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電気自動車

電力で左右されるデジタル統合

そう遠くない将来、電気自動車はそれ専用の組立工程を経た後、工場のドアから新しいオーナーのドライブウェイに自走で乗り入れるようになるかもしれません。しかし、この分野や他の分野でデジタル統合を実現するには、その前に電力システム設計の限界に打ち勝つ必要があります。

読了時間:6分

未来の工場の電気自動車(EV)は、その全組立工程の中の必要なステーションからステーションへ、自走するようになるでしょう。

自律走行型無人搬送車(AGV)は、組立工程の自分がいる場所の情報を把握し、それ自体がベルトコンベヤーの働きをします。例えば、最初のロボットのところに行ってフロントガラスを受け取り、次のロボットではバンパーを受け取るなどするでしょう。ステーションに遅れがあって、渋滞している場合は、代わりにシートベルトを受け取る場所に行く判断ができます。自動車がすでにある部品とこれから必要な部品、その部品の受け取り場所の情報をリアルタイムで知るようになります。工場内の最短ラインの情報を持ち、そのラインに並びます。

工場での全工程を終えると、ドアから出て、ゼネラルマネージャーのオフィスで一時停止してクラクションを鳴らし、高速道路に出る承認を得ます。今や自動車の脳は、ガードレールセンサーや隣接する半導体からの距離に関する瞬時の情報で一杯になります。自動車の脳は、まったく別の電子的文脈の中で新しいタスクを実行します。

最終的には目的地、お客様のドライブウェイに到着します。そして、お客様には注文した車が到着したことの知らせがあります。その後の数週間には、さらに別の変化があり、そこで自動車は家族の一員になります。

家族の日課や個人的嗜好のデータが収集され、EVの運転ルールにそのデータが反映されます。平日朝の気温が10℃より低い場合は座席を暖めることを記憶します。長旅では、例えば子供の不満の声が大きくなったときに流す子供のお気に入りの一連のエンターテインメントを提案できます。お客様の予定情報を記憶していて、お客様が歯医者にいる間にショップを訪れてタイヤの交換を受けることができます。

デジタル統合の拡大

未来の工場、あるいは道路や家族のことを考えることは、すでに起きているプロセス、すなわち、デジタル統合を予測する練習になります。デジタル統合は、現時点でのコンピュータ化されたプロセスの進化の軌跡です。インダストリー4.0の長期的目標であり、今や多くの製品開発者が目指しています。

予測がどのようなものであれ、非常にさまざまな方法でほどなく製品化されて、届けられ、利用されることになるでしょう。上記のシナリオどおりではないかもしれませんが、それに近いものになると考えられます。

モノと環境の両方で、意思決定のための情報の収集と共有が進みます。モノが存在する環境は変わることがあります。新しい環境では、新しいルールと機能が採用されます。

私たちはすでにデジタル統合の進展を目の当たりにしています。このため、エンジニアリングの課題は単に今後登場する多数の製品、センサー、ロボット用に信号帯域幅を拡大すればよいだけと思いたくなるかもしれません。

しかし、そうした見方では、産業用モノのインターネット(IIOT)の未来への道筋における、エンジニアリング上のより根本的な障害が無視されています。

今日と明日の間にある最大の制約は電力です。

供給の漸進的強化

今日のデジタル統合の課題の根底にあるのは、産業現場で電力を供給するインフラの複雑さです。時間の経過と共に電力供給能力は徐々に増大し、このため段階的な容量増大がはかられています。問題は、このような旧来型の配置の広大な産業施設をインダストリー4.0化することは飛躍であり、難しいということです。

水道と電気はよく似ています。例えば、ある家庭でその街区の水道本管からの給水容量が使い切られたとしましょう。給水量を増やすために、サービスを中断し、設備の改良が必要になる大きな口径の配水管を道路に敷設するのではなく、2本目の同じ給水管を増設します。水道の使用量がさらに増えると、その街区の超過容量も使い切られて、隣の街区から配水管を増設することになります。1年後には限界に達し、そのため3つないし4つ離れた街区の本管から配水管を延長します。

容量が漸増するたびに同じインフラが増設され、住宅の壁を占有する量は大きくなります。どんどん水源は遠くなり、給水管の水圧を増やす必要があります。また、最も重要なことに、器具の配置を変えたいとき、蛇口の水源はどこか、その水管から十分な給水あるのか混乱をきたす可能性があります。

