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イノベーションに必要なもの

モレックス グローバル製品開発バイスプレジデント、マイク・デッペとのQ&A

イノベーションを培うこと、顧客のニーズと協力を第一とする先見的エンタープライズ環境で学んだ内容を応用することに関する専門家のインサイトをご覧ください。

読了時間: 6分

現代のエンジニアリングは、世界の暮らし方、働き方、遊び方を常に形作っており、それぞれの新しいイノベーションは、型破りなアイデア、応用学習、協力的思考によって強力な影響を受ける可能性があります。モレックスのグローバル製造開発バイスプレジデント、マイク・デッペは最近、The BOM Podcastのインタビューを受けました。製造業でよく使われる「Bill of Materials(部品表)」という用語にちなんで名付けられたThe BOMは、世界有数のイノベーターたちと、最新の製品エンジニアリングの進化がどのように作られ、市場に投入されているかを探っています。ポッドキャストの司会者であるマジェンタ・ストロングハートとの会話で、マイクは、現在の急速に進化するグローバルなテクノロジーの世界の、最適化したイノベーションの機会に関する見解を述べています。

Q:顧客優先のアプローチを採っているグローバル組織である、モレックスのような企業で働く主な機会と課題は何ですか?

A:モレックスに勤めて21年になります。私たちは、自動車、データ管理、医療など、非常に多岐にわたるアプリケーション全体で数多くのお客様と協働しています。当社にはコネクターからケーブルアセンブリー、プリント基板アセンブリーに至るまで 10万点の製品を展開しています。様々な製造ソリューションの側面を網羅していますので、どこに注力して優先すべきかを理解するのが困難なときもあります。大きな企業にとっても小さな企業にとっても、具体的に考慮するのは常に非常に難しいと思います。

Q:モレックスは様々な垂直的アプリケーションと工業アプリケーション全体を幅広く網羅しているわけですが、製品開発の面では何を優先しているのですか?

A:私たちは実にたくさんの異なる市場に関与している、というのが非常に面白いところです。自動車、工業、医療、コンシューマー、データ通信、そのすべてに関わっています。製品開発の面では次の3つの主な分野を優先しています。

  1. 知識の共有。組織全体の非常に多くの異なる分野で、才能ある人材と専門知識を備えています。そして、チーム全体と異なる市場をいかに活用して価値を創造するかを、常に理解しようと努めています。自動車業界での一例は、シグナルインテグリティに対する当社の専門知識です。他の分野に利益を提供して影響を最大化するために、専門知識をいかに繋げて、再適用し、標準化するかを考慮しています。
  2. 人材管理。具体的には、可動性、貢献、キャリア開発の面で、特定の分野の専門知識を備えた人材をいかに活用するかです。いかに正しい人材を正しい顧客プロジェクトに割り当てて、他とは一線を画す体験を創造するのか? 当社の目標は、当社の人材と協力してすでに持っている知識を効果的に応用するよう徹底すること、そして、当社の成功を支えた従業員の努力を認めて褒賞を与えることです。
  3. 能力の活用。これには、能力を構築して顧客のニーズを予測するための正しいロードマップを作成し、チームがより効果的に仕事ができるようにすることが含まれています。私たちは定期的に、この達成のために、提携各社といかに協力するかを考慮しています。当社のお客様に代わって、効率性を最適化しながら市場投入までの時間を加速する形で、グローバルな製品開発に関する今後の能力を高めたいと思っています。

Q:現在、画期的なイノベーションが数々の業界で発生していますが、モレックスは、エンジニアリングチームにどのようなスキルや質を求めていますか?

