産業とアプリケーション
お客様と強固な関係を築くにはさまざまな方法がありますが、ときには基本に立ち返ることが最善の方法になります。期待されているタイミングでの納品は、幸先の良いスタートです。納品が時間どおりに行われると、お客様は生産スケジュールを予定どおりに進めて、戦略的・戦術的計画を前進させることができます。
モレックスの納期遵守率は、2022年と比較して15%向上しています。これは、世界的な供給の混乱と市場の不確実性に対処するための、デジタルトランスフォーメーションを通じた継続的な取り組みの成果です。納期遵守はシンプルな概念ですが、その背景にある戦略、プロセス、テクノロジーははるかに複雑です。とはいえ、それは4つの主要な構成要素に分けることができます。
#1: グローバル販売および業務計画と実行(GSOP&E)
モレックスでは、グローバルなデジタルトランスフォーメーションの重要な柱であるGSOP&Eイニシアチブを通じて、顧客要求日(CRD)に対する納期遵守が劇的に向上しました。モレックスの別の部門がGSOP&E 2.0を立ち上げたことで、顧客要求と実際の納品に関する重要業績評価指標(KPI)が一致するようになったため、前年比で2桁の伸びを記録しています。
GSOP&E 2.0プログラムには、財務、業務、市場への影響を考慮した部門横断的な意思決定プロセスが含まれています。部門横断的チームは戦略や業務、戦術にかかる変数を含め、さまざまな時間軸や領域から決定を導き出すため、あらゆる利害関係者からなるチーム構成になっています。目標は、お客様を最大限にサポートする意思決定を行い、ニーズと期待に直接対応することです。
GSOP&Eのモデルは情報の流れを促すプロセスやツールで構成されており、これによって予測データをもとに将来を考慮した決定ができるようになります。この取り組みを支えるために、Kinaxis Tool Suiteというデジタルバックボーンを全社的に採用したことで、モレックスは目的の変化に応じてGSOP&Eプロセスを拡大したり調整したりできるようになりました。一連のツールによって、総意に基づいたプランニングが可能になり、チームがインサイトを得て、部門横断的なステークホルダーとともに決定を精査できるようにすることで、サプライズが減ることになります。迅速かつ協力的な計画策定によって、精度が向上し、GSOP&Eサイクルが短縮します。これによって、重要な決定のタイミングが改善し、社内の全員が推測ではなくリアルタイムのデータに基づいて行動できるようになります。
#2: ネットワーク最適化
納期遵守を維持するには、モレックスのネットワーク、当社の能力、お客様対応システム、社内システムなど、すべての要素が歩調をそろえるよう徹底する必要があります。そのためには、このネットワーク方程式の変数の1つを変えた場合に、他の変数にどのような影響があるかを明確に理解しておく必要があります。サプライチェーンのパフォーマンスを正確に把握するには、ネットワークへの深い可視性が求められます。検討中の具体的変更がサービスレベルの向上とコスト削減につながるのか、それとも最適な納品パフォーマンスとサプライチェーンの機敏さを実現しないまま、コストだけが増加するのかを包括的に把握する必要があります。
お客様に納品日を変更する必要が生じた場合、ネットワーク最適化によって必要なシステムをすべてリンクさせ、その要望に迅速に対応できるよう徹底します。要望を受けると、その要望が計画チームのメンバーに送られるため、計画チームはリアルタイムで工場と連絡を取って、お客様に対応できます。システムや機能の統一を図る取り組みによって、全体的な対応量は大幅に向上しています。
#3: インフォア ネクサス コントロールセンター
私たちの対応力を拡大する次の要素は、インフォア ネクサス コントロールセンターです。このセンターのおかげで、私たちはお客様の需要と各拠点の在庫をマッチングできます。この社内ロジスティクスツールを使うと、製品がロジスティクスチェーンのどこにあるのかを可視化しつつ、適切な場所に適切な方法で製品を供給できるのです。インフォア ネクサス コントロールセンターは、変更が必要な場所の特定に役立ちます。たとえば、ロジスティクス的に時間のかかる製品やチャネルを変更して、工場からサプライチェーンハブへのもっと迅速な配送に切り替える必要がある場合などです。この可視性の向上により、より良い意思決定が容易になります。また、製品がサプライチェーンのどこにあるかに基づいて適切な意思決定を行うことで、納期遵守に決定的な影響を与えます。
インフォア ネクサス コントロールセンターはまた、モレックスのチームが予期せぬ事態に対応できるようにして、納期遵守を支援しています。コントロールセンターは、商品やコンテナがある場所や、特定の品目への影響を表示してくれます。ユーザーはコントロールセンターを通じて、モレックスのサプライチェーンのエンドツーエンドの概要を即座に確認できます。混乱から遅延を生じさせないための実用的な新しいツールです。
#4: お客様セルフサービスツール
モレックスでは、バックエンドプロセスとテクノロジーに加えて、フロントエンドのお客様エンゲージメントで透明性を実現しており、毎回の出荷における協力関係を確かなものにしています。モレックスは、次世代のデジタルカスタマーサービスとコマースポータルを導入し、高度なツールとプロセスを通じて、お客様とのエンゲージメントのあらゆる側面を簡素化し、改善します。 また、高度な分析と人工知能(AI)を活用して、意思決定を改善するための重要なインサイトを引き出しながら、取引プロセスを自動化しています。
こうした機能のおかげで、モレックスは迅速さを求めるお客様にさらに機敏に対応できるようになりました。これまで、出荷に関するお問い合わせの回答には24~48時間かかっていましたが、今では数分で回答できます。
私たちは消費者として、普段の生活で接するベンダーに対し、自分の要望にリアルタイムのフィードバックを返すことを期待するようになっています。こうした消費者の期待は、今やビジネス環境でも同様になっています。モレックスでは、お客様がアクセス、透明性、対応力を効果的なビジネス関係の重要な課題として見ていることを認識しています。変革的なシステムとプロセスに対する当社の集団的努力と投資が、納期遵守に加えて、優れたカスタマーエクスペリエンスの提供というコミットメントを支えています。こうしたエクスペリエンスを提供できることは、私たちにとって大きな喜びです。