産業とアプリケーション
患者の医療ジャーニーは診断から始まります。アメリカ国立衛生研究所の 報告 によると、「正しい診断を受けることは、医療の主な側面のひとつである。患者の健康上の問題を説明し、今後の医療的決断を行うための情報を与える」としています。
一般的な診断様式には、血管造影、超音波検査、従来的なX線撮影、CTスキャン、骨スキャン、MRIが含まれます。これらの方法はすべて、患者が医療期間で膨大な時間を費やさなければならない、大掛かりで複雑かつ高額なシステムを必要とします。さらに、医師がスキャン結果を読み取り解釈する時間を取るまで、患者は数日間待たなければならないということもあります。医療プロセスにおける診断の重要性は確かであるものの、現在の方法論では大きな問題が生じています。 NIH は、病院での有害事象の6〜17%が、医療診断エラーによるものと推定しています。これは医師や医療従事者にとって劣悪であり、患者にとっては壊滅的になり得るのです。
その状況に変化が起こっています。それに伴って医療診断テクノロジーが進化し、医療システムにもたらされています。医療従事者は、反応性治療を重視するシステムから、疾患や障害を予防し積極的に診断するシステムへと移行したいと考えています。この流れは、医療システムが、個別の診断に対して請求するモデルから、ケアの量よりもケアの質に重点を置いた管理プロバイダーモデルに移行する大きな変化をうけて、より強いものとなっています。さらに、患者自身が、自分の健康管理を自分でコントロールしたい、洞察を得体と思っているのです。次世代の医療診断が、そのような移行を可能にする主な要因となります。
連続した患者ケアを可能にする
医療プロセスで診断がより大きな役割を担うようになるには、まず、診断がより継続的になる必要があります。現在、診断の頻度は低すぎます。車を運転しようとして、ダッシュボードの計器が5分に1度しか更新しないと考えてみてください。実用的ではありません。連続的な診断は、スマートフォンやウェアラブルデバイスを実現したのと同じイノベーションで可能となります。事実、このようなデバイスは、新しいタイプのフレキシブルセンサー、環境発電ハードウェア、人工知能などとともに、連続的医療診断を実現する基礎に組み込まれています。この傾向が続けば近い将来、患者は、これまでは高額な病院用の機器でのみ可能であった精度と詳細と同じレベルで、いつでも自分の健康状態をモニターすることができるようになるのです。
医療的診断が手軽にできるようになるためには、連続して診断できるようにならなくてはなりません。スマートフォンはすでに、診断に組み込まれています。聴診器の代わりになるアプリや、パーキンソン病患者の歩行をモニターできるアプリから、血糖値 (CGM) を継続的に監視するアドオンデバイスに至るまで、テクノロジーは医療診断に革命を起こす上で不可欠であることが証明されています。
生体適合性素材で作られた埋め込み型のセンサーに加えて、画期的な製造工程によって、患者の皮膚に貼り付けられるステッカーほどの薄さで、脳波(EEG)、心電図(ECG)、パルスオキシメトリ、電気皮膚反応を通して生体信号を連続してモニタリングするセンサー(使い捨てもあり)が、安価で入手できるようになってきています。このようなセンサーからのデータは、近距離無線通信(NFC)などの低電力テクノロジーを使って、患者が衣服に付けたりスマートウォッチとして着用できるモニターへと送信することができます。そこからデータは、BluetoothやWi-Fiなどのより強力なワイヤレステクノロジーを使って、医師のスマートフォンやクラウドにまで伝達することができるのです。
アプリケーション内のアルゴリズムが体外診断(唾液や汗などの人体から採ったサンプルを分析する診断)を分析し、必要であれば直ちに措置を行います。例えば人工知能を備えたCGMテクノロジーは、医師または患者が介入することなく、患者の血糖値をモニターし、高いと診断された場合はインスリンポンプにコマンドを送信して治療を施すという、連続的なケアを提供します。
遺伝学とライフスタイルのデータを追加して精度を向上
現在の診断方法のもうひとつの欠点は、人によって大きく異なる可能性がある遺伝的要因、ライフスタイル、環境要因を考慮せず、生体信号と生体指標の測定と分析に主に焦点を当てていることです。生体指標とは、その個人の健康状態や疾患が存在する可能性を反映する、体内の化学的特徴を指します。このような指標の分析は重要であるものの、正しく背景を理解していなければ、医療的診断の質を改善することは難しくなります。しかし、生体信号や生体指標を測定する同じハードウェアが、患者がどの程度座りっぱなしになっているか、あるいは大気の質などの環境的要因など、ライフスタイルの属性を測定することができるという良い面があります。このデータを取り入れることが、これまでは連続的に達成することがほぼ不可能であった、診断の精度の向上に大いに役立つのです。
診断関連の最後の分野は、患者の全体的な健康状態を把握するために、遺伝的データを追加することです。いわゆる精密医療では、患者によって身体的症状が異なって現れる疾患を認識します。患者の遺伝的背景を考慮して疾患を理解することで、医師は、集計したデータとその患者を照らし合わせ、遺伝的に似ている人々でその疾患の症状がどのように現れるかを明らかにすることができます。このレベルの診断的ソリューションを達成することは容易なことではありません。処理能力を大きくはないスケールで発揮することが必要となるからです。診断のためにスキャンを行なって結果を報告するまでの時間を短縮するという、医師と診断者の取り組みを進めるためには、人工知能アルゴリズムと、そのようなアルゴリズムを起動させる専門ハードウェアの進化が必要不可欠となります。
モレックス: 明日の医療のイノベーションに向けたコラボレーション
生体医学テクノロジー企業は、医療の在り方を変える最前線にいます。モレックスは、次世代の医療診断テクノロジーを実現することにコミットする顧客をサポートするための専門知識を備えています。生体適合性素材のサイエンスに関する知識から、高品質フレキシブルプリントサーキットを製造する能力、様々な関連業界と提携することで得た広大な専門知識に至るまで、様々な能力を備えたモレックスは、医療診断を再考することに取り組む企業のパートナーとして選んでいただけます。