A:製品の幅広さと複雑さを考えて、今でもある程度「伝統的な」機械的・電気的エンジニアリングの専門知識を中心的に求めています。しかし、幅広い分野の様々なチームが集まる協力的な場で働くことができるというのも、目標を達成するために非常に重要です。モレックスはグローバル企業ですので、数名のエンジニアを部屋に籠らせて、私たちが対処しなければならない問題解決の側面に必死で取り組ませることはできません。ですから私たちは、柔軟で機敏に対応し、グローバルな視点を活用しながら世界中の様々なグループと協力できる能力に、非常に大きな価値を置いています。最大限に活用できるのは、当社のチームのまさにコミュニケーションとコラボレーションなのです。

GLT BIO - Mike Deppe -2022
「イノベーションというと、新しいものを発明して世に出さなければならないと思われることが多いですが、必ずしも、まったく新しいものである必要はありません。例えば、以前は手動でやっていたことを自動でやろうとすることがあります。基本的には、すでに存在するプロセスを改善して高めるわけです。どこに新しい価値を付加できるのかを常に探ることも、ある種のイノベーションなのです。」
Mike Deppe
グローバル製品開発バイスプレジデント
モレックス

Q:シミュレーション、モデリング、デジタル・ツインなどの設計イノベーションが、今、どのように革新に役立っていますか?

A:実際に金型や備品や試作品を作るに、デジタルで製品を作ることができるようになったら、私たちの究極の目標が達成されることになります。ですから、シミュレーションやモデリングを設計プロセスの初期段階から組み込んで、途切れないループを作る方法を常に模索しています。言い換えれば、試験し基準をクリアした後に、設計し、繰り返し、学んだ内容を適用しているのです。そして、設計サイクルの後の部分に事前に組み込んで、製品化までの時間を短縮し、確実に正しい専門知識を活用するようにしています。

このようなフィードバックのループが、学習プロセスに非常に重要だというのは、どんなに強調してもし過ぎることはありません。試験をしながら予測通りにいかなかったものが分かりますので、その要素を方程式に戻します。同時に、その学んだ内容を要件管理実践に組み込むよう最善を尽くしています。例えば、毎回一から開発するのではなく、ライフサイクル管理ソフトウェアを活用して、学んだ内容をいかに今後の設計に活かすかを考えます。ひいては、このサイクル化した学習プロセスが、できる限り効果的に顧客の要件に応えることに役立ちます。

Q:協働している顧客のフィードバックは、どの程度設計サイクルに組み込まれますか?

A:顧客と密接に協働できるほど、守備よく顧客の要件を達成して、期待を超えることができます。私たちは常に営業チーム、製造マネージャー、サプライヤーと協力してお客様の声を把握し、それを製品開発プロセスに組み込むようにしています。また、市場の傾向と注力分野を検証して、何が変貌し変化しているのかを判断する技術的な専門家も備えています。その内容を後続の設計サイクルに組み込み、要望に応えるだけではなく、顧客のニーズを予測できるようにしています。

Q:モレックスの多様なグローバルチームは進化を続ける様々なアプリケーションに対処していますが、そのような顧客のニーズを予測できるように、イノベーション文化をどのように奨励していますか?

A:テクノロジー企業としてモレックスは、イノベーションの達成こそを一番の目標に据えています。まず、イノベーションに対する当社の組織的なビジョンを理解し定義することから始め、様々な新しい方法で確実に価値を創造して捉えるようにしています。その定義を構築する2つの主な要素があります。

  1. 価値を捉える。私たちは価値を創造することができますが、従業員や顧客体験を改善することで、実際にその価値を商業化の取り組みに組み込むことができなければ、価値を捉えているとは言えません。ですから、従業員が実験し、探求し、貢献することを奨励する環境を築きたいと思っています。
  2. 様々な新しい方法。「イノベーションというと、新しいものを発明して世に出さなければならないと思われることが多いですが、必ずしも、まったく新しいものである必要はありません。例えば、以前は手動でやっていたことを自動でやろうとすることがあります。基本的には、すでに存在するプロセスを改善して高めるわけです。どこに新しい価値を付加できるのかを常に探ることも、ある種のイノベーションなのです。

Q:ご自分の製造の経験に基づいて、シミュレーションやデジタル・ツインなどの最近の工業開発には驚いたり、触発されたりしますか?

