産業とアプリケーション
小型化と聞いて多くの消費者の頭にまず浮かぶのは、スマートフォンやスマートウォッチといった製品でしょう。この小型化は、エレクトロニクスの世界ではまったく新しいものではありませんが、小型化が加速していることは間違いありません。この、半導体のスケーリング則をはるかに超えたスケールでの小型化、薄型化、合理化のトレンドは、多くの要素が絡み合ってさらに加速しています。システムの高性能化と小型化は、ムーアの法則と高集積化によって実現しましたが、小型のコンポーネントに向けた要求を推し進めているのは結局のところ、一部の先端アプリケーションです。
先端エレクトロニクスにおいて小型化が進むコンポーネントは、集積回路だけではありません。ワイヤレスデバイス、コンスーマ向けスマートデバイス、データ・センターインフラストラクチャ、そしてエッジコンピューティングといったアプリケーション分野では、さらなる高密度のI/Oと機能が求められ、このことは、アセンブリーにおけるすべてのコンポーネントの小型化を推し進めています。特に、現在の先端製品に見られるような複雑なマルチボードアセンブリーに用いられるコネクターなどの機械要素は小型化の主なターゲットになっています。
小型化を後押しする要素
多くのアプリケーションで一般的に用いられているような電子部品の小型化の主な牽引役は、デザインです。半導体のスケーリング則は、小型化が進む理由の一部にすぎません。コンポーネントの小型化の傾向は、コネクターその他機械要素を含むアセンブリーのすべての領域に及んでいます。小型化の進行には、次のような理由が考えられます。
より小さな基板/狭いエンクロージャスペースに多数のコンポーネントをパッケージングするという視点での、フィーチャの高密度化
1個のチップ、1個の基板、あるいは1個のエンクロージャで多様な機能に対応するための、多機能化
上記のような機能への要求増加に対応するための、I/Oの高密度化
ユーザーエクスペリエンスの進化に伴ってデバイスのフォームファクタへの要求レベルが高まり、小型化への要求に拍車がかかっている
その他、先端アプリケーションを支える多数のシステムが、複雑なマルチボードアセンブリーとして構築されているという事実も、小型化を押している複雑な背景の一つになっています。電子デバイスによっては最大サイズのコンポーネントがコネクターとケーブルになっているデバイスもあるため、狙いどおりのフォームファクタを達成するためには、これらコンポーネントの小型化が極めて重要になります。また、小型化の勢いが強い代表的なアプリケーション領域には、RF/ワイヤレスデバイス、コンシューマーエレクトロニクス、データセンター/エッジコンピューティング等があります。
無線/ワイヤレスシステム
過去の無線システムは、現在よりも広い基板スペースと、無線通信用にサイズの大きな外付け部品を必要としていました。システム全体のサイズが大きくなってしまうのには、大きく2つの理由がありました。高効率の小型部品自体の数が少なかったこと、そして多くの無線デバイスは今より低い周波数帯域を使用していたことです。低周波数帯域の信号を使う無線装置のコンポーネントや回路には、この周波数帯に応じた大型のコンポーネントが必要です。
これに対し、コンポーネントの小型化の需要を創出しているのが高周波数帯域のアプリケーションであり、5G、ミリ波レーダー、ミリ波センサーの3つの領域がその代表です。最近のワイヤレスアプリケーションはGHzの高周波数帯域が一般的ですので、無線回路とコンポーネントのサイズも小さくなっています。例としては、RF基板を使用した特殊用途の無線システムや、大型・高密度化したアンテナアレイを用いたワイヤレスシステム等があります。
5Gデバイスと車載用のミリ波レーダーセンサーという2つの重要分野においても、アンテナアレイの小型化が課題となっています。5Gや車載レーダー用デバイスのフォームファクタは、それぞれエンクロージャのサイズと車両上の搭載位置の制約を大きく受けるため、超極低背の基板アセンブリーが要求されるのです。こういったシステムのフォームファクタと極薄の要求仕様に合わせるには、ロープロファイルコネクターが必要不可欠で、かつ同時に基板対基板接続のシグナルインテグリティの確保も必要です。
コンシューマーエレクトロニクス
世界中で最もポピュラーなモバイルデバイスといえばスマートフォンですが、その他、パーソナルヘルス製品や新たに広がりを見せるホームエレクトロニクスなども、小型化を後押ししています。たいていのコンシューマーエレクトロニクス製品は、コンパクトでスタイリッシュな外観を備えたものですから、ここでも最も多きなコンポーネントから順に小型化が必要になります。
まずは、手元端末に使用するコネクターや相互接続部品などの小型化が優先されると考られます。デバイス自身の薄型化が進み、他の搭載部品との分け合いによって基板スペースが縮小されるのに伴って、アンテナモジュールや表示部、メイン基板の接続部には、限界まで小さくした高さ(Z軸)寸法に対応可能な、基板対基板またはフレキシブル基板対基板で嵌合するコネクターの必要度が高くなってくるでしょう。
