産業とアプリケーション
著者: エリック・スミス(プリント回路ソリューションズ事業開発マネージャー)、ロブ・アーウィン(プリント回路高度開発エンジニアリングマネージャー)
2021年の「Research and Markets」レポートによると、医療技術の最近の進展に5Gテクノロジーの拡大が相まって、ウェアラブル医療デバイスの新基準が確立されました。医療専門家、そして患者も同様に、効率性が非常に高く日々の使用にも耐えられるデバイスを期待しています。こうした基準への対応は、製品の安全性、有用性、実用性を確保する上で非常に重要であり、周到な設計と極めて信頼性の高いコンポーネントが要求されます。
ウェアラブルを快適かつ効率的なものにするために、設計者はヒューマンインタラクションファクタと快適性にまつわるニーズと特徴や機能の間のバランスを確保する必要があります。このバランスは、革新的な人間中心設計と、最先端のソリューションを実現するコンポーネントや材料の最適化を組み合わせることで確保されます。
理想的な設計の把握
ウェアラブルを形状と機能の両方を念頭に置いて設計することは、モレックスの過去のブログで取り上げたように、オンボディ型デバイスの設計に必要なアプローチです。成功する製品を設計する第一のステップは、完璧な最終結果をイメージすることです。最初のアプローチが完全な願望であったとしても、理想的な製品の様相や必要なコンポーネントと機能の概要をつかむことで革新に火が付く可能性があります。
クラス最高のウェアラブルデバイスとは? 適切な感度を持つタッチセンサーテクノロジーなど、大半の人々が快適に使える機能を採用したデバイスであると考えられます。心電図(ECG)モニターといった装用式デバイスの場合、軽量で快適な材料で構築する慎重なプロファイルが優先される可能性が高くなります。がん治療におけるドラッグデリバリーデバイスといった複数の設定を伴うプラットフォームの場合、ユーザーインターフェースは簡単かつ直感的に操作できる必要があります。実際に、製品の複雑性が高まると、ユーザーの困惑やフラストレーションが高まる可能性も上昇します。
同様に、静電容量タッチインターフェース付きのウェアラブル医療デバイスも複雑性や多数の設定をマスクし、関連オプションのみを直感的に提供できるようにする必要があります。例えば、このインターフェースでは、現在のニーズに基づいて押下する必要があるボタンやキーのみを表示し、選択肢が選択されたら次のステップの適切なボタンが表示される、といった具合です。
生産的なユーザーエクスペリエンスを提供するために、設計者とアーキテクトは、使用上の重要な課題を予測する最適化されたソリューションに重点を置き、それらをマスクする、または克服可能な方法を見極める必要があります。
設計上の課題を解決
ウェアラブルで機能性の高い医療機器の設計では、デバイスの使用方法に基づいてさまざまな課題に対処する必要があります。例えば、血糖モニターやインスリンポンプといった24時間体制の機能向けのデバイスでは、臨床現場において限定的な時間で使用されるものとは異なる設計を行うことになります。
耐久性の達成
ウェアラブルの血糖モニターとインスリンポンプにおける設計上の課題を比較してみましょう。第一にこれらのデバイスは、ユーザーがシャワー中でも、航空機搭乗中でも、スポーツ中でも、どのような環境であっても常時使用に耐えられなければなりません。また、モニターとポンプは、日光の紫外線から意図的・非意図的な薬剤の暴露に至るまで、さまざまな条件にも耐えられなければなりません。その結果、ウェアラブルの設計者は、日常生活における日々の使用の厳しさに耐えることが可能な材料の活用に焦点を当てる必要があります。
フォームファクターや重量と耐久性の間のバランス確保
デバイスの厚みと重量も、考慮すべき重要な変数です。血糖モニターは、軽量化すると患者における使用性が高まりますが、さらに薄型のデバイスにしても日々の活動中のユーザーの邪魔や妨げになることもあまりありません。
要求される性能に適した材料を選択
臨床現場で使用される医療用ウェアラブルの設計者は、日々の生活の厳しさについて不安を抱く必要はありませんが、それでもやはり、臨床現場の診断・治療用デバイスに使用されるコネクターやケーブルのタイプなどの重要な検討事項に留意する必要があります。
電極などの製品は、身体からの信号の検知または肌への電圧印加のいずれかに使用されることがあります。電極に要求される機能は、デバイスの設計方法や使用する材料を決定付けます。例えば、検出電極は低インピーダンスと高伝導性のヒドロゲルが要求されますが、刺激電極は多くの場合、そうしたシグナルインテグリティは要求されないため、安価な材料を使用することができます。電極を身体に装着する必要がある時間の長さも、構築に使用される材料と粘着剤のタイプを決定付けます。
医療用インターフェースソリューション
設計者が幅広いコンポーネントオプションを活用する経験豊富なエンジニアやメーカーと連携すると、最新鋭のコンポーネントやテクノロジーの活用によってウェアラブルデバイスに理想的なフォームファクターを実現できる可能性が高くなります。
医療用ウェアラブルデバイスは、モレックスのコンポーネントレベルでのテクノロジーで設計された医療OEMによって作られています。医療エコシステム全体が、モレックスをはじめとする企業に依存し続けて革新的な設計の創出を支援しつつ、最適なフォームファクターを活かして独自の機能要件を実現させています。モレックスが提供する柔軟性の高い高性能プリント回路ソリューションの多様性は、広範な製造能力やエンジニアリングサポートと融合し、ユーザーエクスペリエンスを優先する医療機器の採用をさらに推し進めています。
モレックスが次世代の医療用ウェアラブルの設計・展開においてお客様をどのように支援しているかについて詳しくはCreating Connections for Lifeをご覧ください。