポリマー(HPP)は、従来型素材の持つ限界を超越するもので、軽量な構造と並外れた耐久性の両立を実現します。このような先進的素材により、小型・軽量なコネクターを作れるようになるだけでなく、過酷な状況の中での耐久力と弾力性も強化されます。

HPPには非常に優れた機械的性質が備わっており、高い伸張強度、剛性、衝撃耐性などが、コネクターを物理的ストレスに耐えられるようにします。加えて、HPPの優れた温度安定性は、広い温度範囲全体において、コネクターの構造的整合性と電気的性能を維持できます。ポリブチレンテレフタレート(PBT)では、強度、剛性、そして化学的耐性をバランスさせることができ、コネクター筐体と他のコンポーネントのための多用途な選択肢となっています。

例えば液晶高分子(LCP)は、極端な高温に対し非常に優れた耐性を示すので、自動車のエンジンルーム内や航空宇宙エレクトロニクスなどのアプリケーションにとって理想的です。他に、ポリフタルアミド(PPA)のような一般的なHPPは、融点温度が高く吸湿性が低いことで知られています。この性質により、要求が厳しい環境の中での寸法の安定性と機械的強度が実現できます。

革新的な小型化技術

堅牢な小型化を達成しようとすると、エンジニアは独特な難題に直面します。つまりコンパクトさを犠牲にすることない頑強さの実現です。このジレンマに対しては、以下の進んだブレークスルーによるクリエィティブなアプローチが必要です。

高密度ピッチレイアウト

ピッチ間隔を縮小することでの接点密度の向上は、密集に関する問題をエンジニアに与えます。小さな専有面積が機能性を高めることの利点が否定できないとは言うものの、接点同士が近接することでクロストークのリスクは高まり、また、気流の低下と高い熱密度は、効果的な熱放散にとっての課題ともなります。これらの問題を軽減するため、エンジニアたちは、高度な信号引き回し技法や、遮蔽と絶縁手法とともに、ヒートシンクやサーマルビア(放熱穴)などの熱管理策を活用しています。

また、高密度ピッチのレイアウトには、製造と組立工程で高い精度が要求されます。しかしこれらの問題が解決されたなら、信号品位の向上、信号損失の低減、そして一部では電力消費の削減までも実現可能になるのです。

マルチファンクションターミナル(MFT)

用途範囲がより広くなるマルチファンクションターミナル(MFT)は、小型コネクター技術においての飛躍的な発展を示すものです。消費電力、信号伝送、さらにロック機構などの機械的性質まで、複数の機能を単一のコンパクトなユニット内に統合することで、MFTは複数のコネクターの必要性を排除します。これにより、デバイスの設計が合理化され、コンポーネント数の削減ができます。またMFTの設計が進歩するにつれ、さらなる機能をこれらのコンポーネントに統合することも想定でき、これがコネクター設計の限界を押し広げます。

小型プリント基板(PCB)コネクター

他に比べてかなり小さい専有面積と、緻密なピッチの接点が特徴となっている小型プリント基板(PCB)コネクターは、デバイスの専有面積の縮小および機能の向上に貢献します。これらは、現代のエレクトロニクスデバイス内部で複雑な神経センターとなる、より小さなPCBを実現することができます。

この非常に小さいという特徴を達成するため、小型PCBコネクターでは、先進的な接点設計と素材の力を活用しています。一部の設計では、ばね荷重式の接点を使用して、熱的な膨張・縮小に対して安定した接触力を維持しています。他には、金やパラジウムなどの導電性が高い素材で、電気抵抗と信号損失を最小化しているものもあります。これらは、システム全体の重量や消費電力の低減に貢献しており、小型PCBコネクターは、バッテリー駆動のポータブルデバイス向けに理想的なものとなっています。

堅牢小型コネクター技術における進歩は技術的な創造性の証であり、サイズと耐久性の間に内在するトレードオフを克服して、コンパクトかつ弾力的なコンポーネントを創出しています。この進化は継続しつづけ、エレクトロニクスデバイスを革新する新たな可能性を産業界全体で開放します。

小型化高耐久化における必須事項(環境的課題と解決策)


堅牢小型コネクターは、広範な産業界で革新を実現しています。しかし、これらの多様なアプリケーションの中で信頼性のあるパフォーマンスを保証するには、コネクターに対して、環境における各種の危険に耐えるような設計が必要となります。サイズと質量が小さい小型コンポーネントは、環境要因の影響とそれによるダメージを受けやすくなっています。この脆弱性は、高耐久化で信頼性と機能性を維持することの重要性を、より強いものとしています。

