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サプライチェーンのインテリジェンスをテストする

著者:シニアバイスプレジデント兼チーフサプライチェーンオフィサー
ドン・フナティシン

コロナによるパンデミックによって発生した混乱の副産物として、サプライチェーンのイノベーションが急速に進んでいます。混乱の深さ、広さ、範囲は私たちがこれまでのキャリアで経験したことのないものですが、サプライチェーンの専門家のほとんどはリスク軽減に熟達しています。2021年も、それは変わりません。

リスクの評価、計画、対処は当社のDNAに組み込まれていることです。当社は、自然災害や供給制限、ならびに地政学的・経済的事情によって繰り返し引き起こされる、サプライチェーンの妨害に対処するこのようなスキルを磨いてきました。今後も、最新のツールと技術が必要となる予期せぬ事態に備えるため、重要な知識プロセスを開発していきます。

しかし、パンデミックは状況を根本から変え、集団としてのサプライチェーンのIQが試されています。当社は現在、可視性が限られインサイトが不十分であったために、コロナによる長期化した激動の混乱による影響が強化した結果、何が起こったのかを見ています。ゴールドマンサックスが実施した最近の分析によると、過去18ヶ月以上にわたって悪化した現在の半導体不足は、自動車からコンシューマーテクノロジー、造船、ビール醸造、さらには石鹸製造に至るまで、169種の業界に影響しているとのことです。

明るい面に目を向けると、顧客の利便性、調達の容易さ、配送速度を次のレベルに引き上げる、Eコマースとデジタルの取引の変革力を目の当たりにしました。肯定的なBusiness-to-Consumer(B2C)体験の影響で、Business-to-Business(B2B)の世界全体での顧客の期待事項が根本から覆されました。私たち全員がサプライチェーン戦略を見直し、今後のあらゆる事態に備えて計画を立て周到に準備するために、得意客重視などの新しい考え方を培う時期に来ています。

リスクと反応:規則を覆す

リスク評価と対応の原則は変わっていませんが、規則は厳しくなっています。パンデミックの際には、リスクの評価・対処・緩和を行う速度と敏捷性によって企業が判断されました。多くの組織が依然として足場を取り戻そうと苦心している中で、顧客第一主義の組織は最速でビジネスモデルおよび/または実現モデルを調整し、特殊な時期の予測できない需要に応えるようにしました。

一貫してB2C顧客体験を実現できるかどうかが、パンデミック後のサプライチェーンのビジネスの勝敗を決めます。それには、物理的な製品の動きを超えたリアルタイムのインサイトを生み出しながら、ビジネスのスピードでデータをキャプチャする賢いツール能力から得る新しいレベルのインテリジェンスが必要です。

包括的なサプライチェーンの展望は、調達戦略を有意義かつタイムリーに更新することから始まります。そして工場の現場に拡大し、正しい能力を持った人材が製造・品質プロセスを導くよう徹底します。ロジスティックの末端を軽視しないことも同じく重要です。昨年はこの部分でかなりの意外な事態が発生しました。今後、サプライチェーンの成功は単なる製品の動きだけで評価されるのではなく、より速く、より良いビジネス決定を促すリアルタイムの情報の双方向の動きで評価されるようになります。

サプライチェーン4.0:デジタルテクノロジーによって確立する

サプライチェーン4.0は、インダストリー4.0に合わせてインテリジェンスが強化され、センサー・オートメーション・データ分析の使用が増加することが期待されています。数年前、マッキンゼー&カンパニーは、サプライチェーン4.0を次世代のデジタルサプライチェーンと評しました。ビジネスの新しいやり方を大きく変えるサプライチェーン4.0のデジタル優先のアプローチは、顧客体験を向上させ、可視性を高め、コストを削減し、プロセスの効率を推進するように設計されています。

2021年、そのような属性はそのままに、また大きく基準が上がりました。スマートデバイス、センサー、機械からのリアルタイムの情報は、予測分析と規範分析の推進に向けて機械学習と人工知能(AI)によって掘り下げ、分析し、整合させる必要がある新しく遥かに堅牢なデータセットを増殖させます。その結果、意思決定を行う前であっても、ビジネスの意味合いと影響をかなりの範囲できめ細やかに分析することができます。

