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EVの充電

EVバッテリーテクノロジーのイノベーション

1950年代以来、12V電力モデルが自動車業界の標準でした。しかし、現在の消費者からの需要を受け、自動車メーカーは48Vを使った未来に目を向けています。

読了時間:5分

1950年代以来、自動車業界では12V電力モデルが標準であり、12Vは自動車の設計や部品のデフォルトになっています。自動車メーカーはこの標準を使ってコストを低く保ち、時代に合わせて機能や電化が拡大する中でシンプルな電気設計を維持してきました。 

12Vはうまく稼働してきましたが、性能や車内での体験に対する現代の消費者の期待が高まる中で、12Vの標準も進化する必要があります。ソフトウェア定義型車両の登場や、マイルドハイブリッドアーキテクチャ、さらにはより厳しい炭素排出の法律などによって、消費者の要求に応え、規制上の要件を満たすために48Vの設計の必要性が高まっています。 

48Vの採用には若干の課題がありますが、電気的革新によって新しい標準をベースにした効率性の高いシステムへの道筋が整いつつあります。自動車の設計によって電化の未来が拓かれようとする中で、重要ないくつかの要因についての理解と検討が必要です。48V標準を推進する要因、自動車メーカーと消費者にとってのメリット、48Vへの移行に伴う課題などに対する理解と検討が必要だ、ということです。 

48V電力への移行を推進する要因

より安定的な電力標準への移行は一晩で起こるものではありませんが、マイルドハイブリッドや完全な電気自動車の標準として48Vを採用するにあたり、自動車メーカーに影響を与える重要な電気的な要因と消費者の要因がいくつか存在しています。

炭素排出削減に向けた法的措置

昨今の法規制では、特に米国と欧州において新たに製造する自動車について炭素排出を大幅に削減することが求められています。こうした変更によってインテグレーテッドスタータージェネレーターなどのマイルドハイブリッドのアーキテクチャや48V電力ネットワークへの移行が促され、エンジン設計の効率性も向上します。 設計エンジニアはプレッシャーを感じていることでしょう。設計エンジニア824人を対象にしたモレックスの調査によると、電力関連の規制順守には努力が必要だと回答した人が96%に上りました。

より厳しい燃費規制がストップスタートシステム、先進運転支援システム(ADAS)、電気自動車(EV)のような代替駆動ソリューションといった最新テクノロジーの開発を後押ししています。こうした新しいテクノロジーには高電圧の電源が必要であり、48V標準への移行が促されることになります。 

消費者の好み

炭素排出に敏感な購入者はハイブリッド、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、電気的に強化された車両を好んで選びます。OEMや部品サプライヤーはこうした消費者の要求を満たそうと、これに応えて次世代の部品や自動車を製造し始めています。よって、驚くべきことではありませんが、先ほど取り上げたモレックスの調査において、電力に取り組んでいる設計エンジニアの中で、エネルギー効率が主な優先事項であると回答した人は74%に上りました。

電気ターボチャージング

Eターボはタービンを回転させてエンジンへの空気の取り込み量を増大させるために電気モーターを使うことでエンジンの性能を向上させるものです。このようなターボチャージングは12Vまたは24Vシステムによる既存のターボチャージングシステムよりも大きな電力を必要とします。より効率的で強力な電気ターボチャージングシステムが標準化される中で、48V電力源が注目されるようになるでしょう。 

スペースの効率性

48Vアーキテクチャへの移行というのは、システム電圧の増加だけではありません。この移行には現在の自動車の電気アーキテクチャの変更も必要となります。機能が豊富で高性能の車両を左右するのは、高密度アーキテクチャと同じ電力効率を発揮できる、より軽くてより小さな部品です。より優れたインフォテインメントや車両統合制御システムの機能といった消費者に優しい潜在性を発揮するために48V標準が不可欠です。

48V電力のメリット

電力や効率性が高まると、製造企業にも消費者にも新たな可能性が拓かれます。よりハイテクでよりフットプリントの少ない自動車に対する消費者の関心が高まっていますが、48Vがもたらす効率性の向上と追加機能はそれを満たす助けになるでしょう。 

