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エネルギー管理

電動化からエネルギー管理までの新たなトレンド

電動化とエネルギー管理テクノロジーの進歩は、電力における科学的ルネッサンスを巻き起こしています。電源、消費地点、エネルギーシステム設計におけるトレンドが、どのようにエネルギー意識と制御の新しい時代を推進するかについて見ていきましょう。

著者:リー・エトルマン
企業戦略&コーポレート開発担当ディレクター

読了時間: 7分

社会は、技術の進歩の収束とエネルギーへの投資により科学的ルネッサンスの時代を迎えています。

充電をリードするのは?

  • バッテリー技術はいまや、電動自動車(EV)への電力供給から一番必要な時のための蓄電に至るまで幅広いアプリケーションに対応しています。
  • 政府投資は、EV充電インフラストラクチャ、グリッドの近代化、地方の接続性と開発途上国に対して行われています。
  • エネルギー利用に対する意識の向上が職場で発生して家庭にも広がり、代替エネルギー源に注目が集まっています。
  • モノのインターネット(IoT)、5Gネットワーク、進化するデータ・センターが、これまでばらばらだったシステムとデバイスを結び付けています。
  • 人工知能(AI)と機械学習(ML)は、リアルタイムデータを、自動化され、自己最適化されたリアルタイムな意思決定へと変換します。

このルネッサンスにおいて生まれてきたのが、電動化とエネルギー管理という2つの主要な、互いに密接に関連するテーマです。電動化においては、従来の燃料源を使用していたテクノロジーは、再生可能エネルギーを動力とする同等のシステムによって補完または置換されます。一方、エネルギー管理とは、エネルギーの貯蔵、モニタリング、分配を意味します。これらのテーマに対応するのは多数の関連アプリケーションで、これらは必ずしも再生可能エネルギーを必要としませんが、スマートメーターなどのエネルギー利用をよりよく管理する革新的な手段です。

電動化とエネルギー管理の技術が発展する最近のトレンドは、エネルギーの現状における3つの構造的転換により予測されていました。エネルギー源における転換、消費地点における転換、そして技術自体の設計における転換です。

動力源における傾向

スマートグリッド技術により電力網を近代化する

第一の大きな転換は、エネルギー生成における転換です。従来の発電所関連で構築された、老朽化したインフラストラクチャは、近代的な電化ネットワークまたはスマートグリッドへと姿を変えつつあり、再生可能エネルギーによって補完されています。これらは利用状況を細かくモニタリングし、もっと大きな問題となる前にシステム障害を特定するさまざまなセンサーによって構成されています。これは重要な要件です。

スマートグリッドは従来のエネルギー源と再生可能エネルギー源の利点のバランスを取ります。太陽光や風などの再生可能エネルギーには周期的なダウンタイムがあるため、バッテリーエネルギーストレージシステム(BESS)がより大きな電力網に組み込まれ、余剰エネルギーを後で使うために貯蔵しておく目的で使用されています。総合消費電力も独自のリズムによる周期性があり、利用のピークと非ピークのフェーズがあるため、スマートグリッドは、最も必要な時と場所にどのエネルギー源から割り当てるかを適切に決定します。このエネルギー源は従来型エネルギー、再生可能エネルギー、貯蔵エネルギーです。AIとMLが組み込まれることが増え、スマートグリッドは利用傾向や停電、その他の障害にさらに迅速に反応します。

分散型エネルギーリソースとマイクログリッドを使用してアイランドを作成する

分散アプローチを使用したグリッド近代化の未来 分散型エネルギーリソース(DER)は小規模なエネルギー生成の手段であり、多くの場合、消費地点の近くに配置されます。DERには、ディーゼル発電機などの従来型の燃料源や、ソーラーパネルやバッテリーストレージなどの再生可能エネルギー源が含まれる場合があります。他のDERと合計すると、出力量は大きくなる場合があり、従来のエネルギー源に匹敵あるいはより多くを生産する場合があります。家庭用エネルギー管理システムはDERの1つの例で、その大部分は電力網と直接インターフェースを取ります。EV充電インフラストラクチャもDERを組み込むことができ、充電ステーション上の太陽光パネルを利用して、電力網自体から引き出す必要量を減少させます。全体としてDERは電力網のひっ迫を軽減し、長距離による分配インフラストラクチャの高いコストを避ける上で役立ちます。

