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家電制御のイノベーション:PEDOTはすべての正しいボタンを押します

ジェフ・ナギー
ビジネスデベロップメントマネージャー

ここ10年の間で、モダンテクノロジーによって効率性が飛躍的に向上し、サーモスタット、家電、エンターテイメントシステムなど毎日使うモノに、労力を割くことなく対応できるようになりました。以前はボタンを押したり、ダイヤルを回したりしなけらばならなかった操作が、今やさりげなく指で触れるだけでできます。これはひとえに、静電容量式スイッチと伝導性センサーがあるためです。

この革命は、大抵はスマートフォンでアプリケーションをタップするたけで個人的な生産性タスクを行いたいとする、現在の消費者のますます大きくなる要望に従って進んでいます。この効率性追求のトレンドは家電市場にも波及しており、相互接続型の家電に対する需要が引き続き上昇しています。Statista社は現在、2024年までには米国の57%以上の世帯が、少なくとも1つはスマートホームデバイスを所有することになると見ており、Grand View Research社は、世界のスマート家電市場が 2022年から2030年までの間に、年間平均成長率8.6%で拡大すると予想しています。と同時に、政府と消費者はより環境にやさしい設計と省エネ型サステナビリティを追求し続けます。

このような流れを受けて、スマート家電とヒューマンマシンインターフェイス(HMI)にさらに注目が向けられるようになりました。モレックスは引き続き、この最近の動向の最前線にいます。一つの最たる例を挙げましょう。当社は、PEDOT(ポリスチレンスルホン酸またはポリ(3,4-ethylenedioxythiophene)の頭字語)の力を利用して、メーカーがかつてないほど迅速かつ簡単に、幅広い種類のモダンHMIを製造できるようにしています。この画期的な新技術は、インテリジェント家電設計の在り方を塗り替えます。

家電制御のイノベーションの進化

PEDOTが非常に有効である理由を理解するには、まず、静電容量式タッチスイッチが、従来的な機械的メンブレンスイッチテクノロジーといかに異なるかを理解すると良いでしょう。旧式のメンブレンスイッチテクノロジーは通常、2層の伝導性トレースが組み込まれており、ユーザーはその層が接して配電回路を閉じるに十分なほど、しっかりと押さなければなりませんでした。

他方、静電容量式タッチスイッチは、ある種のスマートフォンのタッチスクリーンと同様の、伝導性センサーのように動作します。静電容量とは電荷を蓄えることです。手袋をはめていない状態で指が静電容量式スイッチに触れると、たとえ軽く触れたとしても、静電容量式タッチのマイクロプロセッサーが指を認識し、あらかじめプログラムされたコマンドに従って瞬時に始動します。

モレックスは長年にわたって静電容量式タッチスイッチが顧客にとって無数の利点をもたらすものと認識し、そのイノベーションの動向を把握してきました。このようなスイッチは適応性が高く、動く部品がないので長持ちし、様々な種類のコンスーマ向けデバイスや家電を制御するようプログラムすることができます。また、従来のプリント基板(PCB)でも、ポリイミドやポリエステルで作られているフレキシブルプリント回路(FPC)でも、いくつかの異なる技術や基板を使って製造することができます。

しかしながら、材料の選定によっては重大な制約が生まれ、その克服にPEDOTが役立つ場合があります。例えば、初期の静電容量式タッチスイッチは、伝導性合金として酸化インジウムスズ(ITO)を利用していました。ITOは透明フィルムとして差し込むことができ、発光ダイオード(LED)によるスイッチのバック照明に最適だったからです。残念ながら、これは非常に脆弱でもあります。そのため、現在の消費者向け家電の特徴とも言える、複雑な形状に適応することができません。さらに、ITOの層をエッチングして必要なスイッチ回路を作る、それなりにコストがサブトラクティブ法が使われています。

PEDOTの性能的利点

ITOが引き続き、タッチスクリーンや極めてクリアな可視性が必要になる場合の模範的な材料である一方で、モダンな家電制御を作成している設計エンジニアは、信頼できる伝導性、透明性、柔軟性、コスト削減プロセスの効率性を実現する他の選択肢を模索し始めました。このすべての分野で、PEDOTは希望に満ちた材料です。

PEDOTの正式名称の長さは、設計上のメリットも数多くという事実を反映しています。印刷可能な液体有機ポリマーであるPEDOTは元来、写真用フィルムの帯電防止剤として利用されていました。PEDOTは乾いても自由自在に曲げることができます。さらに次のような利点があります。

  • 触れると反応する設計上の適応性。
  • アディティブ製造プロセスによる溶着。ITOを使ったサブトラクティブ法より費用効果が高く、ムダが少なくてすみむ。
  • ほぼ無色で透明な回路を作ることが可能。バックライトアプリケーションに最適です。
  • ポリエステル基板の透明部分に使用可能。
  • キッチンの電子クッキングヒーターに必要なセンサー機能など、高温のアプリケーションに対処可能。
  • シルバーインクと組み合わせることで完全な回路を製作し、優れた光透過性と導電性を実現可能。

スマートセンサー、スマートホーム

上記のような優れた特性を持つPEDOTセンサーは、現在の家電の流線型の形状や特化された機能に対応する、多数の省スペースバックライト技術に対応する上で最適な選択肢です。現在のメーカーはPEDOTによって以下のことを実現できます。

  • 家電表面の曲面化
  • 現代的な外観とバックライトキーの可視性向上
  • ますます厳しくなるスペースの制約に対応しつつ、シグナルインテグリティを維持できる家電制御キーパッドの設計

PEDOTは、キッチン、ベッドルーム、ランドリールーム、その他の場所に高反応タッチスイッチを追加することができるため、統合型スマート家電の優れた選択肢となっています。こうした事例で使用される導電性センサーは、激しい使用に耐える汎用性を提供する必要があります。際立ちながらも周囲に調和し、洗練されていながら機能的な家電制御の美的要素を満たさなければなりません。他の複合物はコストがかかりすぎ、その点期待にそぐないのに対し、PEDOTなら期待に応えてくれます。

インテリジェントなスマートホーム、スマート家電が増大する中で、生産能力的にペースを維持できるスマートテクノジーが必要となっています。モレックスでは、進化を続ける様々なアプリケーションと相互接続アーキテクチャに応える、ミックス&マッチが可能な信頼できて用途の広いラインナップを実現することを、引き続き優先していきます。当社の優れたPEDOT静電容量式スイッチテクノロジーは、現在の家電メーカーと設計エンジニアが可能性の限界に挑み、革新的機能を市場に素早く投入し、効率の良い新しい能力を消費者がタッチ一つで利用できるようにするお手伝いをします。

参考資料:

Smart homes penetration rate in the United States 2017-2025 · Webページ · 2021年 · スタティスタ
https://www.statista.com/forecasts/887639/penetration-rate-of-smart-homes-in-the-united-states

Smart Home Appliances Market Size & Share Report, 2030 · Webpage
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/smart-home-appliances-market#:~:text=The%20global%20smart%20home%20appliances%20market%20size%20was,rate%20%28CAGR%29%20of%208.6%25%20from%202022%20to%202030

PEDOT

Webpage·2020 · Clegg, Clegg
https://www.chemistryworld.com/podcasts/pedot/8229.article

Printable silver nanowire and PEDOT
ACS Appl. Electron. Mater. 2020, 2, 4, 1000–1010

刊行日:2020年3月18日

https://doi.org/10.1021/acsaelm.0c00061

Copyright © 2020 American Chemical Society
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaelm.0c00061