現代の顧客はカーディーラーに行くと、簡単に品質を確認したり、航続可能距離や価格を尋ねたりすらしません。その代わり、顧客はその車が車道を外れずに走行できるか、緊急時にブレーキがかかるか、暗がりの雨の中で歩行者を感知できるかを知りたがります。その車はカスタマイズされたエンターテイメントシステムを同乗者に提供するか? サスペンションはボタンをタッチするだけで調整できるか?

競争の激しい自動車の世界において、メーカーとディーラーは、ソフトウェア駆動型の機能をいっそう強化させるプレッシャーにさらされており、このことが自動車業界の性質を変化させています。車はもはや単なる車ではありません。カスタマイズされた多数のアプリを実行するモバイルデータ・センターなのです。2030年までに、新車購入コストに占めるエレクトロニクスの割合は、2010年の35%から上昇して50%を占めることになると予測されています。

ゾーンアーキテクチャといった設計上の進展のおかげで、この新しいソフトウェア定義型自動車エコシステムはさらに拡大する運命にあります。これは、アルゴリズムがさらに多くの機能を引き受け、電気自動車が普及するからです。しかし、いくつかの理由から、メーカーには既に重圧がかかっています。

ひとつの問題は、メーカーが、接続を追加インストールするスペースを使い果たしていることです。つまり、メーカーは人気のあるどの機能を搭載するかを選りすぐる必要があるため、一部の顧客を落胆させ、マーケットシェアを失うことは避けられません。

また、苛酷な車内外の環境で精密な電子装置の信頼性を確保する必要もあります。シャーシ内では、100度を超える温度に頻繁な強振動が相まって接続が失われかねません。外気から侵入する湿気によってコネクターの内部が結露する可能性や、埃の侵入や鋳造部分に深刻な腐食が発生する可能性もあります。この状況は、トラックやトラクターで特に高頻度に見られます。車両が路上を走行する前の段階でも、製造中に水が浸入したり、アセンブリーエラーによって操業中にコンタクトバックアウトが発生する可能性もあります。

車両に搭載されるソフトウェアおよびハードウェア接続の数が増えるにつれて、問題が発生する可能性も高まります。運転支援システムはますます自律的になっていることから、リスクもリターンもますます大きくなっています。事故防止、そして命を救う可能性には、膨大なデータをほぼリアルタイムで確実に転送できる必要があります。

電子機器における最近の革新によって、メーカーはこうした複雑な問題を解決しやすくなり、将来のさらに高度な自動化への道を開きやすくなっています。例えばエンジニアは、パワーステアリング、カメラ、センサー、ブレーキシステム、外部照明、外部ミラー向けに小型コネクターを開発しています。こうしたさまざまなテクノロジーパッケージには小型の端子、ピン、配線が含まれ、設計者はさらに多くの回路を小さなエリアに組み込めるようになっています。メーカーは、従来のコネクターで実現できるレベルと比較して25%以上も多くのスペースを確保でき、車両にもっと多くの電子機能を追加しつつ、コストと重量を抑制することができます。設計者はまた、スタッカブル接続システムで配線を調整し、非密封アプリケーション用のコンポーネントを柔軟性の高い構成でグループ化することでスペースを節約することもできます。

さらに、機械技術者は、コネクター位置保証機構（CPA）、独立セカンダリーロック（ISL）、端子位置保証機構（TPA）、嵌合時の聴覚クリックなど、コネクターの耐久性と信頼性をサポートするさまざまな機能に向けた設計を進めています。これらの機械技術によって、手作業による繊細なアセンブリー作業をもっと簡単にし、オペレーターのエラーがおこりにくいものにします。明確な聴覚クリック音を発生させるコネクターによって、車両が動いている時も、振動レベルが高い時でもセキュアな嵌合を実現します。また、アフターサービスもさらに容易になり、技術者は作業時に他のコンポーネントの破損を回避することができます。

設計者はまた、シートベルトやエアバッグといった安全装置あるいは、排出制御や燃料噴射といったパワートレインアプリケーションに使用される防水コネクターを小型化させています。さらに小型化したスペース節約型の端子を実装した新しいコネクターシステムは、耐久性の高い防水クリンプテクノロジーを採用し、こうした重要な接続を振動、高温、湿度、埃や汚れから保護し、信頼性の高い性能を実現します。

独自の小型防水システムは、16～24AWGケーブル、最大14.0Aのアプリケーションに対応し、より小さなケーブルでより高いパワーを安全に搬送できます。これらのシステムは、湿潤環境条件下で走行するトラックやオフロード車に理想的で、耐久性と信頼性が高く、他の高ゲージ防水コネクターよりもコンパクトで、メーカーはコスト削減とスペースの節約を実現できます。

小型同軸ケーブルは、360度全方位カメラシステムといった高度な自動化アプリケーションが持つ高速データ要件に確実に対応できます。この小型コネクターシステムは、高周波数信号を低損失で搬送できるだけではなく、多数のさまざまな方法で構成可能であり、設計者はプリント回路面のスペースを最大48%節約できます。

堅牢なアプリケーションは、衝撃、振動、ラフハンドリング（乱暴な取り扱い）で端子が外れ、信号干渉を引き起こす可能性があります。高振動アプリケーションには確実な嵌合とPCB保持が要求されます。モレックスは、-40ºC～+125°Cの大気温度で、優れた電気的コンタクトの信頼性を備えた小型コネクターソリューションと、照明システムなどの高温アプリケーションにおける性能を維持するソリューションを提供します。

ソフトウェア、ゾーンアーキテクチャ、ハードウェアは車両操作においてさらに重要な役割を果たしていることから、メーカーはサプライヤーと緊密に連携すると、最新の革新を見出し、個々のニーズにぴったりのソリューションを共同開発することができます。コネクター領域全体で長年にわたる専門知識とグローバルなパートナーネットワークを有するモレックスは、自動車エンジニアと設計フェーズからテスト、展開に至るまで連携してコスト要件とスペース要件に確実に適合する接続システムを構築し、最も苛酷な条件でも信頼できる伝送と耐久性を実現します。モレックスの自動車テクノロジー向け小型化機能について詳しくご覧ください。