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電力網の信頼性課題によって加速するエネルギー管理のイノベーション

電力需要は指数関数的な勢いで伸びています。米国エネルギー情報局によると、世界のエネルギー消費量はアジアに大きく後押しされ、2018年から2050年の間に約50%増加する見込みです。この需要増加が発生する一方で、世界の電力インフラの大部分はライフサイクルの重要な時期を迎えます。欧州だけでも、電力インフラの40%が40年以上前に作られたものです。

従来の電力網に対する課題は、エネルギー管理アプリケーション全体のテーマです。つまり、効率的で信頼性の高い電力を供給するには、データと信頼性を重視したスマートな機器を使用して、電力網を現代化する必要があります。

読了時間: 5分

電力網の信頼性に対する課題

インフラの老朽化と需要の増加が電力網を不安定にする一方で、他の要素もその一因となっています。予期せぬ出来事により、局所的な停電だけでなく、地域全体に停電が発生する可能性があります。

異常気象

猛暑や厳寒が長く続いたり、気温が大幅に変化したりすると、電力需要が逼迫するだけでなく、電力網の設備にも負担がかかります。竜巻、ハリケーン、洪水、激しい雷雨などの天気事象は、その影響を受けた周辺地域で停電を引き起こすことがあります。最近では、日本の沖縄を襲った台風で、200,000世帯が停電しました。

地政学的混乱

地政学的な関係や紛争は、電力網の信頼性崩壊など、大きな波及効果をもたらすことがあります。たとえば、ある国の電力インフラが軍事攻撃を受けると、近隣地域での大規模停電につながる可能性があります。貿易禁止や関税は燃料不足の引き金となり、政府も市民も、安価で入手しやすい代替品を求めざるを得なくなります。 このような世界的シナリオを受けて、EUはエネルギー源を多様化しており、外国石油資源への依存を抑えています。 

野生動物

動物も電力網に大損害を与えます。日本では、1匹のヘビが約10,000戸の停電を引き起こしました。米国で野生動物関連の停電の半分近くを引き起こしているのは、リスです。こうした例を思い浮かべると愉快なイメージもある一方で、野生動物は変圧器、変電所、送電線に多大な被害をもたらし、コストのかかる大規模停電を引き起こしています。

サイバーセキュリティ上の脅威

近年、世界各地でサイバー攻撃が重要なエネルギーインフラ施設を標的にしており、電力網にとっての新たな脅威が明らかになっています。ハッカーは、ランサムウェアやモノのインターネット(IoT)システムの脆弱性を通じて、デジタルで電力網にアクセスし、遠隔操作で機器を無効にします。こうしたインシデントはあまり一般に報告されていませんが、着々と増えており、世界の電力網がますます多くのコネクテッドテクノロジーを統合し、攻撃にさらされやすくなる中で、この状況が続く可能性が高いでしょう。 

コミュニティ、機関、企業、そして国全体が、このような環境、地政学、サイバーといった破壊的な出来事の結果として、革新的なエネルギーイニシアチブを試みています。 

電力網の現代化に向けたグローバルトレンド

集中型電力網の信頼性がますます低下している現実に直面し、政府機関も民間セクターも、世界各地で大きく異なるさまざまな現代的エネルギーアプローチを導入しています。

たとえば、欧州では、ドイツなどの国々が「オール電化社会」というコンセプトを掲げ、従来のエネルギー源を段階的に廃止して、完全に再生可能なエネルギーシステムを導入しようとしています。とはいえ、再生可能エネルギーの未来に向けた欧州のアプローチは、インフラに独自の難題をもたらしています。たとえば、2023年の夏には、多くの欧州諸国で電力料金がマイナス価格に落ち込みました。従来のエネルギー源で出力を大幅に下げることができないまま、太陽光発電の電力が電力網に大量にフィードバックされ、電力が余ってしまったためです。今後は、このエネルギーを蓄えておいて冬の暗い時期に使用できるようにすることが課題であり、チャンスでもあります。

米国では現在まで、電力使用量が多い時期や重大な故障が発生した場合に従来の電力網を補完・支援するアプローチが再生可能エネルギーであるという認識です。これは、需要の急増時に負担を軽減し、ダウンタイム時に重要インフラを保護し、潜在的な混乱をとにかく最小限に抑えるのに役立ちます。米国は、エネルギーの自給を通じて、エネルギー源を多様化し、より信頼性の高いバックアップソリューションを統合したいと考えています。 

