産業とアプリケーション
業界や市場に関係なく、電気コネクターやその他のコンポーネントのテストと検証の決定的な重要性は明白です。自動車の信頼性は、自動車業界が内燃エンジンに固有のさまざまな弱点や故障モードに対応するにつれ、着実に改善しています。しかし、この業界の、電動化や自動運転といった新しいアーキテクチャや革新により、新たなコンポーネントや故障モードの推移がその展望を変化させています。単純に旧来と同じテスト手法に従うことはもはや不十分である可能性があります。検証手法の改善が必要です。
信頼性と検証の重要性
全世界の自動車産業において、信頼性とテストに関する共通基準は、共通言語を確立してコンポーネントと設計の信頼性を把握する上で役立ちます。電子ソリューションの場合、エンジニアは、ISO、SAE、USCAR、IECの指針において定義された標準を使用し、さまざまな使用環境における特定製品の性能を検証しています。自動車エンジニアはこれらの標準を遵守して、製品の電気的、機械的、熱的性能を簡略的に判断しています。
製品の設計はほとんどの場合、テスト期間全体において故障ゼロで目的どおりに機能する必要があります。これらの検証テストは加速化モデルを採用し、期待される寿命をより短い期間に圧縮しして実行します。それによってこのプロセスを妥当な時間枠で実行できるようにしているのです。このプロセスは「サクセスラン」または「実証テスト」として知られています。このテストは本質的に「go」「no-go」を判断するものです。つまり、その製品がゼロ故障でテストに合格するか、合格しないかです。残念ながら、このテストでは故障モードを知ることも、定量化できる信頼度数値を得ることもできません。
製品のライフサイクルと「バスタブ曲線」
コンポーネントの真の信頼性の確立は、go/no-goの判断よりもはるかに複雑です。信頼性は、製品のライフサイクル全体で管理する必要があります。製品の一般的なライフサイクルでは、相対的に高くなりかねない初期故障率が示されます。これらは初期不良またはインファント故障と呼ばれ、その原因は一般的に、アセンブリーの不具合、コンポーネントの欠陥、輸送時の損傷です。ここで、品質管理の手段を適用するか、完成品性能テストを実施することでこれらの初期故障を検出し、現場でのこうした欠陥を防ぐことができます。
故障率が上昇するこの最初の期間を、製品に期待される寿命期間中に一定したより低い故障率を維持できる期間に変えることができるのです。この期間中、偶発故障がかなりの一定した割合で発生します。この偶発故障は多くの場合、事故、過大応力、落雷などの自然事象といった外的要因によって引き起こされます。一般的に言うと、製品における偶発故障を抑制または排除する最良の方法は、そのシステムで冗長性を確保することです。
最終的に、製品が寿命末期に近づくと、故障率が上昇する主な故障モードは「摩耗」になります。摩耗による故障には、疲労、腐食、損耗が含まれますが、これらに限定されません。一般的に、コンポーネントの交換ではこの摩耗または不可抗力による寿命末期の故障に対応します。この故障率の細長い「U」の形はバスタブ曲線(故障率曲線)と呼ばれています。
信頼性の定義
信頼性は、製品がその期待される機能を、指定された環境で故障することなく、規定の期間にわたって実行できる確率のことです。信頼性は時間と故障率の関数であり、製品のライフサイクルとバスタブ曲線の観点から過去に議論されたものです。信頼性を計算する他のパラメータとしては、10億時間あたりの故障回数を示すFIT(Failures in Time)、パーツ・パー・ミリオン(Parts Per Million)、製品のある割合(X%)が故障するまでの製品寿命を示すBXライフなどが挙げられます。信頼性は必ず0~1の範囲に収まります。
指数分布関数は、信頼性を計算する最も一般的な方法です。ただし、これはバスタブ曲線の偶発故障の領域における一定の故障率についてのみ応用できます。2母数ワイブル分布は、ワイブルスロープを用いてこの関数を修正し、ライフサイクルにおける初期段階と摩耗段階に対応できるようにしたものです。これにより、有益で洞察に満ちたデータを獲得して設計と材料の変更に関する決定を導き出すことができます。
信頼性に加え、把握すべきもうひとつの重要かつ定量化可能なメトリクスは信頼度数値の信頼度(confidence)です。信頼度とは、主張されている故障率が正確であることの最低限の確実性です。これは、テストの有効性を測る上で重要です。信頼度は、信頼性目標、テストサンプル数、故障数の因数です。成功の公式のパラメトリック2項式を使用することでテストサンプルのサイズとテスト期間のトレードオフが可能になり、より優れた信頼度レベルを生み出すことができます。
現在の検証手法における信頼性の活用
「サクセスラン」テストには、故障の物理的性質に関する情報を得られず、定量的な信頼性手法にならないという課題が伴います。カイ2乗関数を利用して近似値を得ることはできますが、低FITや優れた自動車安全水準(ASIL)の評価要件を伴う安全システムにとっては不十分になるでしょう。このハードデータの欠如によって、開発プロセス中に信頼性に基づく決定を行うことは困難です。
信頼性を真に定義するには、応力寿命(S-N)曲線(別名: ヴェーラー曲線)とデューティサイクルについて理解する必要があります。S-N曲線がはっきりすると、応力に対する設計強度またはシステム強度を理解することができます。累積損傷アプローチ(マイナー則)を活用すると、真の信頼性および安全マージンの概念を得られます。さらに、S-N曲線によって正確な加速寿命試験(ALT)の開発に向けた情報を得られ、開発を加速化させることができます。
データ駆動型の決定
では、設計段階で製品の信頼性に関する正確かつ定量的なデータを得ることがこれほど重要なのはなぜでしょうか。エンジニアは開発中の製品について、その信頼性、効率性、コスト効率、製造可能性を最適化するためにデータ駆動型の決定を行えるようになります。製品の信頼性の概要を完全に把握するメリットは非常に重要です。
定量的な性能データによって得られるさらに優れた製品の信頼度
製品の設計強度と安全マージンの把握
最良の材料と製造手法の選択に関する指針
故障の物理的性質の把握と加速試験の確立による製品化までの時間の短縮
最新の車両は、電子的な配線とデバイスで構成されるますます複雑なネットワークを搭載しています。小型化、電動化、共有モビリティ、「100万マイル」の寿命といったトレンドによって、製品の信頼性をより良く理解することが求められています。この信頼性の改善は、製品開発サイクルの加速化と最終製品の改善の両方を実現する上で予測エンジニアリングと切り離して考えることはできません。
こうした包括的なプロセス、ツール、慣行を確保するための時間は現在、テストと検証に使われています。モレックス信頼性ラボのエンジニアはこれらの手法の実装と微調整を進めており、MX-DaSH Connector Systemなどの新しい小型化された電気的ソリューションの信頼性のより明確な概念を構築しています。これによってモレックスのエンジニアが作成した設計上の決定に関する情報を得て、新製品の耐久性、製造可能性、多用途性を改善することができます。輸送業界における最新の小型化の革新について、モレックスの小型化のページでさらに詳しくお読みください。