分散型エネルギーリソースはマイクログリッドにまとめることができます。マイクログリッドは、電力網が停止中に自家発電アイランドを形成する電力網の一部です。例としてマイクログリッドは小さなコミュニティ、病院群または工業団地をカバーします。停電の場合、マイクログリッド内のDERが生産を引き継ぎ、マイクログリッドに接続しているところへ給電を続けます。

電力と信号両方の接続性は、安全なマイクログリッドの正常運転にとって重要です。電力網の一部のアイランド化と再統合は、労働者が機器が切り離されていることに気づかない場合などに機器の損傷と損害のリスクを招きます。マイクログリッドはさらに小さいものへ、データ・センターなどの1つの構造のみに給電するナノグリッドの形式へと進化を続けています。

消費地点のトレンド

スマートモニタリングを通じてインサイトを得る

エネルギーイノベーションを代表するものは、エネルギー源のみではありません。消費地点も大きな変化を迎えています。

スマートメーターもスマートグリッドの延長線上で、消費者と供給者の間の双方向通信を可能にします。スマートメーターは家庭、企業、政府において、その分単位の利用状況を高い解像度で提示し、エネルギー意識と呼ばれるものを導き出します。電気出力を細かくモニタリングすることにより、無駄な活動を排除し、より効率的な運営に置き換えることができます。

スマートメーター測定は、わずかな停電でもデータ喪失や混乱が生じ得るデータ・センター内でその重要性を増しています。一貫性のあるクリーンな電力潮流を維持するため、すばやく代替供給源に電源を切り替えたり、バッテリーを利用する電力供給開閉装置や無停電電源などのテクノロジー製品と組み合わせると、スマートメーターはデータサービスをオンライン状態に維持する上で重要な役割を果たします。

スマートメーターと同じように、エネルギー管理システム(EMS)はバッテリーエネルギーストレージシステム(BESS)のスマートモニタリングソリューションです。EMSは、自宅所有者、企業経営者、サービスプロバイダーの担当者などのユーザーへ、BESSへのインサイトとBESSをユーザーフレンドリーにコントロールするユーザーエクスペリエンスを提供します。

デマンドレスポンスプログラムを通して消費を削減

老朽化したインフラストラクチャに与える負荷を減らし、コストを最小化する試みにおいて、電力プロバイダーは、多くの場合、金銭的なインセンティブによりピーク時と非ピーク期間に基づき消費者がエネルギー利用を調整できるデマンドレスポンスプログラムを導入しました。スマートアプライアンスとサーモスタットなどの家庭用デバイスの出現により、プロバイダーは顧客システムを直接管理できるようになり、ひとつだけ例を挙げれば、エアコンの動作時間を短縮できるようになります。現在、AIとMLを使用して、プロバイダーと顧客は両者とも同様にもっと迅速にピーク消費時間に対応できるようになりました。

エネルギーシステム設計のトレンド

このエネルギールネッサンスの成功は、使用するシステムとデバイスの品質と信頼性に依拠します。電力を取り扱う時、障害は壊滅的なものとなる可能性があり、公共認識のために採用が限定されかねません。以下では、エネルギーテクノロジーの採用を成功させるために、変化しつつある設計トレンドをいくつか紹介します。