また、アジアでは、電力網の現代化は実にさまざまです。中国では、大規模な太陽光発電所や風力発電所を設置する一方で、石炭など従来型のエネルギー源に大きく依存しており、老朽化した電力インフラを最新の状態にしたり交換したりする取り組みを政府のイニシアチブで推し進めています。フィリピンは国家エネルギー安全保障を重視しており、タイは再生可能エネルギーと炭素回収メカニズムを軸として重視しています。

こうした世界各国の例を見ると、動機や方法論は異なっても、電力網現代化の重要性については世界共通のコンセンサスがあることがわかります。 

スマートグリッド技術による確実な道

連動して動作し、電力インフラを現代化する製品やシステムの幅広いカテゴリーを包含するスマートグリッド技術は、電力網の信頼性と弾力性を高めることを目的としています。老朽化したインフラに代わって新たなスマートグリッド技術を導入すると、エネルギーの使用量と配分をそれまでよりもはるかに意識することで効率がよくなり、ダウンタイムから保護することもできます。その方法は以下のとおりです。

スマートメーターは、家の外にある従来のガスメーターや電気メーターに代わるもので、使用量を正確に可視化できます。多くのスマートメーターは家庭内のディスプレイにデータを送信できるため、消費者はピーク時の使用量を最小限に抑えて節約する機会を得られます。エネルギー会社にも同じデータが安全に送信されるので、プロバイダーは使用量を予測しやすくなり、停電の予防と検出が可能になります。 

アジア太平洋地域では、スマートメーターの設置台数が2026年に10億台に達すると予測されており、消費者にとっても電力網にとってもメリットがあります。 

分散型エネルギー資源(DER)は、自宅の裏庭にある小型発電所のようなものです。発電や蓄電ができる、小規模な分散型エネルギー源がDERです。太陽光発電システム、風力タービン、熱ポンプ、バッテリーエネルギーストレージシステム(BESS)などがその例です。 
 
DERは、電気を使用する場所の近くで発電することで、エネルギーの無駄を抑えます。停電時のバックアップ電源として機能したり、電力網のピーク時の負荷を軽減したりすることで、結果的に電力網の信頼性を向上させます。 

マイクログリッドは、集中型電力網から独立して運用する局所的な電力網です。いくつものDERでマイクログリッドを構成すると、大規模な集中型電力網が停止している間も地域の電力を維持できます。マイクログリッドは、電力サービス途絶時に病院や通信ネットワークのような重要インフラを稼動させ続けることが目的で、従来のエネルギー源を完全に置き換えることを目的とする場合もあります。

マイクログリッドコミュニティの好例は、米国のカリフォルニア州ボレゴスプリングスです。この人里離れた町には、約100キロメートルの送電線が1本あり、集中型電力網につながっています。悪天候が発生すると主電力網から簡単に切り離されてしまいますが、局所的なスマートグリッドのおかげで、ボレゴスプリングスは明かりを灯し続けることができます。オランダのオルスト中国のチベット自治区双湖などでもコミュニティマイクログリッドの成功例が報告されています。

モレックス: よりスマートなエネルギーの未来の創造

多くのスマートグリッド技術は大規模な障害や停電に対する最後の防衛線であるため、優れた信頼性が求められます。ただし、テクノロジーやデバイスがますます複雑になると、設計上の課題が増えます。750人を上回る電子機器設計エンジニアとシステムアーキテクトを対象にモレックスが先日行った調査では、エンジニアにとってもお客様にとっても、信頼性が最重要課題であることが浮き彫りになりました。実際、回答者の大多数(96%)は、エレクトロニクス製品の全体的な信頼性に懸念を示しました。

モレックスのエンジニアリングの専門知識と高出力ソリューションの幅広いポートフォリオは、スマートグリッド技術が最も必要とされるときに確実に動作することを保証します。当社のグローバルエンジニアリングおよびサプライチェーンリソースは、製品設計の初期段階からエネルギー配給の進展を推し進める準備を整えています。 

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