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信頼性への道: 故障試験で長期的な性能を保証する方法

ますます複雑化する自動車業界では、一般的な仕様に合わせて部品の試験をしても、実環境のユースケースを正確に反映できない可能性があります。部品が最も必要とされるときに、最も必要とされる場所で、確実に性能を発揮できるようにするための故障試験とは?

読了時間: 4分

新たな特徴、機能、アーキテクチャが登場するたびに、さまざまな独自の課題が自動車設計エンジニアにもたらされます。技術の進歩が同時に起こることが多くなると、その傾向が顕著になります。たとえば、EVや先進運転支援システム(ADAS)搭載車には、従来の内燃機関(ICE)の車よりもはるかに複雑な電気システムやセンサーが搭載されているため、熱管理の新たなアプローチ、バッテリーの安全性重視、ワイヤーステアリングや電動ブレーキといった機構の機能的安全性への配慮が必要になることがよくあります。これらの課題は、EVの双方向充電、よりインタラクティブなインフォテインメントシステムの搭載、ADASの継続的進化、完全自動運転(FSD)の最終的な進化など、新たな機能性によって増える一方です。  

自動車の電気系統が複雑になるにつれて、使用する部品に対する性能要件も厳しさを増しています。たとえば、EV内の一部のコネクターは、車両の走行中だけでなく、充電時にもほぼ連続的に動作する可能性があるため、こうした追加の動作条件に対応できる設計にする必要があります。 

現在と将来の自動車がモレックスのような部品メーカーに必要とするのは、部品が規格や規制要件に適合し、自動車の寿命を通して野外で確実に動作するよう徹底するという意識をこれまで以上に強く持つことです。信頼性の設計(DFR)には抜本的な転換が必要であり、従来の試験方法を再評価し、人工知能(AI)と機械学習(ML)で活用できる革新的な信頼性予測モデルを組み込み、実環境で性能を発揮できるように、部品レベルに至るまで設計を最適化することが求められています。 

合格のための試験から故障試験への移行

自動車の機能はますます複雑になっていますが、多くの自動車メーカーは、内部コンポーネントの簡素化に取り組んでおり、さまざまなストレス条件やデューティ比を持つさまざまな場所で使える1つのソリューションを求めています。モレックスにとってそれは、熱、振動、浸入、腐食、その他の変動要因について、これまで以上の範囲に耐えるコネクターの設計を意味します。しかし、そのためには、確実な動作を実現する設計強度を特定し、従来実施していた合格のための試験モデルを故障試験に切り替える必要があります。

合格のための試験はこれまで基準とされてきましたが、それでわかるのは、試験の基準に対して合格か不合格かのみです。不合格の場合にどの程度合格から遠いのかわからず、合格した場合でも安全係数がわかるものではありません。対照的に、故障試験は安全マージン、つまり製品の強度など設計の限界と、性能に関する仕様の合格基準との差を判断します。  

このアプローチは輸送業界特有のものではなく、より複雑で機能豊富な期待事項に対処する際にエンジニアが直面する課題を反映しています。750人を上回る設計エンジニアとシステムアーキテクトを対象に先日行ったモレックスの信頼性とハードウェア設計に関する調査では、回答者の86%が、現在の要件を上回る新製品を設計するか、現在の要件に加えて将来発生しうる要件も満たそうとしていることが明らかになりました。

モレックスは、実環境での信頼性試験へのこの移行をどのように推進しているのでしょう?  

故障試験で限界に挑戦

加速寿命試験(ALT)は、製品のフィールド寿命をシミュレートするために業界を超えて広く使用されている方法です。この方法では、製品を短期間、極端な環境条件や使用条件にさらした後で、引き続き仕様に適合しているかどうかを判断します。非常に高い振動レベルや温度など、日常的なユースケースを超えるストレスや、コネクターの着脱を繰り返すような加速した使用率にさらす場合があります。ただし、ALTは完璧な試験方法ではなく、適切に用いないと設計の過不足につながる可能性があることに注意することが大切です。

故障試験は、製品が故障するまで負荷をかけることで、現場のストレスに対する製品の強度をより正確に把握できます。また、故障試験のデータはALTの加速係数の開発に利用できます。故障試験という手段を活用すると、設計者は性能と信頼性の要件を満たしながら、過剰設計することなく製品を最適化できます。

モレックスは、故障試験の方法を用いて、製品が実環境にどの程度耐えられるかをしっかり把握し、現在と将来の製品設計を改善して、お客様に信頼を提供しています。物理的な製品や試作品の性能を測定するだけでなく、製品設計サイクル全体を通して信頼性を予測しているのです。 

故障試験データを使った予測モデルのトレーニング

予測エンジニアリングもデジタル・ツインも長い間、自動車設計で使用されてきましたが、モレックスは現在、その同じ方法論をコンポーネントレベルに適用しています。その際には、故障試験など広範な製品試験を通じて取得したデータを利用し、POFモデルから情報を得ています。 

これはお客様にもモレックスにも、基本的に以下のような大きなメリットをもたらします。

  1. 製品が厳しい条件に耐えられることを、根拠となるデータを添付して証明できます。
  2. 物理的な試作の前に仮想試作品を改良することが可能になるため、試作品および試験段階を簡素化し、コスト効率を高め、共同作業を可能にし、これまで以上に実験的にすることができます。

さらに、こうした手段を支援するAIモデルやMLモデルには、最新の製品試験結果に基づいて継続的にトレーニングを施すため、時間の経過とともにますます能力と精度が向上します。こうしたモデリングのおかげで、より頑丈で小型になった信頼性の高いコンポーネントを実現でき、より幅広い輸送要件に対応できるようになります。

モレックスでの次世代信頼性試験

輸送業界向け相互接続ソリューションのリーダーであるモレックスは、豊富な製品ポートフォリオと、設計から試作品や試験に至るまで、幅広い分野横断的なエンジニアリングの専門知識を兼ね備えています。故障試験、ALTなど、信頼性の設計方法を網羅してきたモレックスの歴史が、革新的な予測アプローチの基礎となりました。それにより、お客様に必要なデータを提供し、より多くの情報に基づいた意思決定をしていただき、モレックス製品の長期信頼性に対する自信を深めていただくことができます。 

信頼性とハードウェア設計に関する調査結果の詳細については、こちらをご覧ください。


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