高耐久化は、単純に保護レイヤーを追加したりコネクターを大きくしたりするだけではない、全体的なアプローチであり、設計と素材選定から製造およびテストまでの、ライフサイクル全体の検討が必要です。このセクションでは、コンポーネントの信頼性と、過酷な状態の中で最適な性能を発揮するコネクターを作るためにエンジニアが取った戦略を、環境的要因がどのように損うことになるのかを見ていきます。 

振動

エレクトロニクスデバイスは、しばしば、ぶつかり合ったり揺すられたりします。それが工場のフロア上であっても、あるいは航空宇宙アプリケーションの高空環境の中であっても、振動は、繊細な電気コネクターに大きな障害を引き起こす可能性があります。

振動の影響の軽減は、設計エンジニアにとって不可欠です。これには、振動の周波数や振幅と期間、および、意図されたアプリケーションの中でのコネクター特有の脆弱性についての、深い理解を必要とします。振動の脅威と戦うため、エンジニアたちは、小型コネクターの振動耐性を強化する以下のようなソリューションを実装しています。

  • ポジティブロック機構
    ターミナル ポジション アシュアランス(TPA™)やコネクター ポジション アシュアランス(CPA)といった技術により、安全な嵌合が提供され、振動が原因で意図せずに嵌合が解除されることを防いでいます。
  • ストレインリリーフ機能
    柔軟な外側被覆や曲げ制限用ブーツなどの手法を導入することで、コネクターは配線の破損から保護され、また、はんだ接合の壊れやすさに対処しています。
  • フローティングコンタクト設計
    フローティングコンタクト設計では、コネクター筐体内の接点を硬く固定はしません。その代わりに少量の自由度が与えられ、その空洞の中で常に少しだけ動くことが可能なように設計されます。この浮動効果を実現するためのいくつかの手法としては、ばね荷重接点や、柔軟な接点ビーム、あるいはフローティング コンタクト キャリアの使用などがあります。
  • 埋め込みと封入
    コネクターの筐体内をエポキシのような弾力性のある素材で満たすことで、振動の影響を低減し内部コンポーネントを保護できます。この封入層は、振動を吸収し消散させる緩衝材として機能します。また埋め込み処理によっても、外部環境からの汚染物質に対する保護バリアが提供されます。

Micro-Lock Plusコネクターの特徴

モレックスMicro-Lock Plusコネクターは、振動の課題に対応するため頑強なポジティブロック機構を使用しており、確実な嵌合を保証し、振動が強い環境において偶発的に脱落することを防ぎます。さらに、コネクターが持つ金属はんだタブが、はんだ接合に対し追加のストレインリリーフ機能を提供し、機械的ストレスと振動に対する耐性をさらに強化しています。

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保護等級(IP)

湿気、埃、腐食性化学物質は、常にコネクター内部への侵入ポイントを探しており、電気的接続を破壊する脅威となっています。保護等級(IP)には業界標準に準拠すること以上の意味があり、これは、最新デバイスの機能性と信頼性にとって不可欠な、基本的設計検討事項となっています。

このIPの課題は、小型コネクターにおいてより大きくなります。小型のフォームファクターと厳しい許容誤差は、逸脱が許される範囲を狭め、外部の汚染物質による破壊的な影響を受けやすくします。たった一滴の水、あるいは一粒の埃が腐食や短絡につながり、最終的にはデバイスを故障させます。しかしながら、設計者が発揮する技術的創造力により、これらの要因に対して小型コネクターを強くするソリューションが開発されてきています。

  • 防水とガスケット
    オー リング、ガスケット、その他のエラストマー防水により、外部要因が内部に侵入することを防ぐ、物理的バリアが形成できます。圧縮永久ひずみ(圧力がかかることで素材が永続的に変形すること)や化学的耐性などの要素は、エンジニアが長期的な性能を保証するために理想的な防水素材を選択する際に役立ちます。防水やガスケットには、一つですべてに対応するという決定はできません。
  • 防水キャップとカバー
    追加的な保護キャップやカバーは、特に保管時、取り扱い中、そして運送中の侵入物に対する特別な保護層をコネクターに提供します。

Squbaコネクターの特徴

UL承認IP68等級の防水を使用して侵入物の攻撃に対抗するよう設計された、モレックスのSqubaコネクターでは、埃、そして水中での長期的な侵襲に対する保護が強化されています。この頑強なシーリング処理は、保護キャップと組み合わされ、取り扱い中と組立中における防水性を守り、劣悪な環境の中であっても信頼できる性能を保証します。

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極端な温度

デバイスがさらされる温度は、ますます極端になってきています。オートモーティブのエンジンルームでの焼けるような熱から、宇宙探査におけるゼロ度以下の状況まで、極度の温度は、電気コネクターに重大な障害を起こす可能性があります。

