産業とアプリケーション
スマートラベルは、主な製品タイプに対して、極めて汎用性の高い変革的な資産追跡オプションを提供します。
パンデミックにより、世界的な健康危機に対する「生きるか死ぬか」の解決策であるワクチンは、輸送上の課題を含んでいることに、誰もが気づきました。一定の温度、つまりこの場合は氷点下の温度を常に保たなければ、品質と有効性が維持できないということです。最終地点での保管、トラクターやトレーラーでの陸上輸送、船舶や航空機、そのすべてが同じ困難に直面しています。典型的な輸送環境での常態を、正確には「コールドチェーンロジスティクス」と呼ばれる現在の業界の需要に合わせて調節するという課題です。
製薬・化学・食品飲料(F&B)業界はすべて、主要な環境変数、正確なスケジュール、複雑なロジスティクスに基づいて、製品・材料・生鮮品を全世界で正確に追跡するサプライチェーンの能力を必要とする、高成長・高価値業界です。独立した調査によると、世界のコールドチェーン市場全体は、2021年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)14.8% で成長し、世界中でコネクテッドデバイスの普及と冷蔵倉庫の自動化が促進されると推定されています。*
コールドチェーンロジスティクスの必要性が現れてからはかなり経ちますが、多くの主要業種全体の新製品やトレンドに基づいて飛躍的に高まりました。例えば、ワクチンが温度に敏感であるほか、緑内障用目薬、喘息用呼吸器、インスリンにも輸送中の温度要件があります。そのため、世界の医療業界が効率良く機能するには、コールドチェーンが中心となるわけです。
良好な衛生状態を促進し、事故を防止する信頼性の高いコールドチェーンを確立することで、生のトマト、冷凍の魚、乳製品などの製品が常に良好な状態で到着し、安全に消費できることが保証されます。
コールドチェーンの地理的傾向
コールドチェーンの分野では伝統的に北米が最大となってきましたが、今ではアジア太平洋地域が、物流インフラ開発と倉庫管理システム(WMS)の普及に対する政府投資の増加を受け、最も急成長する地域コールドチェーン市場になるとの期待が高まっています。
中国は長い間、農産物や食料品を長距離輸送することに長けてきましたが、急成長する中間層からの新たな需要に対応する必要があります。このような急増する富裕層は今、粉ミルクを含む食品、化粧品、医薬品の購入を原産地と確かな品質に基づいて決定しています。
さらに、製品のパッケージ・加工方法・保管方法に対する消費者の意識が驚くほど高まったことにより、コールドチェーンインフラストラクチャに対する技術の進歩が改めて重視されるようになりました。例えば、昨年夏に、北京での局地的なコロナの流行が冷凍輸入サーモンに関連しているという噂が流れたときには、サプライチェーンに対する非常に公的な検査が開始され、冷凍農産物に対する疑惑が軽減されました。**
コールドチェーンにおけるテクノロジーの役割
モレックスは、世界のあらゆる業界で、顧客との会話が変化していることを見てきました。これらの組織は、実装が比較的低コストで分かりやすく、フロントエンド通信からバックエンド通信に広がり続けるインフラストラクチャで、最大限のデータを遅延なく送信する追跡・モニタリングの必要性を認識しました。
この状況が現在の究極の問題を定義しています。つまり、世界中のコールドチェーンロジスティクスに複雑な性能が求められているということです。スマートラベルは、低コストで安全で使い捨て可能な手段で、多くの場合、現在使われている従来のコールドチェーンモニタリングモジュールを補完しますが、パレット積載の荷物には適していても、最終目的地までの「最後の1マイル」まで個々の製品を追跡するには経済的にも効率が悪く、適していません。
スマートラベル:コールドチェーンを制し…
「スマートラベル」のコンセプトは、バーコードやRFIDベースのソリューションから始まった次世代のデータ情報学を示しています。特に、「ラベル」という言葉は、軽量でコスト効率が良く使い捨てでなければならないということを暗示しています。これらの新しい要件を満たす必要性が、柔軟なプリント回路ソリューションの革新へと繋がりました。薄く柔軟で、複雑な電子部品に貼付できるスマートラベルは、使いやすく、低コストで、環境にやさしいデータ獲得に向かう傾向を後押しするはずです。
コールドチェーンロジスティクスのモニタリングオプションに対する需要は、製薬業界や食品飲料業界が世界的に急速に拡大するにつれて高まると予測されていますが、スマートラベルは、資産追跡・メドテック・構造的健康モニタリング・ビルディングのモニタリングなど、実に様々な業界で必要とされています。これらの業界は、個々の製品の場所の履歴、輸送中・使用中に発生したことなど、過去とリアルタイムのデータを組み合わせる、あるいは場所・温度・衝撃・光・その他の環境的状況が設定したパラメータから逸脱した際にモニターに警告を発するなど、よりきめ細かい情報学から利益を得るはずです。
その一例が、航空機の安全性です。例えば貨物室で漏れがあった場合、航空会社は荷物を開けることなく内容物を把握する必要があります。スマートラベルを使用すれば、そのような荷物の詳細はリアルタイムで知ることができるのです。
Creating Connections for Lifeを信条とするモレックスは、顧客との密接なコラボレーションを数十年にわたって続けています。そのため、それぞれ固有の仕事に対して、正しいソリューションを定義することができるのです。イノベーションに投資するモレックスは、2021年以降のこのような課題に立ち向かうことが可能です。当社は、ポリエステルにシルバー回路をプリントしたより複雑なもので、スマートラベル機能の進化を続けています。これは、ある時点で紙にインクをプリントしたものに代わる可能性があります。また、提携各社と協力して、より小さく薄く柔軟な電子部品に貼れるものや、環境にやさしい「薄膜」バッテリーテクノロジーなどにも取り組んでいます。そして、これらの革新的な資産追跡ソリューションは進化を続け、信頼性とコスト効果に優れた簡単に廃棄できる方法で、傷みやすく、揮発しやすく、価値のある製品を顧客に提供できるように設計された新しいテクノロジーを組み込んでいきます。