水道局から住宅までの配管が1本ではなく、分岐配管が複数あり、それぞれに給水容量が異なります。

工場(あるいは自動車)の未来を描く

配水管の例えのように、何十年も操業している工場の給電ケーブルの敷設では、しばしば同じようなことが起きます。

給電ケーブルを増やすたびに空間、特に接続ポイントの空間が混雑することになります。給電ケーブルはますます長くなり、同じフローを維持するには、その分電圧を大きくする必要があります。機器や工具、ロボット、センサーなどへのアプリケーションが増えるにつれ、その出口にはいくつもの分岐配管が生まれる可能性があります。こうした課題があることはモレックスの調査でも明らかです。97%の回答者が、電力システムの設計で課題に直面していると回答しています。

電子的機能の先進性にもかかわらず(あるいはその先進性のために)、今日の自動車の電気インフラはケーブルの密集という同じ種類の問題を抱えています。驚くことに、新車の電装系にも専用の給電ケーブルがあります。こうした課題に対処するため、一部のEV自動車メーカーは、バッテリーからの電力をインバーターやモーター、そしてコンバーターへと送る方式として重いケーブルからバスバー方式に転換しようとしています。そうすることで、絶縁化と軽量化が容易になります。EV車両では、ケーブルは重量全体の大きな要因であり、重量が大きくなると、レンジの減少になります。

従来のアーキテクチャは自動車工場の縮図かもしれません。自動車工場もまた、デジタル統合の次の段階で電力を必要とするディスクリートデバイス(自動運転RADARおよびLIDARセンサーコックピット制御など)数の急激な増大に直面しています。

実際、インダストリー4.0プロセスを機能させるために電力を監視し、電力制御を機敏に行えるようにして、電力のパイプラインのサイズを増やす必要性は、設備全体や道路、車両、車載システムなどの多くのレベルで生じてきています。

電力監視の必要性の増大

ネットワークに対するモノの増減があるダイナミックな環境での電力供給を漸増することには、深刻で後戻りができない結果をもたらすという限界があります。例えば、電源を利用するデバイスや機器の容量がオーバーすると、熱エネルギーが発生します。過熱はダウンタイムの原因となるだけでなく、機器の完全な損傷や負傷の原因となることがあります。前述のモレックスの調査によれば、作業員の安全性は最優先事項であり、66%が電力システムの実装で機能の安全性を考慮すると回答しています。

当然、大きな工場には、こうした消費電力のハードリミットを監視し、そのリミットを超えるのを防止する仕事があります。他方で、工場環境でのIIoT機器やセンサー、スマートデバイスの多用に向けた圧力は増大しています。

複雑に枝分かれした電気ネットワークでは、変化を監視、予測して、対応することは難しいことです。

IIoTがもたらす柔軟性という未来が実を結ぶには、電力を消費しているプロセスを常に把握している必要があります。ネットワークの別の部分へと電力をシフトさせる機能も必要です。

動的電力割り当てへのシフト

モレックスは、必要なときに必要な場所に電力を供給するエンジニアリングの最前線にいます。将来的には、電力監視と電力制御は、工場が製造する車と同じくらいスマートである必要があることを認識しています。モレックスは、大手自動車メーカーや装置メーカーと協力し、よりインテリジェントなアーキテクチャの開発に取り組んでいます。デバイスが大きな容量の配電ハブから電力の供給を受けるようにすることで、電力およびデータの需要増大に対応します。当社の通信および制御ソリューションは、システムの機能的完全性と安全性を保証するモニタリングとロジック機能の心臓部を担います。

当社の画期的なBrad M-12 Power L-Code Connectorのような製品により、機械メーカーやインテグレーターは、前身である7/8インチMini-Changeの約3倍の電力を供給するプラグアンドプレイ配線ソリューションで、制御電源とモーター電源の容量増加の要件を満たすことができます。M12給電ソリューションはまた、DC24Vデバイスの給電インフラ用の選択肢として急速に台頭しており、ほんの数年前に一般に使用されていたソリューションと比較して、最大60%も大きな電力を供給することができます。

モレックスは、IIoTインフラを対応したもう1つの重要なソリューションも発表します。SPE(Single Pair Ethernet)という次世代PoDL(Power over Data Line)ケーブルであり、特に現場レベルでのデータおよび電力需要の増大に対応した仕様になっています。

システム設計のあらゆるレベルで、電力要件をリアルタイムに把握することで、ネットワークの突発的な拡張にも電力容量が対応できる必要があります。モレックスは、業種や産業分野を問わず、電力の難題に対してこれまでにない専門知識と能力を提供します。