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高出力、プラグ着脱可能な光ファイバーモジュールの高度な熱管理戦略

熱管理は、高出力、プラグ着脱可能な光ファイバーモジュールの信頼性と効率を高める上で非常に重要な役割を果たします。空気冷却および液体冷却における最新の戦略を探り、光ファイバーモジュール冷却の未来をご覧ください。

執筆: ハサン・アリ
新製品開発マネージャー

読了時間: 6分

チップ間通信とチップ-メモリ間通信の帯域幅は、最新のコンピューティングシステムのボトルネックになりつつあります。その結果、システムコンポーネント間のスループット向上に決定的な重点が置かれるようになっています。相互接続システムの効率改善や、より洗練された通信プロトコルの開発に向けた多数の取り組みにもかかわらず、スループット改善の需要によって特有の熱管理コストが発生し、こうしたモジュールの消費電力が増加しています。人工知能(AI)における最近の進展はこうした急速な変化を推し進めています。例えば、112 Gbps-PAM4から224 Gbps-PAM4への移行、次世代1.6Tモジュールの採用などがあります。

データ・センターにおける熱管理の状況

データ・センターの電子システム内の熱管理は、指定された負荷や条件の下でコンポーネントの温度を安全に動作する範囲内に維持することを目的としています。これらの温度制限は、温度と寿命の関係性や、現場において目標となる寿命によって決まります。電圧や、湿度と気温の変動といった環境要因などの動作上の要因も、データ・センター環境内の部品の寿命に影響を与えることになります。

効果的な熱管理戦略では、電力損失、電力密度およびその空間分布、さらにはターゲットシステムの負荷や、動作条件の時間特性と過渡特性を含む、いくつかの要因を検討する必要があります。

動作温度を低く維持することでコンポーネントの信頼性が向上し、現場における寿命を延長することができます。動作温度の低下によって、システムの総電力消費量を抑えることもできるでしょう。システムの最適な動作ポイントを見極め、電力効率を維持するには、冷却ソリューションにおける電力要件の増大と電子機器の総電力消費量の低下の間でバランスを取る必要があります。

最新の空気冷却

電子システムでは長年にわたり、空気が冷却材として選択されてきました。空冷設備は低電圧で動作し、ほぼ不活性で適用しやすく、実装コストも液体冷却と比較して安価であることから、誘電性において望ましい技術です。冷気を電子システムに送り、ラックから熱気を収集できるよう支援するインフラストラクチャはここ数十年の間、効果的に最適化されています。

空冷システムにおいて、光ファイバーモジュール上を直接流れるエアフロー、およびモジュールのヒートシンクの戦略的な熱最適化によって、フラットトップモジュール上部のライディングヒートシンク(QSFP-DD)であるか、統合型のヒートシンク(OSFP)であるかに関係なく、効率の高い熱放散を実現できます。ライディングヒートシンクが使用されるケースでは、ヒートシンクとモジュールケースの間に優れた熱接触を確保し、その熱に向けて低抵抗の経路を構築することが重要です。これは、最初にライディングヒートシンクを最適化することで実現できます。これまで、業界はヒートシンクをアルミニウム押し出し成形からさらに高密度のジッパーフィン/スタック型ヒートシンクへ変革することに焦点を当てていました。しかし、さらに高出力の将来的なモジュールにおいて、プラグ着脱可能なモジュールとライディングヒートシンク間の接触抵抗が新たなボトルネックになっています。この場合、接触インターフェースにサーマルインターフェース材(TIM)を使用するなどして、この接触抵抗の改善に特別な注意を払う必要があります。

こうしたヒートシンクを設計する際、システムのエアフローや圧力のダイナミクスに関連する機械システム要件や熱性能など、いくつかの点を考慮する必要があります。最新のヒートシンクはこうした顧客固有の境界条件やシステム環境に合わせて最適化する必要があります。あらゆるアプリケーションに対応できる標準的なヒートシンクのオプションは過去のものとなっています。

ヒートシンクの最適化に加え、ヒートシンクとモジュールからのダウンストリームの空気経路によるインピーダンスを最小限に抑えることも重要です。これには、ケージやコネクターにおける熱特性の最適化が求められ、通気口をケージに追加する一方で、電磁干渉(EMI)シールド要件にも留意する必要があります。コネクターは、エアフローの閉塞を最小限に抑えることでエアフローのインピーダンスを低減できるよう機械的に設計されています。

スタック型ケージ構成の場合、ラックに設置されるモジュールに最適なヒートシンク設計を行うために、共同設計のアプローチが必要になります。共同設計では、ブレード上の全コンポーネントを考慮しながら、冷却材のフローをシミュレートします。すべてのモジュールが十分なエアフローを確保し、モジュール間の温度勾配を最小限に抑えるには、完全なシステムレベルの分析が必要です。