この種のフラットコネクターであれば、高密度I/O、柔軟性、超ロープロファイルの単独あるいは複合要素の相互接続にも対応することが可能です。最近増えてきた折りたたみ可能なエンクロージャに合わせ、相互接続製品の設計も、フレキシブルなロープロファイルコネクターとケーブルのアセンブリーという設計が増えていくでしょう。たいていの場合は、コネクター1個で電力と信号を伝送する必要があるため、高速デジタル信号伝送時のシグナルインテグリティの確保と併せて、高い定格電流値が要求されることも考えられます。
データセンターとエッジコンピューティング
共に高性能/多機能化が進む、データセンターインフラとエッジコンピューティングシステムには、共通した特性をもつハードウェアが使用されています。データセンター環境では、インフラストラクチャへの高性能ネットワーク機器やAIアクセレレータ、FPGA/GPU拡張オプションの統合が進んでいるため、より高い処理能力が要求される傾向は変わりません。これに伴って、データセンターに配備されるラックマウントサーバー内で各コンポーネントが使えるスペースは縮小しています。
同様のスペース面での制約は、フォームファクタを縮小しながらもエンドユーザーの近くでデータセンターと同じ能力を提供しなければならない、エッジコンピューティングの環境にも見られます。今後も小型化が求められる両環境に共通する項目は、次のとおりです。
実装およびエンクロージャソリューション
ファン&ヒートシンクの薄型化
拡張/アクセラレータカードのフォームファクタ
メザニン&基板対基板コネクター
シグナル&パワー用の電線対基板コネクター
光トランシーバ&相互接続ソリューション
エッジAIなどの用途特化型のコンピューティングの世界では、コネクターシステムは、マザーボード上のコンポーネント間ならびに、周辺デバイスそして外部機器と間の、高速データ転送速度能力を提供しなければなりません。こういったシステムにおいては、相手フォームファクタやアプリケーション領域によっては、コネクター&ケーブルアセンブリーの1個部品内に電力を伝送する機能も内蔵しなければならない場合もあります。
最後に、これらのシステムにおいては、信頼性も一つの重要な要素です。つまり、長寿命と優れた耐候性を備えていることです。データセンターやエッジコンピューティングシステムで用いられるコネクターシステムは、十分なIP防水等級を備え機械的衝撃に耐えるものであり、かつ、高密度なピン配列と薄さを実現したもの (スモールフォームファクタ) でなければなりません。
モレックスが可能にする先端アプリケーション
先のような先端分野でビジネスを展開する企業においては、フォームファクタ [パーツサイズ] の課題が今後も継続し、ロープロファイル、シグナルインテグリティ、そして必要なI/O数を備えた様々なタイプの相互接続ソリューションが必要になると考えられます。モレックは以上述べてきたような先端アプリケーションの、最前線のニーズを満たす、様々なコネクターソリューションの提供が可能で、また、相互接続製品のカスタマイズにも対応するエンジニアリングの技術や専門知識も備えています。弊社は小型化やシグナルインテグリティ、フォームファクタといった要件を満足する、通信や自動車業界向けから消費者向けIoTまで、それぞれの業界に対応できる、歩留まりとコスト効率に優れた製品を取り揃えています。
多くのアプリケーション領域で一般的に用いられている電子コンポーネントの小型化の主な牽引役はデザインです。半導体のスケーリング則は小型化が進む理由のひとつにすぎません。コンポーネントの小型化の傾向は、機械的要素やコネクターを含む、アセンブリーのその他のすべての領域に広がっています。小型化を推進する主な要素を以下にいくつか挙げます。
- より小さな基板/狭いエンクロージャースペースに多数のコンポーネントをパッケージングするという視点での機能の高密度化
- 1個のチップ、1個の基板、あるいは1個のエンクロージャーで多様な機能に対応するための多機能化
- 上記の機能要件の高まりに対応するためのI/Oの高密度化
- 顧客体験の進化に伴ってデバイスのフォームファクターに対する要求が高まり、小型化への要求が加速
さらに、先端アプリケーションを実現させる多数のシステムが複雑なマルチボードアセンブリーとして構築されているという事実も、小型化を推し進める複雑な背景のひとつです。電子デバイスによっては最大サイズのコンポーネントがコネクターとケーブルになっているデバイスもあるため、フォームファクターの目標を達成するにはこうしたコンポーネントの小型化が極めて重要です。また、小型化の勢いが強い代表的なアプリケーション領域として、RF/ワイヤレスデバイス、コンシューマーエレクトロニクス、データ・センター/エッジコンピューティングなどが挙げられます。
RF/ワイヤレスシステム
これまで、RFシステムは、さらに広い基板スペースと、無線通信用にサイズの大きい外付けコンポーネントが必要でした。これには大きく2つの理由がありました。高効率の小型コンポーネントが不足していたこと、そして多くのRFデバイスがもっと低い周波数帯域を使用していたことです。低周波数帯域で動作する一部のRFコンポーネントおよび回路には、こうしたシステムにおける信号の動作波長の理由から、実際には大型のコンポーネントが必要です。
