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中国が最初に未来のクルマを生産することになる理由

中国圏およびインド担当 営業部ディレクター
クラーク・チョウ

自動車業界の未来を見据えることは、多くの人々にとって夢物語のようなものかもしれません。しかし、モレックスが最近行った「自動車の未来」と題した調査の結果によると、実利的な業界のインフルエンサーにとってすら、多くの人が認識しているよりもずっと真実味があり具体的であり得ることが明確になっています。例えば、動きの速い自動車業界では、予言者も消費者も長い間、空飛ぶクルマや運転手のいないクルマの世界を予測してきました。前者は現実的にまだ先の話かもしれませんが、「未来のクルマ」を実現するための技術的な足がかりは、すでにいくつか存在しています。そして、彼らは、それを実現するのは中国であると指摘します。

自動車業界の頭字語 C.A.S.E.という自動車業界の頭字語(コネクテッドビークル、自動運転、シェアリング/サブスクリプション、電気自動車の意味)が使われるようになって数年経ちますが、中国ではしっかりと定着しており、この分野で中国が最前線に立つ理由を物語っています。完全自動運転または半自動運転のプラットフォームのいずれに組み込まれている場合でも、電源、コネクティビティ、コミュニケーション、安全性、体験、シェアが、未来の車の姿と性能を示す主な要素となっています。

自動車業界全体を見ると、中国は、従来の燃焼エンジンに替わるより環境にやさしい選択肢を数々開発する、ユニークな立場にあります。特に、中国では数十年間にわたって、エレクトロニクスの分野を含めて産業が進化しており、そのこともこの状況に貢献しています。中国の電子バッテリーのサプライチェーンはしっかりと確立しており、CATLやBYDなどの大手企業がこの分野で確固たる地位を築いています。そのため、現在、中国では日本や韓国などの国々よりも車両用バッテリーテクノロジーのコストが低く、関連する原材料の入手がある程度促進されています。これらの大手企業は、競合他社の製品と同じサイズでありながら、より多くの電力を蓄える高密度バッテリーを生産することもでき、走行距離が伸びるという明確かつ重要な利点ももたらしています。

さらに、中国政府はいくつかの主要分野でテクノロジーの独立を推進しており、ティア1およびOEMの各社が高度な自動運転ユニットを開発し、コネクティビティとコミュニケーションの部品を利用し、モレックスなどの企業が中国国内で製造しやすいようになりました。この状況が、未来のクルマの開発を推進する主な要因となっています。

世界的な視野で見ると、中国が、EVの分野で世界的な競争力を築くことにコミットしているのは、まったく理にかなっています。結局のところ、電気自動車は現在、今後普及していくものとしてしっかりと確立されているのです。モレックスとディメンショナルリサーチが行った「未来の車」調査によると、回答者の64%が、2030年の平均的な新車購入は完全電気自動車になると答えており、27%が、ハイブリッド車になると答えています。さらに、71%が、今後10年はリチウムイオン電池テクノロジーが実行可能になるだろうと見ています。

近年の中国のテクノロジーの進歩は多岐にわたっており、「EVエコロジー」という言葉がまさに適切であることが分かります。独自の産業的イニシアチブ、および/または、企業提携を通して進めている、中国の5Gなどの主要テクノロジーの開発はC.A.S.E.モデルを実現する重要な役割を担っています。5Gによって車両は外界とも(IoT)車両同士とも(IoV、車のインターネット)通信でき、未来の運転体験をより便利で高度にする高度なアプリやプラットフォームの組み込みも促進します。「シェアリング」の要素は、未来の運転者の姿がどうなるのか、エンターテイメントから、アプリ、道路安全情報まで、運転者はどのような運転体験を必要とするのか、または求めるのかという分野に影響を与えます。

現状では、中国にはすでに市場シェアを獲得している大手メーカーがあり、そのために世界で最もEV生産台数が高くなっています。ジーリー、長城汽車、SAIC、広州汽車集団、長安汽車などの中国の大手自動車メーカーに加えて、インターネットの巨大企業までもが電気コネクテッドビークルに関与しており、百度(バイドゥ)は最大レベル3と4の自動運転に向けた、独自のアポロ自動運転プラットフォームソリューションを開発しています。アポロは、試験を完了して承認を受けたら、おそらく中国国内の自動車メーカーに、コネクテッド自動運転車を簡単かつ迅速に市場に投入するため手段を提供することになるでしょう。