サプライチェーン4.0はデータエコシステムを極めて重視しているため、正しい情報が、正しいタイミングで、正しい速度で流れることが必要不可欠です。これは言うのは簡単ですが実行は難しく、どのデータ属性が最も有意義なビジネスインサイトを生み出すのかを判断することに、かなりの努力が必要となります。数年前に特定された最も重要なデータ属性は、エコシステムの基礎の一部になりました。新しく発生している他の属性に注意しましょう。エコシステムを豊かにし、より賢い決断や競争力に繋がります。

ほとんどの組織では、サプライチェーン4.0が可能にしたさらに高いレベルでのインテリジェンスを完全に実現することを阻む最大の障害は、「データエコシステム」の一言に尽きます。幸運なことに、この道のりの指針となる、これまでに得た価値ある学びが多々あります。

今日の学びを明日のサプライチェーンに活かす

私は長年にわたって長い時間を費やして、様々な業界のサプライチェーン各社とアイディアや経験値を交換してきました。そのような会話の多くから、私は、特に顧客体験を重視することについて、自分の見解を得ることができました。毎年、ガートナーのサプライチェーントップ25をEコマース企業とリテール企業が占めるのは当然と言えるでしょう。例えば2021年、ガートナーは、パンデミックやその他のマクロ経済的要因による困難に対処するよう、前代未聞のレベルの機敏さと柔軟性を発揮した企業上位10位内に、コルゲート-パルモリブ、ジョンソン&ジョンソン、ネスレ、ペプシコ、ウォルマート、ロレアルを挙げました。

これらの企業の運営方法からは、多くの実践的な知識や生き残るための知恵が得られます。彼らは顧客の価値を明確に理解し、サプライチェーンのレジリエンス、機敏さ、イノベーションを推進するテクノロジーに投資することを優先し続けています。ビジネスの本質上、サプライチェーンの大手各社は顧客をすべての業務の中心に据えています。これは、誰にとっても貴重な学びとなります。

昨年の経験から学ぶべき重要なもうひとつのポイントは、サプライチェーンのロジスティックが誰も予測しなかったほど機敏だということです。もちろん、長期にわたって航空会社の国際線がほぼ完全に閉鎖されたり、スエズ運河でコンテナ船が立ち往生して大渋滞を引き起こすことなど、予測することはできませんでした。私たちが今までに学んだことを踏まえると、物流ネットワークに関するより賢明な決定が、あらゆるサプライチェーンの議論の一部である必要があることは明らかです。

より賢いサプライチェーンを目指す設計

IHS Markitの2021年サプラチェーンインサイト世界調査によると、世界のサプライチェーン大手各社のほぼ3分の2が、全体的なサプライチェーンの目標を可能にし実現するには、より良いテクノロジー、プラットフォーム、データが必要であると回答しています。モレックスでは、サプライチェーンのレジリエンスや機敏さを確保するために、サプライチェーンインテリジェンスが重要な役割を果たすことを理解しています。当社が知識・プラットフォーム・プロセスを強化するために戦略的投資を続けているのはそのためです。

当社は、顧客第一の考え方と方法論に基づいた世界クラスのサプライチェーンに向けた設計原則にコミットしています。当社のデータ収集能力と相関能力を拡大して、当社の担当者が、情報の流れを総合しデータエコシステムを豊かにするための革新的な新しい方法を模索しながら、最も有益なデータ属性を特定できるようサポートしています。グローバルサプライチェーンの一環としてモレックスが購入し管理するものすべてが、いかに有効に顧客の要望に応えるかに影響するため、これは重要な取り組みなのです。

顧客を第一と考えている当社は、今後も最新のイノベーションと、長年培ってきたサプライチェーンのプロとしての経験を活かして、リアルタイムの可視性とリスク軽減を追求していきます。今年末までには、当社は日々賢くなっていくインテリジェントデジタルサプライチェーン全体で、重要な進歩を共有する予定です。