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パンデミックの課題:サプライチェーンの要件から深いインサイトと回復力を引きだす

著者:シニアバイスプレジデント兼チーフサプライチェーンオフィサー
ドン・フナティシン

コロナのパンデミックは、この数十年に世界が直面した最も重大な事態であり、世界のあらゆる場所で生活のほぼすべての要素に影響を与えました。公共衛生の域を超えた最大の課題のひとつは、世界のサプライチェーンを動かし続け、工場で原材料を含むモノとサービスを確保すること、そして先例のないパンデミックの混乱の中で顧客の需要と期待に応えるための物流を確保することでした。

供給戦略とサプライチェーン運用モデルはこれまでにない課題を与えられました。ひとつの例がジャスト・イン・タイム(JIT)方式の供給管理です。JIT方式はメーカーが動かせなくなる資本量を最小にしつつ、そのサプライチェーン、生産ライン、製造拠点を最適化する上で有用です。企業でよくある例は、工場から数百メートルしか離れていない場所からオンデマンドで部品を供給できるサプライヤーのエコシステムにより工場をサポートし、JIT戦略を実装する方法です。これらの現地エコシステムは、接続が確立され、顧客とサプライヤーの間で情報が自由に行き来できるようになると上手く機能することが多くなります。しかし製造を支える「最適化された」在庫サプライチェーンモデルのメリットは、現地の供給ラインそれ自体にサプライチェーン問題が起きると崩壊する場合があり、これがパンデミック中に起きたことです。これにより、サプライチェーンのリスクを下げる必要性が優先されました。エンドツーエンドのサプライチェーン戦略に焦点を当てるとともに、データ接続と分析の価値をハイライトし、ネットワーク全体でアクションを取れるインサイトを利用可能にしました。

グローバルサプライチェーンは複雑で頻繁に依存関係があることが、この危機で初めて明らかになりました。多くの実例があり、ほとんどは、自然災害や経済イベント、市場不均衡がきっかけとなっています。1993年の化学工場火災で半導体のレジンサプライチェーンが影響を受けた例や、昨年猛威を振るったグローバルなパンデミックにより多くの企業がその半導体注文をキャンセルした例など、多種多様です。これらのキャンセルにより空いた製造能力が、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、データ・センターおよび消費者製品のパーツ製造にすばやく完全に振り替えられたことを誰が予測できたでしょうか?そのために現在、多くの自動車生産ラインが半導体待ちで止まっているのです。ここでも、今日の相互依存するサプライチェーンを管理するためのインサイトとインテリジェンスの必要性が浮かび上がってきます。

グローバルサプライチェーンにおけるもうひとつの複雑な課題は流通ネットワーク関連の問題です。グローバルなパンデミックは、航空輸送、海上輸送、鉄道輸送、陸上輸送など複数の輸送モードにわたり、容量プランニング、予測ETA、エンドツーエンドの可視性についての欠落を露呈させました。ポイントツーポイントの可視性だけでは十分ではありません。これまでは、物品を出発地から目的地まで設定された時間の枠内で移動させる事業はかなり予測可能なものでした。デジタル経済に、世界的ロックダウン中の顧客の行動と期待の変化が相まってデジタルサプライチェーンへのニーズが加速しました。情報、可視性と物品をエコシステム全体で最初から最後まで照合し、予想外の変化に対応するためにインテリジェンス、インサイト、オプションを共有することが、これまで以上に重要になっています。

最近の例として以下が挙げられます。

  • 国の渡航規制の結果、世界の航空貨物の最大70%を運んでいる商業フライトがキャンセルされ、運ぶことのできる空輸貨物量が急減しました。
  • トラックと鉄道の運転手たちが働くことを停止したため、陸上輸送の信頼性も低下しています。
  • コロナ規則と港の検疫規則が施行され、ドックの取扱量は50%となり、貨物量は通常より多くなったため、海上輸送コンテナの出荷も予測しにくくなりました。

実際、ある時点では、アジアから米国や欧州への輸送需要が高く、復路の貨物を積み込む間もなくアジアへ空で返される船があったほどです。

重要なことは、モレックスはこれらの複雑なサプライチェーンの課題と機会に対応し、当社の約束と顧客の期待に沿うために必要な原材料、コンポーネント、サービスへのアクセスを確保することに注力するということです。パンデミックは、弾力性のあるエンドツーエンドのサプライチェーンのために必要な主要機能を浮かび上がらせ、優先させ続けます。

モレックスはそのインテリジェントデジタルサプライチェーン変革の苦闘のさなかにあります。

顧客に優位性を提供するとともに、サプライチェーン全体に速度と機敏さを提供することに注力する上で、業界をリードする能力を構築します。私たちの成功の鍵は、当社の顧客、サプライヤー、パートナーと連携し、つながり、価値観を共有し、データセット、インテリジェンス、インサイトを作成して、透明性とパフォーマンスを向上させることです。

これによりモレックスは市場のダイナミクスにすばやく対応することが可能になります。自動車業界の例で学んだように、企業間(B2B)取引における秩序に則ったペースの対応では十分ではありません。私たちは企業消費者間(B2C)活動の水準で対応するエンドツーエンドのサプライチェーンを必要としています。

当社のサプライヤーおよびパートナーとの信頼と相互利益を構築することは、私たちのサプライチェーンに対する総合的なインサイトを高める上で役立ちます。そしてこれらのインサイトを活用することにより、私たちは、当社の顧客、サプライヤー、パートナー、そしてモレックスに相対的優位性を生み出すことができます。

パンデミックはデジタル経済を大きく混乱させると同時に加速し、B2BおよびB2Cサプライチェーンパフォーマンスの良い状態とは何かを再定義しつつあります。業界を先導するエンドツーエンドのインテリジェントデジタルサプライチェーンを提供することによる、顧客エクスペリエンスと相対的な優位性に鋭く焦点を当てることを通して、モレックスは、私たちのために、私たちのサプライヤーと顧客のために、これからの機会と課題のすべてに対応するサプライチェーンを作りあげようとしています。