2021年を迎える今、未来の自動車を最初に提供するよう最前線に立つという、国家的な取り組みが全力で進められています。プラグインのハイブリッド車と水素燃料電池車を含む新エネルギー車両の目標は現在、2025年までに中国の総自動車販売台数の20%とすることで、これは2020年の約5%アップという数字です*。これは、2025年までに新車販売の50%を部分的自動運転テクノロジーを搭載した車両にする(前回の目標の2倍)という、目的と合致しています。直近の計画では、2030年までに「レベル2」または「レベル3」の自動運転能力を備えた新車両を、販売総数の70%にすることを見込んでいます。

起業家的なビジョンの兆候は至る所に見られます。アップル、ソニー、デルなどの大手ブランドとの提携で知られる世界的なEMSの巨大企業 Foxconは、ArmやAutolivなどの提携各社と協力して、MIHというEV向けソフトウェア・ハードウェアオープンプラットフォームを開発しました。究極的には、様々な自動車モデルに対応するEVを開発し、携帯電話業界でQualcommがリファレンスデザインを提供したのと同じように、MIHを「EV業界のAndroidシステム」にすることを意図した取り組みです。ハードウェアの観点ではFoxconnは、MIHプラットフォームは、「工業化」「軽量一体成型」「パワフルなEEAアーキテクチャ」「自動運転プラットフォームの4大機能を重視していると述べており、MIHプラットフォームの結果はすべて提携各社に開示されています。

さらに、百度が先ごろ発表した内容によると、ギーリーと提携して新たな電気自動車企業を立ち上げるとのことで、これは中国の決意を示すさらなる証拠と言えます。この百度の新規独立子会社が、車両設計から研究開発、製造、販売、アフターサービスに至るまで、工業チェーン全体を監督し、インテリジェント運転能力を備えた車両を製造することになります。ギーリーが自動車設計と製造の専門知識を提供し、百度がこの新会社の成長と、アポロ自動運転、アポロとBaidu Maps向けのDuerOSボイスアシスタントを含めたコアテクノロジーのフルポートフォリオをサポートすることになります。インテリジェントビークルのラインナップを再形成し、インテリジェント輸送に革命を起こすというのが目的です。

モレックスは、引き続き顧客と密接に協力して、自動車業界の可能性の限界に挑戦していきます。当社はほぼ30年にわたって自動車業界の重要な役割を担い、モバイルデバイスやデータサービスの完璧な相互接続に対する要求に応え、ネットワーキングや定評ある品質、自動車エコシステム全体の増え続ける消費者ニーズに応えるための顧客との協力体制を実現してきました。コネクターからアンテナ、ADASからEVに至るまで、モレックスは中国の拠点と協力しながらエンジニアリングの専門知識を活かして、顧客に合ったイノベーションにアクセスしていただけるよう徹底していきます。

このようなコラボレーションは、確立された伝統的OEM自動車企業だけではなく、スタートアップ企業も含めて多くの種類の企業に機会を創造し、新しいコネクテッドEVの発売を加速することに貢献します。そして、EVが中国の消費者に購入可能となる日が近くなり、限られた数の車両免許書を獲得しやすくなり、大部分は環境にやさしい車両へと移行するために設けられた、現地規制当局による運転制限が少なくなることでしょう。

未来の自動EVに関する無理もない懸念には、信頼性、安全性、バッテリーライフ、インフラストラクチャが含まれています。このような潜在的障害の多くは、安全カメラや交通管理システムの進化、AI・カメラ・LiDAR(衝突防止のため車両環境の立体モデルを構築する)などのテクノロジーとその他の感覚的・視覚的テクノロジーの統合によって、すでに対処されています。バッテリーの走行距離は常に協議されており、この分野の技術の進歩に対して、すでに多くのドルや人民元などが研究費として費やされています。インフラストラクチャの開発は、今後の輸送に対する各国のビジョンによって異なりますが、研究によると、この分野での大きな成長が見込まれています。IDTechExは、EV充電インフラ市場価値は2030年までに24% CAGR成長し、400億ドルに達すると見ています。

多くの人々が夢見てきた空飛ぶクルマはまだまだ先の話になりますが、高度な「運転手不用」の完全自動電気自動車は、現在の、そして未来の自動車メーカーの手の届く範囲にあり、中国がその第1号を世に出す決意、専門知識、能力を備えていると私は確信しています。

http://www.chinadaily.com.cn/a/202101/04/WS5ff258e8a31024ad0baa026c.html

** https://www.caixinglobal.com/2020-11-12/china-wants-self-driving-tech-in-half-of-new-cars-by-2025-101626619.html

*** https://www.idtechex.com/en/research-report/charging-infrastructure-for-electric-vehicles-2020-2030/729