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信頼性リスクを回避するヒント: 電子設計における5つの考慮事項

電子デバイスの複雑化で、設計者は製造可能性、ユーザーエクスペリエンス、増大する電力需要、環境耐久性のバランスを取りながら、製品の信頼性を確保するという課題を突きつけられています。製品とブランドの評判を守りながら設計目標を達成するための方法をいくつかご紹介します。 

執筆: スコット・ウィッカー
トランスポーテーション・イノベイティブソリューションズ担当シニアバイスプレジデント兼プレジデント

読了時間: 5分

電子デバイスや電子システムでは小型化、高速化、高性能化が同時に進んでいます。そして言うまでもなく、接続性はかつてないほど強化されています。しかし、お客様の期待値が高まるにつれ、信頼性の高いパフォーマンスの実現はますます複雑になります。エンジニアやシステムアーキテクトは、製品性能と業務的要件や市場の期待とのバランスを取ることを余儀なくされており、妥協につながるシナリオがしばしば発生します。 

業界を問わず、製品の信頼性はブランドの評判とはっきり結びついており、信頼性を損なうことは、企業のブランド、製品の成功、さらには新テクノロジーの採用にさえ壊滅的な打撃を与える可能性があります。しかし、756人の設計エンジニアとシステムアーキテクトを対象に先日行ったモレックスの信頼性とハードウェア設計に関する調査では、設計上のトレードオフを評価する際の最優先事項として信頼性を挙げた回答者はわずか3%にとどまりました。 

エンジニアが犠牲にしたくない5つの設計上の考慮事項と、信頼性の保証を推進するイノベーションを以下に挙げます。 

コスト、製造可能性、信頼性のバランスを予測する技術

技術的には2つの異なる基準ですが、製品のコストと製造可能性はしばしば密接に関係しており、データがその相関関係を裏付けています。調査に回答した人の50%はコストを、46%は製造可能性を、製品の信頼性よりも優先する可能性の高い設計上のトレードオフに挙げています。しかし、トレードオフは必要なのでしょうか。また、信頼性を犠牲にせずに業務的要件を満たすことは可能でしょうか。 

輸送業界では、予測エンジニアリングやデジタル・ツインといったイノベーションが先入観を覆しつつあります。PCBの設計を支援し、ホットスポットを明らかにし、EMIの問題を特定するソフトウェアは以前から存在していました。しかし、予測技術とデジタル・ツイン技術の進歩により、今では物理的な試作品よりも前に、全体像を把握し、実環境における製品性能を事前に判断できるようになりつつあります。これがコスト、製造可能性、信頼性のバランスを取ることにどう役立つのでしょう? 以下に2つ例を挙げます。 

材料の選択。製品の設計に使用する金属、プラスチック、その他の材料の選択は、製品のコスト、製造と組み立ての手段、通常の使用環境と極端な使用環境での長期的な信頼性に大きく影響します。(信頼性に特に重大な影響を与える)熱管理に強い影響を与えるのは、材料です。材料の選択は、3Dプリントの使用を可能にするなど、製造方法にも影響します。予測エンジニアリングは、材料の性能を予測するだけでなく、材料が環境暴露や日常的使用の厳しさにどの程度耐えられるかを予測することもできます。

コンポーネントの選択。予測モデリングは、(コストに大きな影響を与える)性能基準を満たすために必要なのは既製コンポーネントとカスタムコンポーネントのどちらかを判断したり、そのコンポーネントが製品ライフサイクルにおいてどの程度の信頼性を持つかを判断したりするのに役立ちます。モレックスは、信頼性が高い自社コネクターの設計にも予測エンジニアリングを使用しており、最近、コネクターの定格電流を95%の精度で予測し、一時的な電流スパイクの影響を測定できる、忠実度の高いデジタル・ツインを開発しました。信頼性がユーザーの安全に影響する輸送業界などでは、リコールや保証クレームの削減に役立つこの技術です。  