注意深い検討と革新的なソリューションを要求する、熱回復性のための設計作業は、困難な挑戦になります。熱的ストレスは、システムを動作不能にする可能性がある、多くの問題を引き起こすことがあります。高い温度は素材の劣化を加速させ、プラスチックの軟化、金属の膨張、そして接着不良の原因となります。もう一つの極限である低い温度は、素材をもろくして、ひび割れや粉砕を引き起こします。こういった状況の中で最適なパフォーマンスを保証するために、いくつかの主要な対策があります。

  • 高温度ポリマー
    すでに述べてあるとおり、PBT、LCP、PPA といった素材には、非常に優れた温度安定性があります。例えば、PBTの連続使用温度範囲は最高で150℃であり、自動車におけるボンネット下のコンポーネント、インテリアパーツ、そして電気コネクターとして、妥当な選択対象となっています。
  • 低温度素材
    極端な低温にさらされるアプリケーションにおいて、低いガラス転移点(Tg)と高い衝撃耐性を持つ素材(一部のポリウレタンやシリコン エラストマーなど)は、比較的もろくなりにくいです。
  • 温度管理
    ヒートシンクやサーマルビア、その他の対応策が、コネクター周辺のPCBやデバイスの設計に一体化されることで、効率的な熱の放散をサポートすることができます。これは特に、大電力アプリケーションに対してや、気流が制限された環境の中で重要となります。
  • 接点素材とめっき
    金やパラジウムのメッキは、酸化と腐食に対する優れた耐性を持つので、高温にさらされた場合であっても信頼性を確保できます。高い融点と不活性な性質が、これらを、熱の劣化効果からベース金属を保護するための理想的な素材としています。

こういった環境的な課題に対処することにより、エンジニアは単純にリスクを低減するだけでなく 、積極的にエレクトロニクスの未来を形作っています。小型コネクターの高耐久化は設計原則の基本をなすもので、最も要求の厳しい状況の中でも最新テクノロジーが普及することを促進しています。

DuraClik™コネクターの特徴

モレックスDuraClik™コネクターは、小型化と熱回復性を混み合わせた典型的な例です。オートモーティブでの極端な環境に耐えるため、高温PBTの筐体と安全な端子保持を備えています。この頑強な設計により、高温と振動が一般的である要求の厳しいアプリケーション内での、信頼できるパフォーマンスが保証されます。

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これからの堅牢小型コネクター


小型化と高耐久化の集約は目標地点ではなく、このジャーニーはこれからも続いていきます。デバイスの進化は継続し、コネクターはそれを実現させていかなければなりません。継続する研究と探索は既存の課題に対処するための進歩につながり、さらにまた、厳しい環境の中のエレクトロニクスデバイスについて、新たな可能性も開放していきます。より小さく軽量で、さらにパワフルなデバイスを目指す中で、コネクターは信頼性、性能、そして寿命を保証するための、軸となる役割を果たすことになります。 

新興トレンド

物理学で許されるコネクターの小ささ(そして丈夫さ)とは、果たしてどの程度になるのでしょうか? 短く言ってしまえば、私たちはまだそこに到達していない、ということになります。新たに生まれたトレンドが、よりコンパクトで信頼性があり、機能的なコネクターの限界を押し広げています。

柔軟な電子回路(FPCとFFC)

フレキシブル プリント基板(FPC)とフレキシブル フラットケーブル(FFC)は、デバイスにおけるフォームファクターと機能性を形作ります。これらに本質的に備わる柔軟性は、性能を妥協することなく複雑な形状に順応できるので、エンジニアに設計上の自由度を与えます。この進歩は、ウェアラブルデバイス、曲げられるディスプレイ、インプラント型の医療デバイスや柔らかいロボットなどの可能性を開いています。

FPCとFFCはコネクター設計に直接取り入れることができるので、硬質なPCBの必要性をなくし、全体的なサイズと重量を低減します。

Premo-Flex™ FFCの特徴

モレックスPremo-Flex™フラットフレキケーブルでは、ピンの交互配列と緻密なピッチという革新的なデザインを備えており、空間に制約があるアプリケーションにおいて、より多くの回路数を実現できます。耐久性と柔軟性があるPCBを提供できるこれらのソリューションでは、市販品とカスタム品の広範なオプションがご利用になれます。

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ナノテクノロジー(素材とコーティング)

分子レベルでコネクターの素材を強化する、ナノスケールコーティングは、コネクターの接点に並外れた硬さや、耐摩耗性、腐食耐性などを与えることができます。カーボンナノチューブやグラフェンといったナノ素材は、電気的および熱的に、上質な伝導性を提供します。これらの素材をコネクター設計に取り入れることで、向上した信号品位を備える、より小型かつ効率的なコネクターを実現できます。

