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ネットワークモデリングと最適化:コスト効率の高いサプライネットワークで、より高水準のカスタマーサービスを構築

By Ajit Diwakar
Program Manager, Supply Chain Network Optimization

原材料の供給から製品を顧客の手元に届けるまでのサプライチェーン。シンプルな発注から始まりますが、予想外に複雑な過程となったり、余計な支出が発生したりすることも少なくありません。また、納期のオンタイムパフォーマンスやカスタマイズ可能な配送オプションに対する顧客の要望は年々高まっています。複雑なサプライネットワークでは世界規模でコストが上昇し、利益率は常に圧迫されています。さらに、コスト制御のための可視化と洞察が欠如すれば、運用コストは上昇し、収益を圧迫していきます。

 皆さんのサプライチェーンは、期待通りの価値を生み出しているでしょうか。カスタマーサービスの水準を向上させながらコストを削減することは、顧客体験と収益性を改善するための素晴らしい方程式です。しかし、このネットワーク方程式の変数を1つ変えるだけで、その他の数字、または全体にどのような影響があるかを理解しておく必要があります。サービス水準を高くすると、その水準を維持するために必要なエンドツーエンドのネットワークコストが上昇することがあります。供給拠点から顧客までの輸送距離を短縮する方法を検討している企業の場合を考えてみましょう。たとえば、在庫の保管場所を増やす必要がある場合、倉庫の場所や在庫の増加に伴い運用コストが上昇します。ここで必ず検討しなくてはならないのが、「追加コストはサービス水準の向上に見合うものか」という点です。

 サプライチェーンのパフォーマンスを理解するには、既存のネットワークをしっかりと可視化し、検討中の変更がサービス水準の向上とコスト削減につながるのか、それとも最適な納品パフォーマンスとサプライチェーンの俊敏性には向上が見られないまま、コストだけが増加するのかを包括的に理解する必要があります。

 こうした背景から重要とされるのが、ネットワークモデリングと最適化です。これらをもとに、次のような業務上不可欠な質問の答えを導き出すことができます。

  • 最適なサービス水準を顧客に提供できるよう、ネットワークフットプリントは調整されているか。

  • 複数ある物流センターのうち適切な場所に製品の在庫を確保しておくには、どうすればよいか。

  • 顧客の声を反映したサプライチェーンソリューションを実現することで、顧客の要件を満たし、ロイヤルティを高めているか。

 

実世界におけるネットワークモデリングと最適化 – モレックスの実例

 ネットワークモデリングと最適化の本質をさらに明らかにするために、当社のグローバルロジスティクスチームが、モレックスのサプライチェーンのハブネットワークに関するオプションをどのように評価したかを見ていきましょう。1万8000社のサプライヤーを抱え、38か国に80以上の工場を持つモレックスは、グローバルなサプライチェーンの複雑性を理解するのにまさに最適な環境です。当社ネットワークの全容を把握するために詳細な調査を行った結果、複数の地域の顧客に製品を提供するために、東から西へ向かう重要な起点と終点のペアが存在することがわかりました。チームの目的は、サプライチェーンネットワークが顧客ニーズに合致しているかどうかを理解することでした。また、製品の在庫が適切な場所に確保されているか、確保されていない場合にはどの程度の物流コストが発生するのか、さらに、複数のサプライチェーンハブが必要なのか、それとも1か所で目標とするサービス水準を達成できるのかを評価したいと考えました。

 チームはいくつかの重要な仮定を立て、そのオプションをモデル化しました。たとえば、あるシナリオでは、サプライチェーンのハブを廃止し、ネットワーク全体を再構築した状態を想定しました。別のオプションでは、ネットワーク全体を単一のハブに接続し、カスタマーサービスの水準にどのような影響があるかを評価しました。そして、1か所のハブで起こった障害がネットワーク全体に影響を与えるというシナリオを含め、リスクレベルとそれを軽減する方法についても検討しました。

 また、移転を検討すべきハブの候補を特定するモデルも策定しました。このモデルでは移転の影響が示され、サプライチェーンの重心を特定の顧客に近づけた場合のコストへの影響や、配送時間の短縮に伴う影響など、非常に有益な結果を得ることができました。サプライチェーンハブを1か所とした場合、または2か所とした場合などに比べ、幅広いベースラインネットワークを活用した場合の財務的影響を明確に把握することができました。

 そして、そこからある洞察が得られました。サービス水準の向上、移転の可能性、関連コストなどを考慮すると、この変更が必要であると言えるほどの大きなメリットはないことが判明したのです。それはなぜでしょうか。ハブを顧客の近くに移せば距離は短くなりますが、製品が納入される西海岸の港からの陸路距離は大きくなります。費用対便益の効率的な最適化を鑑みて、変更は必要ないことが分かったのです。また、移転したハブで障害が発生した場合、カスタマーサービスの水準に影響する潜在的なリスクもモデルから特定されました。その結果、今回のケースでは、モレックスのネットワークを変更することは不適当であることが判明しました。異なる顧客に同様のシナリオを評価する際にも、同じプロセスが考慮されました。 

 すべては顧客に帰結

 モレックスのネットワークモデリングと最適化への取り組みは、すべて、同じテーマに帰結します。サプライネットワーク全体でサービス水準、俊敏性、コストを改善し、顧客の期待に応えるにはどうすればよいのか、ということです。B2B(企業間取引)の専門家は、私生活で享受しているレベルと同じサービス水準を期待しています。つまり、より高い「パーソナライゼーション」と、より俊敏なサプライチェーンソリューションを求めているのです。企業が勝ち残るためには、比類ない柔軟性、スピード、敏捷性、耐久性、そして障害発生の際にリアルタイムの対応を提供する、最適化されたネットワークを備えた、顧客中心のサプライチェーンを実現する必要があります。

 ネットワークモデリングと最適化は、今日のグローバル経済において競争力を維持しようとする企業にとって、まさに必要不可欠なものです。これが、サプライチェーンの基礎となる機能として、モレックスがネットワークモデリングと最適化をサポートするシステム、知識プロセス、専門知識を持つ担当者に注力している理由です。


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