予測エンジニアリングとデジタル・ツインの次は何でしょう? 企業はすでに、この技術をAR/VRデバイスと組み合わせて、エンジニアが仮想世界や仮想環境と直接やりとりできるようにしはじめています。この技術の普及につれて、システム、サブシステム、コンポーネントの信頼性の特徴を、エンジニアがインダストリー4.0施設の工場フロアなどで可視化することが期待できます。このデータは、将来のデバイスのコスト、製造可能性、信頼性を管理する上で非常に貴重なものとなるでしょう。エンジニアはこの未来に期待を寄せており、AI、機械学習、シミュレーション、データ分析など、データ駆動型技術におけるイノベーションが、今後5年間で電子製品の信頼性を向上させる最高の機会をもたらすと考えていた人は、回答者の半数近くに上りました。  

ソフトウェアとハードウェアの信頼性を橋渡しするユーザーエクスペリエンス

消費者がスマートフォンなど日常的なデバイスとやりとりする際のトレンドが、プロフェッショナル用アプリケーションにまで及んでおり、ユーザーエクスペリエンス(UX)が貧弱であれば、製品の発売がたちまち失敗に終わる可能性があることは驚くに当たりません。 調査回答者の3分の1以上が、製品の信頼性を犠牲にしてでもユーザーエクスペリエンスを重視しています。しかし、UXはソフトウェアとハードウェア双方の設計が表れる複雑なものであり、ユーザーがハードウェアの信頼性の問題だと感じることが、実際にはコーディングの産物である場合もあります。さらに、UXのエラーは外部からの影響にも左右されますが、それをデバイスの信頼性の問題だと感じることもあるでしょう。データ・センターのダウンタイム、ネットワークの混雑、さらには近くにあるデバイスからの干渉など、接続性の懸念事項がUXを大幅に損なう可能性もあります。UXが信頼性に影響を与える他の可能性にはどんなものがあるでしょう?  

タッチスクリーンのインタラクティブ性。スマートフォンのタッチスクリーンの成功により、ほぼすべての業界でデバイスにタッチスクリーンを搭載するようになりました。車のエンターテインメントシステムから医療機器に至るまで、静電容量式タッチスイッチはデバイス操作の意味を刷新したのです。しかし、ユーザーエクスペリエンスが信頼できるものであるとみなされるには、応答性が高く、一定の物理的圧力に耐え、読みやすいタッチスクリーンでなければなりません。ポリスチレンスルホン酸またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、別名PEDOTは、家電製品などのデバイスのタッチ式ヒューマンマシンインターフェース(HMI)に適した画期的な有機ポリマーです。PEDOTは、従来の酸化インジウムスズ(ITO)タッチスイッチのように極めてクリアではありませんが、キッチンレンジの調理台のような高温アプリケーションに対する耐性や、曲面および従来とは異なる表面に使用した場合の優れた耐久性など、信頼性に直接貢献する性能上の利点がいくつもあります。 

非接触接続。モレックスのMX60シリーズソリューションなど、新しい非接触接続デバイスは、従来の機械式コネクターと比較して長期信頼性を向上させつつ、ユーザーエクスペリエンスにもいくつかの利点をもたらします。非接触コネクターは、小型化した無線周波数(同軸)レシーバーとトランシーバーを利用して、近い距離でワイヤレスにデータを交換し、DisplayPort、ギガビットイーサネット、USB SuperSpeedといったプロトコルで通信できます。いきなり2台のモニターを横に並べて、物理ケーブルを使用することなく、1台のモニターからもう1台のモニターにすぐに画面を転送できるため、ユーザーのセットアップが簡素化され、ミスアラインメントや誤用によって接続ポイントを破損するリスクがなくなります。また、非接触接続を使用するとデバッグポートをなくすことができ、関与するエンジニアや技術者のユーザーエクスペリエンスが向上するとともに、液体やほこりの一般的な侵入口をなくすことができます。  

信頼性が試される消費電力

交通機関からデータ・センターまで、ユーザーがより高速かつ機能が豊富で、高性能なシステムやデバイスを求めるにつれ、消費電力は増加しています。この変化を反映して、調査回答者の25%は消費電力を優先事項のトップ近くに位置付けています。ただ、この傾向は、信頼性と興味深い関係にあります。というのも、(特に熱管理に関する)設計上の課題になるだけでなく、使用量の増加に適応する電力網自体の信頼性についても強調することになるためです。信頼性を危険にさらすことなく、消費電力の高まりに対応した設計をするために、エンジニアはどうすればよいのでしょうか。 

