産業とアプリケーション
コンスーマはすべてのテクノロジーが、スマートフォンや音声対応スマートスピーカーと同様にシームレスかつ便利になることを期待するようになっています。このコンスーマ主導によるデバイスの普及はヘルスケア業界にも起こっています。コンスーマの高い期待と急速に進展するテクノロジーが相まって、医療機器の設計における限界が押し上げられています。
高性能のユーザーフレンドリーなデバイスに向けた需要の高まりに対応するために、医療機器メーカーはどのような戦略を採用できるでしょうか? コンスーマは、これまで専門家が処理してきた自分のヘルスケアモニタリングや、その他のタスクを効果的に管理できるでしょうか?
力を与えられた患者
コンスーマ向け医療機器が普及するにつれて、患者は自身の健康管理にますます積極的な役割を担うようになっています。
個人健康データをこれまで以上にコントロール
患者は、自身の医療データへのアクセスを強化し、医療データを使いやすい形式で入手したいと考えています。しかし、これにより、自宅使用またはウェアラブルの医療機器について、コンスーマデータの堅牢なセキュリティとプライバシーを確保するという重要な設計要件が生じます。エンジニアは製品の設計段階を開始する時から強力な暗号化、アクセスコントロール、ユーザー認証に集中して取り組む必要があります。
これを実現するために、デバイスは、クラウドベースのストレージソリューションまたはデバイス上のセキュアなストレージのいずれかを使用してデータを収集、保存すると同時に、明確でカスタマイズ可能なユーザーインターフェース(UI)を使用した直感的な形式で情報を提供できるように設計する必要があります。
多種多様な条件にわたり利便性を確保
リモートモニタリングと小型化の進展によって、患者は自宅で慢性疾患を管理できるようになりました。設計者は、無制御の環境におけるユーザーの安全を検討し、ユーザーの潜在的な過誤について計画し、さらに、ユーザーがデバイスを適切に操作していない場合に明確な警告/エラーメッセージを提供する必要があります。デバイスが使いやすいほど、コンスーマはその体験に満足しやすくなります。
個人用医療機器が新たな課題を提起
Bluetooth接続を使用した血圧監視から、酸素濃度計を組み込んだ自宅用睡眠時無呼吸試験キットに至るまで、コンスーマ向け医療機器の潜在性は無限に広がっています。しかし、この成長はメーカーにいくつかの設計上の課題をもたらしています。
医療機器がより利用しやすくなるに伴い、多様なステータスや技術的能力を持つユーザーに対して、安全かつ効果的な機器を作成することが不可欠になります。トレーニングを受けた専門家がいる病院環境とは異なり、こうしたデバイスは、医療知識やデバイスの専門知識のない患者に託される可能性があります。これによって、ユーザーが誤りを犯し、不正確な測定値や悪影響につながるリスクが大幅に高まります。こうしたリスクを緩和するため、設計者はユーザー中心の設計方針を優先する必要があります。明確かつ的確な指示書を書面と画面表示の両方で提供することが極めて重要です。これには、包括的なユーザーマニュアル、アプリ内の直感的なチュートリアル、理解しやすいビデオガイドが含まれます。メーカーは誤解釈の可能性を最小限に抑えることで、患者が自社のデバイスを安全かつ効率的に使用し、自身の健康管理における確信と精度を高めるよう力を与えることができます。
医療機関のコントロールされた環境では、困難な事態が発生すると介入プロトコルが即刻実施されます。自宅において、患者は危機的な状況で適切な対応に悪戦苦闘する可能性があります。デバイスのメーカーは、テレヘルス(遠隔医療)機能やリモートモニタリングなどの製品機能を使用してユーザーの安全を改善することができます。これによって、患者は医療従事者に連絡し、自身のデバイスを使用しながらリアルタイムの支援を求めることができるようになり、すべての操作を快適な自宅から行うことができます。リモートデータモニタリングを実装したデバイスは患者の医療チームにデータを報告して確認してもらい、緊急事態の可能性があればトレーニングを受けた専門家によるタイムリーな介入を促すことができます。革新的でユーザーフレンドリーな機能に焦点を当てることで、メーカーはさまざまなユーザー向けに直感的で使いやすい、安全で効果的な医療機器を開発することができます。
コンスーマ主導の未来に向けた設計
「力を与えられた患者」モデルに向けた転換は、簡単で効率的なデバイスによって決まることになります。しかし、エンジニアは、コンスーマ向け電子デバイスのより広範な範囲全体のトレンドに焦点を当てることで設計を改善することができます。