より安全なバッテリー管理を生み出す

バッテリーテクノロジーへの新たな注力により、設計エンジニアとインテグレーターの多くは、効率性、安全性、形態における進化を推進する機会を得ました。効果的なバッテリー管理は、エネルギーストレージ、特に温度に関する考察におけるさまざまな懸念を考慮に入れます。高いエネルギースループットアプリケーション、特に熱を扱うときは、特に難しくなります。リチウムイオンのバッテリーストレージソリューションでは、管理されていない熱やシステム障害は熱暴走を招き、火災や揮発性有害化学物質放出といった大きな安全上のリスクをもたらします。

これに対応し、エネルギーストレージシステム(ESS)関連の危険を軽減するために、UL 9540Aなどのテスト基準NFPA 855などの設置基準が策定されました。サーマルマテリアルと、高出力相互接続ソリューションにおけるその他の進歩は、電力が安全に、正常な運用に必要な品質とパフォーマンスで供給されるようにします。EMSが提供するコントロールとAIの反応性によって措置を講じ、バッテリー状態と潜在的問題についてシステムオーナーに警告します。

最先端の電力接続を組み入れる

上述のとおり、高出力の相互接続ソリューションは、より安全なバッテリー管理環境を構築する上で助けとなります。しかし、それだけでは終わりません。電動化とエネルギー管理エコシステム全体で期待される運用も確保します。

モレックスの母線と高出力用コネクターソリューションは、高い電流がアセンブリー内を通る際の安全性を、性能や信頼性を損なうことなく確保します。しかし、すべてのアプリケーションが同じように作られているわけではなく、多くのシステムは、たとえば風力タービン内や屋根の上のソーラーパネル、サーバーをできるだけ多く並べたデータ・センター、遠隔サブステーションなど、スペースが限定されていたり、厳しい環境条件にさらされています。高出力アプリケーションになるほど、コネクターのピッチ、つまり、2本のピンの中心の間の距離を空ける必要がありますが、電力コンポーネント小型化の進歩によって空間は有効利用されます。これと同時に、防水性とロック機構が水の侵入と振動から保護し、部品故障のリスクを排除します。

未来の性能を予測する

デジタルツインと呼ばれる物理システムの仮想上のレプリカは、エネルギーアプリケーションにおけるストレステストで使用され、予想外の事態に備えたり、システムの寿命を予想したりする目的で使用されます。デジタルツイン技術は、履歴データ、MLアルゴリズム、最近のAIを利用して、それまでは現実世界のシナリオ以外では得られなかったインサイトを設計者と運営者に提供します。

同様の技術は現在、コネクターなどのコンポーネントレベルで使用されています。モレックス独自のエンジニアリングチームは、データ本位の予測型エンジニアリングを活用してチーム間および当社顧客とのコラボレーションを単純化し、物理的な試作品作成を減らし、製造に入る前に性能と信頼性を確認しています。

素晴らしい未来への信頼されるガイド

電動化およびエネルギー管理アプリケーションは、ダイナミックな未知の領域に足を踏み入れることがよくあります。スマートグリッドテクノロジーとバッテリーストレージテクノロジーの急速な発展は、EV充電インフラストラクチャが拡大し、病院やデータ・センターなどの重要システムがもっと多くのフェイルセーフ機構を必要とし、自宅がエネルギーに対してもっと自立型となる場合にのみ継続します。  

相互接続ソリューションのイノベーションにおけるモレックスの80年の伝統、グローバルな製造および流通拠点、無類の分野横断的エンジニアリング知識は、エネルギーソリューションに息を吹き込む上で役立ちます。当社の迅速な試作品作成機能は、予測型エンジニアリング機能とワンストップショップであるグローバルリライアビリティラボによって支えられています。これは、熱性能、厳しい環境に耐える堅牢性、フィールド故障など、設計とテストに関する幅広いサポートを提供します。既製品のコネクターであっても、カスタムのケーブルアセンブリーであっても、当社は相互に利益のある顧客エクスペリエンスを提供するためのリソースを有しています。

 

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