48Vのエンジニアリングの観点からのメリット 

  • パッケージの小型化:48V電力では高密度アーキテクチャと同じ水準の電力効率を発揮できる小型製品の生産が可能になります。よって、スペースを犠牲にせずに機能が豊富で高性能な車両の生産が容易になります。自動車設計者は、電気システムのサイズを小型化できる一方で、同じ機能を維持することができ、車両の全体的な性能を高めることができます。 
  • 製造コストの節約:小型部品では必要な材料が減るため、消費者の需要に応えつつ製造や販売のコストを削減することができます。48Vシステムの効率性を改善するとエネルギー総利用量を最高で30%削減することにつながります。
  • より優れた機能:部品の取付面積が小さくなるため、自動車設計において特定のスペースにより多くの機能を盛り込むことが可能になります。車には小さなスペースでも無線充電器、充実したインフォテインメントシステム、先進運転支援システムといった最新テクノロジーをより多く搭載することができます。こうした改良によって顧客の全体的な運転体験が向上し、車の価値や認識される品質も高まります。さらに、こうした部品のサイズが物理的に削減されることで、自動車メーカーとしては操作や安定性の高い、より流線型で空気抵抗の少ない車両を設計することができます。
  • 炭素排出の削減:48Vシステムの効率性が高まると、燃料消費、二酸化炭素(CO2)、内燃車両が排出するその他の汚染物質が減少します。部品の小型化は抵抗の少ない軽量車両につながり、さらに炭素排出を削減することができます。
  • 燃費向上:電力による強化でエンジン負荷が低下することは、自動車メーカーが車両の駆動に必要なエネルギーを削減する上で助けとなります。その結果、燃料消費が低下し、燃費が向上します。48Vシステムによる効率性の向上によって、スピードを出していても車両の性能が保たれ、1回の給油や充電での走行距離を延ばすことができます。 

48Vによる消費者のメリット

  • 車両性能の向上:次世代電力ソリューションによって既存のエンジン性能が高まり、パワーと回転数が増加するため、加速が改善します。電気モーターは低スピードでスムーズに回転し、右左折や悪路の運転の際にも安定性と快適性が高まります。48Vシステムは内燃エンジンの負荷低減にもつながり、エンジンの高性能を維持しつつエンジン動作の効率性向上と燃料消費の削減が可能になります。こうした軽量車両ではパワーウェイトレシオが高まり、全体的な性能が改善します。
  • 車両コストの低下:部品の小型化と部品数の削減を受けて、48Vアーキテクチャでは製造プロセスを効率化することができます。製造企業は車両製造に必要な素材と労働力を減らすことができるため、全体的なコスト削減につながります。消費者の観点からは、より軽量でエネルギー効率の高い車両では車両のライフタイム全般にわたる燃料費と維持費が減り、ドライバーとしての所有コストが下がります。
  • 操作性の向上:電気的に強化された車両はスピードや正確さという点で指示に素早く反応し、他の車両よりも運転しやすくなります。軽量化によって車両の加速が速くなる一方で、安定的なハンドル操作は維持され、ドライバーによる車のコントロールが容易になります。軽量車両であるために、自動車メーカーとしても全体的な性能を犠牲にしなくても、車線逸脱防止支援といった高度なアクティブセーフティシステムを搭載しやすくなります。これによって車両の全体的な安全性が高まり、難しい道路状況や地形でもドライバーはより自信を持って運転することができます。

12Vから48Vへの移行に伴う課題

12Vの設計が自動車製造に深く組み込まれているため、48Vへの移行は期待ほど早く進まないでしょう。部品自体の製造手法や既存のインフラを考慮すると、移行スピードは48Vシステムの技術的要件を満たす上で必要な部品設計の変化にも左右されることになります。 

そのコストや比較的新しい技術であることからも、48V技術の採用はさらに遅れる可能性があります。大規模なテクノロジー変更を進めるには説得力のある論理が必要になるからです。  

バッテリー管理の向上が48Vアーキテクチャの成功に欠かせません。適切なデザインがなければ、自動車メーカーは非効率な電力ストレージ、コスト増、不安定なシステムによる潜在的な安全性のリスクといった危険要因を抱えることになります。利用可能な電力ストレージとバッテリー容量を最大限に活用するために、自動車メーカーはハードウェアとソフトウェアの改良に投資する必要があります。予測アルゴリズムを使って利用ニーズに基づく充電サイクルを調整することや、経時的なバッテリー状態の追跡に関するより優れた手法を開発することなどが考えられます。 

高度なエネルギー制御システムも必要になります。各セル内の電圧水準を管理し、バッテリースタックの過充電や充電不足を防ぐためです。こうした措置には研究開発のために多大な投資が必要になりますが、現在の走行条件にかかる需要や非常に厳しくなり得る環境に対応する信頼性の高い48Vシステムを生み出すためには不可欠なものです。

モレックスは48V対応部品を牽引

この30年でEVの需要が伸びる中、モレックスは自動車業界に対して重要な役割を担ってきました。当社は早い段階から、安定的な電源管理のもとになるコネクターや配電システムなどの48Vアプリケーションをサポートするソリューションを開発してきました。当社の部品を通して48Vシステム全般について一貫性のある接続や通信が促進され、あらゆる環境において信頼性の高い性能を発揮することができます。

 

 

 

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