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医療用ウェアラブル:日常生活に向けて設計

万歩計などの個人用ウェルネスモニターを含め、消費者はますます個人用・ウェアラブル電子機器に慣れてきています。このトレンドを受けて、医療市場ではバイタルや健康状態をモニターするウェアラブルのイノベーションを進めています。テクノロジーが進化を続ける中で、このようなデバイスによる効果的な診断や治療の適用が可能となり、ますます肯定的な結果を生み出し、数百万という人々の暮らしを向上させることができるようになりました。
デジタルドラッグデリバリーデバイスは、医療用ウェアラブル開発のターゲットのひとつです。これらは、リアルタイムの投与量調整を実現することにより、投薬過多または投薬不足のリスクを軽減し、治療用ウェアラブルが有望であることを示しています。例えば、患者の腕に装着した継続的な血糖値モニターが信号を送信してインスリンポンプを起動させるなど、治療薬を管理するスマートエレクトロニクスを備えた、目立たず柔軟なドラッグデリバリーパッチが開発されています。ウェアラブルは、痛みの管理、化学療法、抗ウイルス剤、免疫抑制剤の管理にも使用できます。

このようなデバイスは、患者にとって治療をより便利にし、服薬遵守を向上させ、最終的には結果を改善します。デジタルドラッグデリバリー戦略を掲げる企業の製薬の専門家を対象にモレックスが行った最近の調査では、回答者の69%が、患者のやる気を高めることが、所属組織がドラッグデリバリーソリューションを推進する要因のひとつであると述べています。

しかし、遠隔医療の利点を最適化するには、エンジニアは耐久性・信頼性の要件に対処し、患者が快適に使用でき費用対効果が高く、定期的な使用を促すウェアラブルを設計する必要があります。

患者の生活の現実に合わせる

血糖値モニタリングパッチは糖尿病治療の飛躍的な進歩でした。そして、広範囲で導入されるようにするには、テクノロジー的に効果的であるほか、快適で目立たないことが同じく重要でした。つまり、ウェアラブルが医療デリバリーを改善するポテンシャルを実現するためには、部品を含めてそのようなデバイスが快適な使用感で、毎日の実際の使用に耐えなければならないのです。

例えば、人間の生活に合わせるなら、あらゆるライフスタイルの考慮点を満たすよう柔軟で多様なものでなくてはなりません。そのため、デバイスとその回路は様々な体型や大きさに合うよう、身体にフィットして、柔軟で伸縮性がなければならないのです。さらに、患者が使い続けられるようにするため、ウェアラブルは日常生活に耐えるものでなければなりません。回路は、身体に沿って動き、繰り返し曲げ伸ばしができ、信頼できる性能を提供しなければなりません。そして汗や入浴による湿気、時折の衝撃や揺さぶりなど、人間が暮らす上でのその他の現実に耐え、何日も、何週間も、何ヶ月も信頼できる性能が続かなければなりません。

縮小するスペースに対処する

また、ウェアラブルはユーザーがその存在を負担に感じないよう、軽量で目立たないものでなくてはなりません。しかし、デバイスが小型化するにつれ、設計上の課題は増えます。回路を曲面に沿って、どの軸でもあらゆる方向に配線すると、エンジニアがスペースの制限を抑えられるようになります。事実、回路が包装に沿って曲げることができ、小型化したエンクロージャーに収まるよう曲げられ、比較的軽量であれば、患者が動きやすく快適に使えます。

使いやすさを実現

ウェアラブルを簡単に使えるようにするには、患者と医師の双方が直感的と感じるデバイスでなければならないというのは、多くの製薬の専門家に共通した意見です。モレックスの調査によると、彼らの39%が、デジタルドラッグデリバリーデバイスは患者にとって使いにくい場合があり、それが導入の障害になっていると確信しています。しかし、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)の開発により、コンスーマ向けデバイスの使用体験によく似た使用体験にすることで、ユーザビリティが上がります。ワイヤレス通信と静電容量ボタンを可能にすることで、プリンテッド・エレクトロニクスは、患者と医師の双方のHMIを高め、医療用ウェアラブルやドラッグデリバリーウェアラブルをすでに毎日使用しているデバイスのように使うことができるようになります。

信頼できる電源と手頃な価格

遠隔医療を実現するというウェアラブルの使命を果たすには、信頼できるコンパクトな電源が必要となります。つまり、エネルギー密度が高く堅牢な小型バッテリーが必要だということです。さらに、ウェアラブルデバイスを構成する電源やその他の電子部品は、費用対効果が高くなければなりません。モレックスの調査によると、製薬専門家の約37%が、薬物送達機器の障害としてコストの高さを挙げています。繰り返し長期間使用する高価な病院用設備とは異なり、個人が自宅や日常生活で着用する機器は、普及のためには手頃な価格である必要があります。

次世代医療機器の有効性の向上

人間工学、ヒューマンファクター、HMI これらの用語はすべて、人々の日常生活とシームレスに融合する医療用ウェアラブルデザインのことを指します。快適さ、サイズと規模、使いやすさ、信頼性、そして手頃な価格という要件が満たされれば、医療および薬物送達ウェアラブルは、ヘルスケアを今日の現実から大きく変えることになるでしょう。例えば、フィットネスセンターの除細動器の隣で運用されるスマート包帯を想像してみてください。負傷者に装着し、事故現場に向かう救急隊員に情報を伝え、使用後は廃棄します。がん治療薬の送達も強力な一例です。患者は、ウェアラブルデバイスを通じて、自宅で快適に化学療法を受けられます。使いやすさであれ、服薬アドヒアランスの改善であれ、遠隔ソリューションや治療法は、患者にとって治療を受けるのがより簡単で経済的なものになり、アドヒアランスが達成されれば、より良い転帰につながります。

より良い医療と、より健康な人々のいる世界は、現実の可能性です。革新的なデザインとエンジニアリングが、それを実現する鍵を握っているのです。