A:そうですね。このようになると思いましたか? そうとは言えません。しかし、確かにエキサイティングで気分が上がります。モレックスが目指すところです。私たちは、何かを設計できても、必ずしも製造できるとは限らないことが分かっています。CADの図面を現実にしてみると、上手くいかないこともあります。エンジニアリングが製造に仕事を渡して、製造が作れないと判断して、エンジニアリングに差し戻して再設計するというように、反復プロセスが部分的になることもあります。そのような障害を克服しようとしており、さらに尽力する励みにもなります。事前に製品に対する顧客の期待事項や要望を理解しておくと、サプライチェーン、製造能力、その他の関連する実力を効率よく活かし、そのような期待を現実にすることができます。予定より早く、さらに高い品質で実現することが多々あります。

Q:テクノロジーの面では、現在最もエキサイティングな注力分野は何ですか?

A:私たちは実にたくさんの異なる市場に関与しており、至る所でエキサイティングな新テクノロジーに出会います。例えば医療業界では、ウェアラブルのイノベーションがあり、患者を遠隔でモニターする新しい方法があります。自動車業界では、電化があり、車内インフォテインメントなどの体験的要素や、自動運転に近づけるために搭載するセンサーやカメラなどの安全性要素があります。遠距離通信では、画期的な5Gへの移行が行われています。その他も含めてあらゆる分野で、情報とデータアクセスの大幅な強化が見られます。

アディティブマニュファクチャリングの変貌も起こっています。私が以前統括していたプリント回路ソリューション(PCS)業務部は引き続き、柔軟なハイブリッドエレクトロニクスと薄く軽量な素材を使用して、ケーブルの束のかさばりを抑えることに注力しています。例えば、スペースが限られる自動車や医療用ウェアラブルのアプリケーションに使用する、従来的なプリント基板に柔軟なテクノロジーを組み込んでいます。その類のイノベーションをアディティブマニュファクチャリングに組み込むと、様々な金属や樹脂に3Dプリントを施すなど、機能が高まることに繋がります。

Q:先ほど、プロセスの障害とおっしゃいましたが、そのような課題に対処しイノベーションを進めるために最も重要な要素は何ですか?

A:イノベーションは確かに、製品開発に欠かせない製造技術や能力に立ち戻ります。それでも、イノベーションを起こせるのは基本的にプロセスです。人とプロセスが慎重に設計や開発条件を評価できますから。そうすることで、正しい素材・テクノロジー・機器が使用されるよう徹底し、自動化をすすめ、ムダを排除し、市場投入を加速しながら結果を促し高めることができます。事前に正しい人材と正しいプロセスを配備することで、大きく差が出ます。そしてそれは、何を達成しているのか明確なビジョンを持ち、貢献し、評価し、推奨することのできる正しい人材を持つことから始まります。モレックスでは、そのようにして世界中の従業員と顧客に対して相互利益を創造しています。

Q:人とプロセスを念頭に置いて、今に至るまでのご自分の来歴を手短にお話しください。エンジニアリングのご出身ですね。電子業界のエンジニアリングに興味を持たれ、仕事にされたきっかけは何だったのですか?

A:子供の頃、私はいつも何かを構築したり作ったりしていました。壊れたものを修理することも好きでした。例えば、壊れたワゴンがあったので、工具店に行って芝刈り機の車輪を買い、それをワゴンに付けたことがありました。新しいワゴンを買うのではなく、すでに持っているワゴンを修理したかったのです。これは先ほど述べた、すでに存在するものを改善して高める方法を見つける、ということに通じると思います。

その後、自分の興味はエンジニアリングにあることが分かり、機械系のエンジニアになるか、電気系のエンジニアになるか考えました。大学に入学する頃には、機械系のエンジニアリングに進むことをはっきりと決めていました。というのは、ギアや部品の仕組みが目に見えて分かるからです。モレックスでは、機械系と電気系の両方に携わっています。機械と電子という両方の重要な分野で世界のトランスフォーメーションを牽引する電子企業で、機械系エンジニアリングに取り組み、プロセスを構築できたのは幸運でした。