さらに、その先を探っていくと、ナノ技術素材には、自己修復能力を備え微小なひび割れが自動的に修理するといったような可能性が見えてきます。マイクロカプセル、あるいは脈管ネットワークなどのナノ素材は、損傷を修復するための治癒媒介を放出したり、化学反応をトリガーしたりできます。

3Dプリンティング(積層造形)

既に、多くのカスタムコネクター プロジェクトにおける選択肢となっている3Dプリンティングには、堅牢小型なコネクターの設計および製造を変革する可能性が秘められています。積層造形により、これまで従来型の製造手法では不可能であった、複雑な配置と洗練された内部構造の創造が可能になります。3Dプリンティングはオンデマンドでの製造を可能にするので、リードタイムと在庫コストを縮小し、低コストながらも時間を要する少量生産での稼働を促進します。加えて、3Dプリンティングにより新規デザインの試作を迅速に行えることで、開発サイクルも加速し、エンジニアはコネクター性能の最適化の繰り返しを、より迅速に実行できるようになります。

市場の概観

堅牢小型コネクターのグローバル市場は、大規模な成長に向けた準備を完了しています。広い範囲の産業界全体で、これらの製品に向けられる絶え間ない要求には減速の兆しは見られません。2024年2月のヴェリファイドマーケットリサーチによる、小型頑強コネクターと小型高耐久コネクターに関する市場調査では、安定した複合年間成長率(CAGR)が予想されており、その推測値は毎年6%を超えたものもあります。

こういった需要に加え、標準化への取り組みも堅牢小型コネクターの導入を加速することが予想されます。寸法、電気特性、そして環境的性能に関する、業界全体での標準が出来上がることで、異なるコネクターシステム間での互換性にもつながっていきます。この標準規格により、設計と製造のプロセスが合理化され、コネクターのアクセス性がさらに向上します。

堅牢小型コネクターの未来には、引き続きイノベーションが必要です。コネクター設計の新たな可能性に進むためには、応用的な想像力の継続するサイクルが期待されます。これらの新興トレンドを活用するエンジニアは、この責任を担うための良いポジションに立つことになります。

モレックス: 世界をもっとコネクテッドに


エレクトロニクス コネクターでの小型化と高耐久化の成功は、すでに広範囲におよぶ利益を生み出しています。コンパクトで耐久性のある現代のコンポーネントは、従来品の性能を上回っているのみならず、デバイスの設計と機能性にも多大な進歩をもたらしています。EVに内蔵された複雑なエレクトロニクスシステムから、私たちの健康をモニタリングするウェアラブルセンサーまで、堅牢小型のコネクターは最新テクノロジーを後押しし、産業界を変革し、さらに生活を向上させています。

これらの多様なアプリケーションでの小型で堅牢なコネクターの重要な役割を認識しつつ、モレックスでは、具体的な産業課題に対処するため設計されたソリューションの、包括的なポートフォリオを構築しています。例としてDuraClik™コネクターシステムでは、オートモーティブや産業界での要求が厳しいアプリケーションにとって理想的な、大きな振動と高温の環境における頑強なパフォーマンスを提供しています。一方、モレックスSqubaコネクターでは、非常に優れた侵入物保護力を備えており、過酷な屋外の状況においても信頼できる動作を保証します。スペース的制約が最優先なアプリケーションに対しては、Micro-Lock™ Plusコネクターシステムが、信頼性を損なうことなくコンパクトなサイズと安定した嵌合を実現します。

接続ソリューションのグローバルリーダーとして、モレックスは小型化と高耐久化の限界を押し広げることにコミットしています。エンジニアが直面する課題についての深い理解とともに、モレックスは先進テクノロジーの研究・開発を継続しており、進化し続ける市場からの要求に応えています。広範囲におよぶ、当社の高性能コネクターのポートフォリオには、多様なアプリケーションが包含されています。このレポートで取り上げた原則や新興ソリューションを採用しながら、モレックスでは、パフォーマンス、信頼性、耐久性を基準に置いた接続ソリューションを供給しています。さらに接続しあった未来を生み出すため、ともにイノベーションを継続していきましょう。

次世代の革新を実現

事実上あらゆる業界において、次世代のテクノロジーと革新が急速な進展を見せています。これらは高度な特性や機能を企業と消費者にもたらしますが、接続性に関する新たな課題も引き起こします。

モレックスは次世代の革新を実現する上で最前線に立ち、さまざまな業界にわたりお客様と連携して、接続性における複雑な課題の解決を支援する高度な相互接続ソリューションを提供しています。