産業とアプリケーション
電気自動車(EV)は急速に自動車業界の市場シェアを伸ばしています。2020年、EVは新車販売全体の5%未満に過ぎなかったものが、2022年には14%と上昇しました。EV市場は頭打ちなのでしょうか?それとも伸び続けるのでしょうか?
私たちは、一生に一度あるかないかの自動車アーキテクチャのパラダイムシフトに直面しています。自動車メーカーが、電子機器アセンブリのフットプリントを統合しながら、より高いレベルの効率性を備えたEVを設計・実現し、現行モデルより安価な価格で提供することができれば、市場は引き続き上昇していきます。この記事では、様々なレベルでこれらの目標を達成しようとしているEV業界について探っていきます。
EVの最大の欠点は充電効率の向上によって対応できる
ガソリン車の所有者は、ガソリンスタンドで5分程度で給油します。運転者は、燃料補給とは当然このようなものになるはずだと思っています。EVの公共充電ステーションでは、同程度の時間で充電できるでしょうか?
2023年の初頭までに、全米では13万カ所、世界規模では270万カ所の充電ポイントが設けられました。公共充電ステーションは、より速い充電を可能にする進歩を遂げています。充電テクノロジーの進歩により、EVへの電力供給が強化され、出力が高くなり、より多くの電力を車両に供給できるようになり、充電時間が短縮されました。
EV充電インフラは電力供給能力を改善しました。DC高速充電機などの高出力の高速充電機は、現在ますます普及しています。このような充電機によって自動車への電気の出力を高めることができ、時間に追われる運転者がより効率良く充電できるようになります。
現在、ダイナミック充電機能を備えた充電ステーションが増えており、バッテリーの充電状態に基づいて電力を調整できます。このダイナミック充電により、バッテリーは常に最適な充電速度を得ることができ、充電効率が最大化され、充電時間が最小限に抑えられます。
コンポーネントの小型軽量化による全体的なコスト削減
電子システム全体のコンポーネントフットプリントの縮小と重量の削減は、EVの効率とコスト効率を高める上で重要な役割を果たしています。
パッケージの小型化
スペースが何よりも重要な場合は、小型化することで性能を最大化できます。すべての電子コンポーネントをEVに収めることは複雑ですが、設計エンジニアはより小型化する方法を模索しています。ワイヤーハーネスパッケージは、ワイヤーのサイズと電圧で駆動します。このハーネスを小型化し効率性を高めることで、自動車の総重量を削減できます。
重量の削減
従来の銅線より厚みがあるものの、アルミニウムケーブルを採用すれば重量とコストの削減に役立ちます。そして、同量のエネルギーを伝導するには大きなゲージのワイヤーが必要であるにもかかわらず、アルミニウムワイヤーの重量は銅の重量のわずか30%です。さらに、アルミニウムワイヤーのコストは銅線の半分です。
メーカーは、内部電子システムの重量をさらに削減すべく、金属合金、複合材料、ポリマーを使い始めています。このような材料を使うことで、機能性や耐久性を損なうことなく戦略的に重量を削減できます。
複合的な効果
重量とパッケージのサイズを削減し、適切な箇所によりコスト効率の高い材料を採用することで、EVはその性能を犠牲にすることなくさらに効率性を高めることができます。車両アセンブリ全体の各コンポーネントを最適化することで、本当の意味で効率性を高めることになります。
安全で効率の良いEVにはシステムの温度を下げることが必須
設計エンジニアたちは、電子システム内の温度を下げられるよう尽力しています。例えば、EVに使用されているコネクターを温度を下げられるように最適化すると、性能を損なうことなく低コストの樹脂を使用することができます。この最適化によって、コネクターの過度なエンジニアリングを排除し、信頼性と機能性を維持しながらコストを削減できます。
フットプリントの小さい電子コンポーネントは、熱の発生を抑え、より良い熱放散を可能にします。高い熱伝導率を備えた材料を使用したヒートシンクは、電子コンポーネントから発生する熱を吸収・放熱します。EV内の熱い部分と冷たい部分の熱移動を最低限に抑えるには、絶縁技術も役立ちます。そうすることで、温度による劣化を防ぎ、設計通りに各システムが作動するようにできます。このような温度技術を組み合わせることで、EV内部のコンポーネントが、性能を損なうことなく高い動作温度に耐えられるようになります。
高度なバッテリー管理システムでEVの全体的な効率性を改善
EVのバッテリー管理システム(BMS)は、充放電制御、温度制御、セルポテンシャル・電流・電圧のモニタリングなど様々な制御技術を駆使して、バッテリーストレージシステムを監督する重要な役割を果たします。このような手段で正しい監督と継続的なモニタリングを徹底することで、エネルギー管理システム(EMS)の安全性と寿命を効果的に高めることができます。
高度なBMSは、バッテリーの充電状態の正確性、セルのバランシング、温度管理、過充電・放電に対する保護などを組み合わせて、車両全体に効率良くエネルギーを配分してエネルギーレベルを最適化するのに役立ちます。800名以上の設計エンジニアを対象として、モレックスが最近行った調査では、22%の回答者がEVの電力システムを設計または実装する際に、バッテリーパックが最大の課題であると回答しています。バッテリーパックは、車両内電力エレクトロニクスに次いで、2番目に大きな課題になりました。
設計者は、センサー、モーター、EU、その他のコンポーネントを動作させるために、12ボルトではなく48ボルトの高電圧電力を採用しています。高電圧では、同量のエネルギーを少ない電流で提供でき、ケーブルを薄く軽量にすることができます。同様に、EVパワートレインは高電圧設計に移行し、より効率の良いコントローラーとワイヤリング構成が導入されています。
EVの未来を推進する
上記のあらゆる進化によって、EVは、車両の効率性を高めるよりコンパクトで軽量の電子コンポーネントを搭載することができます。これが、EV業界が待ち望んでいた次の段階なのです。
EVメーカーが小型でより効率の良い軽量システムを必要としている現在、モレックスは、信頼できる機能性を実現するための、小型化ソリューションの包括的ラインナップを取り揃えています。EV内のより洗練された電子システムの需要が高まる中、モレックスの定評ある専門知識が、EV市場の前進をサポートします。
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