Q:モレックスに入社した時から現職に至るまでの過程をお聞かせください。先ほどおっしゃった、知識の共有、人材管理、能力の活用のすべてを完璧に示すようですね。

A:先ほど申し上げた通り、モレックスに勤めて21年になります。20年前の自分に戻ってキャリアがどうなるのか見ることができたとしたら、決して信じられないと思います。モレックスの自動車関連顧客に対応する、カスタマーサービスとテクニカルサポートからスタートしました。その仕事から、非常に難しい状況で働くことを学びました。それまでの経歴から、まだエンジニアリング設計業務に興味がありましたのでその後その種の仕事に移りました。

数年間その仕事をした後、工場長から製造に興味はないかと訊かれました。彼は、私の設計の経験がその分野でモレックスの役に立つと考えたのです。私は、自分のスキルを完成させる絶好の手段だと思い、その職を得て、結果的に12年ほど在職しました。プランニング・材料管理・調達・オペレーション管理に携わったのは素晴らしい体験でした。私はグローバルチームのオペレーションディレクターだったので、様々な分野に接することができました。そこでも問題解決が求められたので、私はエンジニアリングの経験を活用することができ、同時に、経済的な考え方を意思決定に活用してモレックスのビジネスの側面もサポートしました。

非常に実りある体験を経た後、私はエンジニアリングディレクターとして正式にエンジニアリングに戻りました。その職務を数年務め、プロセスにプロジェクト管理も加えました。その後、プリント回路ソリューション(PCS)事業部長になり、数年間務めました。事業部長になって1年ほど経った頃、無線周波数(RF)事業部を増設しました。ですから同時に、お互いに影響し合い、構築し合う2つの事業部を率いていたわけです。そして、現職であるグローバル製品開発チームの責任者になりました。この年月を通して、一貫して私のコアにあるエンジニアリングの経験を活用して拡大するチャンスに恵まれてきました。

Q:その仕事の好きなところは何ですか?

A:自分の仕事が大好きですね。毎日、グローバル製品開発に取り組む意欲を駆り立てられます。それは主に、新規市場アプリケーションだけではなくレガシー製品にも関与する、才能ある人々と一緒に仕事ができるからです。何よりも満たされるのは、「価値を捉える」ことを実際に見ることです。それが従業員を触発し、心を惹きつけ、自分の最高のポテンシャルを発揮できるようにするのです。私は、モレックスのチームメンバーが自分の才能と貢献を最大化できるツールや、プロセス改善を提供することができます。それ以上にやりがいのあることは他にありません。

Q:個人的に、クリエイティビティを触発しやる気を起こさせるものは何ですか?言うなれば、ご自分のBOMのトップに来るものは何ですか?

A:個人的に一番のBOMには音楽があります。音楽には感情、情熱、エネルギーに影響する力がありますから。何かが混沌としている場合は、適切な音楽を聴くと心が落ち着きます。エネルギーやインスピレーションが欲しい時には、別の種類の音楽を聴くとクリエイティビティややる気を刺激することができます。どんな場面にも合う歌詞やメロディーがあります。だからこそ、人生で音楽を思い出すことが多いのだと思いますね。

マイク・デッペについて

マイク・デッペは、グローバル製品開発担当バイスプレジデントとして、モレックスのグローバルリーダーシップチームの一員であり、当社のグローバルエンジニアリング評議会を率いています。マイクと彼のチームは、当社のグローバル製品開発能力の変革に取り組むことで、顧客と従業員のエクスペリエンスの向上に貢献しています。彼は、モレックスのデジタルトランスフォーメーションの取り組みが、全開発組織で一致し繋がり、そのようなイニシアチブが顧客や従業員にとって、他社とは一線を画すエンドツーエンド体験をもたらすよう徹底しています。


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