小型化
従来の医療機器は多くの場合、かさばって扱いにくいものです。小型化の進展により、CGM(持続グルコースモニタリング)、スマートウォッチなど、よりコンパクトで目立たないデバイスが実現しています。小型化されたセンサーや低出力の電子機器といった部品を使用してコンポーネントの選択を最適化することで、デバイスのフットプリントをさらに小さくすることができます。
高耐久化
個人用医療テクノロジーデバイスにおいて、耐久性は基本的な要件です。落下や水しぶきに耐える必要があるスマートフォンのように、これらのデバイスはさまざまな環境条件に耐える必要が生じることになります。そのため、デバイスのケースとコンポーネントに信頼性が高く、衝撃に強い材料を選択する必要があります。個人用医療機器は、極端な温度、衝撃と振動、EMI、湿度、埃や汚れ、化学薬品への曝露に関する厳格な試験を受ける必要があります。デバイスの清掃も設計上重要な考慮事項です。なぜなら、強力な化学薬品(イソプロピルアルコールや漂白剤など)を含む、一部の家庭用クリーナーによって、電子機器に一般的に使用される一部のプラスチックが破損する可能性があるからです。これらの要因はすべて、デバイスの長期的な機能性を確保する上で非常に重要です。
接続性
ヘルスケアの将来(および現在)はデータ主導です。次世代のコンスーマ向けデバイスには、シームレスなデータ管理とリモートモニタリング機能が必要になります。これには、堅牢な接続ソリューションが要求されます。バッテリーの最適化に細心の注意を払うことで、コンスーマ向け医療機器はバッテリーを使い果たすことなく安全にデータを伝送できるようになります。オープンソースAPIを活用することで、これらのデバイスは、既にコンスーマが使用している一般的なヘルスアプリと統合することができます。いずれにせよ、データは堅牢な暗号化プロトコルと厳格な通信標準を使用してセキュリティを確保する必要があります。
速度と安全性のバランス確保
個人用医療機器メーカーは常に主導権争いを繰り広げています。つまり、革新的なソリューションを市場に迅速に投入しながら、長期間にわたる厳格な(特に)FDA、EMA、MHRA、PMDAの承認プロセスを乗り切る必要があります。幸いなことに、メーカーはいくつかの実効性のある戦略を採用して、このプロセスを先に進めることができます。
設計段階で規制機関に積極的に関与することは、規制上の潜在的なハードルを特定する上で役立つ可能性があります。そうすることで、メーカーはコストがかかる後期の設計変更を回避することもできます。規制当局と連携し、堅牢な設計コントロールプロセスを実装して、デバイスがあらゆる安全要件と性能要件を満たすことを確認すれば、デバイスの故障やリコールのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
デバイスのメーカーが実績のあるテクノロジーを使用すると、新製品の承認におけるタイムラインを短縮できる可能性があることは、明るい見通しの1つです。これらの実証済みコンポーネントを活用することで、メーカーは直感的なユーザーインターフェースや機能の開発に集中し、最終的にリスクを低減して市場投入までの期間を短縮し、新たなコンスーマ向け医療機器を実現することができます。
モレックス: コンスーマ向け医療機器のコンポーネントと専門知識
メーカーはコンスーマの需要と規制要件の間でバランスを確保しますが、モレックスは、これらのデバイスに命を吹き込むコンポーネントを提供する上で優位な立場にいます。モレックスは小型化に関する専門知識により、スマートフォンやスマートウォッチといったデバイスにおいて既に実績のある、高性能な相互接続の必須コンポーネントを提供することができます。モレックスの堅牢なコンポーネントは、自宅環境における摩耗や断裂に耐える、耐久性に優れたデバイスのニーズを満たします。
モレックスは深い経験と専門知識をもたらし、医療機器メーカーと連携します。さらに、モレックスのグループ企業であるフィリップス・メディサイズは、大手メドテック企業との60年以上にわたる専門知識を生かし、高性能な相互接続による複雑な医療用ケーブルアセンブリー、カスタムの高密度、高速伝送用医療用コネクター、プラスチック射出成形およびアセンブリーを専門としています。この専門知識を組み合わせることで、当社は次世代ヘルスケアテクノロジーの構築を推進しています。
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