高周波数帯域がコンポーネントの小型化の需要を生み出している主なアプリケーション領域は、5G、ミリ波レーダー、ミリ波センサーの3つです。最近のワイヤレスアプリケーションはGHzレンジにも到達する高周波数帯域で動作していることから、RF回路とコンポーネントのサイズも小さくなっています。これには、RF基板を使用した特殊用途のRFシステムや、大型で高密度化したアンテナアレイを用いたワイヤレスシステムが含まれます。
2つの重要な領域においても、アンテナアレイの小型化が課題となっています。つまり、5Gデバイスと車載用レーダーセンサーです。こうしたデバイスのフォームファクターは、エンクロージャーと車両上の搭載位置の制約を大きく受けることから、フォームファクターには超極プロファイルの基板アセンブリーが要求されます。こうしたシステムのフォームファクターとプロファイルの目標を達成するには、ロープロファイルコネクターが必要不可欠であり、さらには基板対基板接続のシグナルインテグリティの確保も必要です。
コンシューマーエレクトロニクス
世界中で最もポピュラーなモバイルデバイスといえばスマートフォンですが、その他にも、パーソナルヘルス製品や新たなホームエレクトロニクスなどのデバイスもコンポーネントの小型化を後押ししています。多くのコンシューマーエレクトロニクス製品はスタイリッシュなフォームファクターで知られており、これらの製品でも、最も大きなコンポーネントの小型化が必要です。
携帯端末のコネクターや相互接続部品がその優れた例です。デバイスプロファイルの薄型化が進み、他のコンポーネントを収めるために基板スペースが縮小されるにつれて、アンテナモジュール、ディスプレイ、メインPCBの接続部には、Z軸に沿った超低プロファイルの基板対基板またはフレキシブル基板対基板で嵌合するコネクターが必要になっています。
この種のフラットコネクターは、高密度I/O、柔軟性、超低プロファイルの、あるいはそれらを組み合わせた相互接続を実現します。折りたたみ可能なエンクロージャーを実装するデバイスが増えるほど、一般的に低プロファイルのコネクターとケーブルアセンブリーを備えた柔軟性の高い相互接続設計が増えていくことになります。多くの場合、これらのコネクターは同一の相互接続で電力と信号を伝送する必要があることから、高速デジタル信号のシグナルインテグリティを確保しつつ、高い定格電流値も要求される可能性があります。
データ・センターとエッジコンピューティング
データ・センターインフラストラクチャとエッジコンピューティングシステムは、どちらの領域も多機能化が進んでいることから、そのハードウェアは共通の特性を共有しています。データ・センター環境では、インフラストラクチャへの高性能ネットワーキング機器やAIアクセラレーター、FPGA/GPU拡張オプションの統合が進んでいるため、より高いコンピューティング能力が引き続き要求されています。それに伴い、データ・センターにおいて展開されるラックマウント型サーバー内で使用可能なスペースが縮小しています。
同様のサイズ面での制約は、フォームファクターを縮小しながらエンドユーザーの近くでデータ・センターと同じ能力を提供しようとしているエッジコンピューティングでも見受けられます。両方の領域において、今後も小型化が要求されるコンピューティングシステムは以下のとおりです。
- 実装およびエンクロージャーソリューション
- ファンおよびヒートシンクのプロファイル
- 拡張/アクセラレーターカードのフォームファクター
- メザニンおよび基板対基板用コネクター
- シグナル用およびパワー用の電線対基板用コネクター
- 光トランシーバーおよび相互接続ソリューション
エッジAIなどの特殊なコンピューティングの世界において、コネクターシステムは、マザーボード上のコンポーネント間および、周辺デバイスや外部機器との間の高速データ転送速度能力を提供する必要があります。こうしたシステムの場合、目標のフォームファクターやアプリケーション領域によっては、コネクターとケーブルアセンブリーは共通の相互接続部に電力を供給する必要があるかもしれません。
最後に、これらのシステムにおいては信頼性も1つの重要な要素です。こうしたシステムは合理的な長さの寿命が必要であり、過酷環境にさらされる可能性もあります。こうした製品に使用されるコネクターシステムは、適切なIP等級と機械的耐衝撃性を備えていなければならず、また、要求される高密度なピン配列とZ軸プロファイルを提供する小型フォームファクターでなければなりません。
モレックスが高度なアプリケーションを実現
こうした高度な領域に取り組む企業は、今後もフォームファクターの課題に直面することになり、低プロファイル、シグナルインテグリティ、要求されるI/O数を提供するさまざまな相互接続ソリューションが必要になります。モレックスはこれらの高度なアプリケーション領域の先頭に立ち、多彩なコネクターソリューション、エンジニアリングの能力や専門知識を提供してカスタム相互接続システムを構築しています。モレックスは、アプリケーションの合理化や小型化、シグナルインテグリティ、フォームファクターの要件に向けた需要を満たす、コスト効率の良い高収率製品を、通信から自動車、コンスーマ向けIoT製品に至るまでさまざまな業界に提供しています。