液体冷却の台頭

空気冷却は効率的ですが、そもそも能力に限界があります。空冷システムの限界について、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)のEmergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers(メインストリームのデータ・センターにおける液体冷却の出現と拡張)(2021年)では、チップあたり約400Wであると提言されている一方、オープンコンピュートプロジェクト(Open Compute Project: OCP)が公表したオープンアクセラレーターモジュール(OAM)設計仕様Rev 2.0(2023年)では約600Wであると明記されています。しかし、ハイエンドプロセッサの最近のトレンドはこれらの限界を上回っています。プロセッサにおけるこうした高出力の値によって、メインプロセッサにより効率的でコンパクトなソリューションを提供する液体冷却が要求されているのです。

このトレンドには、システムの他の部分の冷却にまつわる興味深いジレンマが伴います。例えば、プラグ着脱可能な光ファイバーモジュールの出力は一般的にメインプロセッサよりも相対的に低くなります。こうしたコンポーネントにはやはり、ある種のアクティブな冷却が必要になります。1.6Tの光ファイバーで電力レベルが35Wに達すると予測される場合、液体冷却の領域は次世代のプラグ着脱可能な光ファイバーに向けて関心が高まり、ますます議論されるようになります。空冷システムにおいて、これらの周辺機器はシステム冷却向けに供給されるエアフローから恩恵を受けることになり、メインのシステムファンは十分なエアフローを提供できることが重要です。一部の液体冷却システムはハイブリッドアプローチに基づいて設計されています。この場合、液体冷却方式は高出力コンポーネント(ASIC/GPU)に使用され、空気冷却はそのシステムの他の部分に使用されています。こうしたシステムでは、ラックまたはブレードレベルのいずれかにファンを設置して十分なエアフローを確保する必要があります。

プラグ着脱可能な光ファイバーモジュールを冷却するもう1つのアプローチとして、冷却板を導入して複数の光ファイバーモジュールの温度を効率的に管理する方法があります。これらのシステムは、冷却板上で個別にフローティング台座を使用して(異なる公差スタックアップを有する可能性のあるポートにプラグインされる)モジュールのそれぞれとの十分な熱接触を確保します。この手法を採用するシステムを運用すると、設計および製造にまつわる以下の重大な問題が発生します。

  • モジュール全体で均等に冷却し、冷却板における均一なフロー分布を実現
  • 異なるシステムコンポーネント間の圧力損失のバランス確保  
  • 製造における複雑性と組立コストの増大に対処
  • 製造段階でさらに手の込んだ試験を実施して最適な性能と信頼性を確保

こうした課題が存在しますが、克服できないわけではありません。つまり、モレックスは実際のアプリケーションにおけるこれらの課題を解決してきました。

光ファイバーモジュール冷却の未来

次世代の光ファイバーモジュールの場合、熱フロー経路をエンドツーエンドで最適化し、空気冷却であるか液体冷却であるかに関係なく、冷却液に対するコンポーネントの接触による抵抗を最小限に抑えることが主な優先事項です。これには、以下の項目が含まれます。

  • 個別のコンポーネントにおける電子機器のパッケージングを最適化 
  • PCBとモジュール内部のコンポーネントについて熱特性を意識した配置を実施 
  • コンポーネントからモジュール表面まで低抵抗の熱経路を構築(例: 熱伝導性の高いパッドを使用、TIMを使用して接触抵抗を改善、高熱伝導性のより高いモジュールハウジングを採用)
  • モジュールカバーの熱拡散を改善し、非効率的な冷却につながりかねない局地的なホットスポットを回避(例: モジュールに銅スラグとヒートパイプを使用)

これらのモジュールの熱特性がどのように変化するかも重要になります モジュールの特性を評価する従来の方法(一般的なケースの温度制限を使用)では、マージンが検討課題として残されています。つまり、より高出力のモジュールではマージンが小さくなります。

次世代冷却システムの今後の道筋

データ・センターの高出力光トランシーバーの冷却を改善するニーズはかつてないほど重要になっています。ネットワークが帯域幅に対する飛躍的な需要の高まりに追いつこうと苦闘する中、設計者はこうした必須コンポーネントの過熱を許容するわけにはいきません。私たちは、パフォーマンス重視の熱管理の革新に向けた要件を推進し、システム冷却能力をスケールアップするための最大の山場に差し掛かっています。データ・センターはますます増大する熱管理の課題に取り組んでおり、モレックスは革新の最前線に立っています。モレックスは、OCPおよびその冷却環境プロジェクトに積極的に参加し、データ・センターの高まる熱管理ニーズに対応する次世代の冷却テクノロジーを積極的に開発しています。回復力が高く、将来にも対応できるデータ・センターアーキテクチャにふさわしい、堅牢でダイナミックなソリューションを提供するモレックスにお任せください。

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