高信頼性コネクター。信頼性の高いパフォーマンスを実現するには常に品質が重要ですが、低品質のコネクターだとシステムにもその周囲にも損傷を与える可能性がある高出力アプリケーションでは、その重要性がさらに増します。たとえば、EVバッテリーの充電品質が低いと、寿命の短縮、走行距離の減少、さらには熱暴走にさえつながる恐れがあります。同様のリスクは家庭用蓄電システムにも当てはまります。再生可能エネルギー源からの送電品質が低いと、最も必要なときにバッテリーシステムが起動しなくなる可能性があります。 

電力の信頼性に対する最大の脅威の1つは熱です。高出力アプリケーション用のコネクターを評価する際には、電流だけでなく、発熱を最小限に抑えるための大きな接触面や低い接触抵抗といった特殊な設計特性も考慮することが重要です。

信頼性に必要なのは実環境での使用に耐えること

IoTデバイスの普及が進み、あらゆる産業でシステムの高度化が進むにつれ、複雑な電子機器がより幅広い環境条件やユースケースの中に置かれるようになっています。このことに製品設計者が気づかないわけはありません。エンジニアの23%は、環境条件や使用条件に対する製品の耐久性を主要な設計基準の1つとして考えています。予測分析エンジニアリングの活用は、信頼性の他の側面を犠牲にすることなく耐久性を確保する手段の1つですが、他にどんなことができるでしょうか。再び輸送に目を向けてみましょう。 

自動車から学ぶ。輸送業界ほど、さまざまな過酷な条件に電子システムがさらされるアプリケーションはないでしょう。自動車やトラックで使用する部品は、液体やほこり、極端な温度、持続する振動に耐えることができなくてはなりません。自動車はある意味、部品の信頼性に関する膨大な実環境試験とみなすことができます。道路での過酷な使用に耐えた部品は、ほぼどんな環境にも耐えることができるからです。従来であれば輸送用の設計に分類されていたコネクターは、産業用ロボット、屋外照明、農業用機器、船にも最適です。洗濯機は、液体、熱、低温、振動にさらされます。ドローンは強風や湿気の多い空中を飛行することがあります。太陽光発電所は夏の暑さと冬の天候にさらされます。自動車とその中の部品は、そうしたすべてに耐性があることが証明されています。 

環境条件や日常的な使用に対するコネクターの信頼性を考慮する際に求められるのは以下です。

  • IP67、IP68、IP69kなど、高い侵入保護(IP)等級を持つ堅牢なハウジングによる、液体や破片などからの保護
  • CPA、端子位置保証(TPA)、一次ロック強化(PLR)、独立二次ロック(ISL)、慣性ロックといったロック機構およびアライメント機構による、偶発的切断の可能性の最小化
  • 広い動作温度範囲による、凍結条件と高熱条件からの保護

性能と信頼性を実現するカギとなるモレックス

エンジニアが信頼性に対するますます複雑な課題に直面する中で、サプライヤーの役割はさらに重要になっています。90%を上回る回答者が、信頼と実績のあるサプライヤーなしでは信頼性の高い製品を作れないことに同意しています。とはいえ、回答者の96%は信頼性の問題で部品サプライヤーを変更したことがあると答え、28%は頻繁に変更していると答えました。サプライヤーはお客様の高まる要求に対応できるのでしょうか。 

モレックスはこの課題に取り組んでおり、当社の歴史が実績を証明しています。革新的で高品質な相互接続ソリューションを提供してきた80年を超える経験を支えてきたのは、グローバルな分野横断的エンジニアリングチーム、最先端技術、お客様第一の姿勢です。お客様とのコラボレーションはモレックスのすべての活動の核となるものです。私たちが専門とするのは、設計エンジニアが直面する複雑なトレードオフを、信頼性を犠牲にせずに解決することです。お客様がモレックスと連携する際はいつも、そのブランドの評判をモレックスに委ねることになります。モレックスは、その信頼性に確実に応える製品をお届けします。  

信頼性とハードウェア設計に関する調査結果の詳細については、こちらをご覧ください。


 

 

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