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点から線へ:設計と製造の連携

Christophe Vinsonneau
新プロジェクト開発調達CCS担当ディレクター兼日本サプライ基盤管理担当ディレクター

ダイナミックなデジタルトランスフォーメーションという時代にあって、企業やブランドの取り組みが成功するか否かは、真のイノベーション(より良い意味での破壊)に向けた業界の取り組みの背後にある創造性の核みたいなものによって決定づけられるのかもしれません。イノベーションは、顧客のために価値を創造し、付加する手段です。モレックスのような企業がトレンドやアイデアを捉え、設計の初期段階でそれらを反映させることで、顧客のニーズに応え、優位性をもたらすイノベーションを実現する手段です。

しかしイノベーションは何もないところから生まれて、成功できることではありません。フランス人映画監督 フランソワ・トリュフォーの有名な言葉があります。「映画監督として成功するには、朝にはビジネスマン、午後には詩人にならなくてはならない。」

モレックスをはじめとする変革期のハイテク企業にとって、この言葉はまさに真実です。実際的な計画と意思決定、データの連携、リアルタイムに近いスピードでのデータの提供が、最終的にROIを達成し、顧客、モレックス、サプライヤーのために価値を高めるカギとなります。

製品の開発ライフサイクルにおいて、相互にリンクしている部分を効率的にまとめあげることで、最終的に最終顧客に利益をもたらすことになります。そうした効率化は、総合的な考え抜かれた企業の新製品開発(NPD)プログラムによって実現できます。そのことが顧客の付加価値を高め、市場投入までの時間と収益を上げるまでの時間を短縮することにつながるのと同時に、業界を超えた相乗効果と連携を生み出し、次世代システムや通信の厳しい公差や課題に対応する製品品質を促進します。そのような実証可能な効率化が実現すれば、顧客は現在も将来も信頼できるパートナーと一緒に仕事をしているという安心感を持つことができます。それでは、このような効率性や相乗効果をどのようにして達成されるのでしょうか?

2016年:モレックスにおけるNPD革命

これは、2016年にモレックスがNPDを確固たるものにするために始めた取り組みの背景にあるインサイトであり、グローバルチームがいくつかのKPI指標に従って結果を統合データベースに送り込み、最初の記録を作るという新しいプロセスです。2016年のNPD 1.0プロセスの目標は、新規設計プロジェクトのギャップと、量産に向けた規定の段階的な進行を通じて特定された機会を調整するために、世界規模での同期、調和を実現することでした。

製品調達においては、複雑なサプライヤー探しや交渉を献身的にサポートし、監督することで、新たな息吹を得ることができました。例えば、NPD調達メンバーは、重要なエンジニアリングリソースの近くにあるモレックスのデザインセンターに戦略的に配置され、シニアマネジメントは個々のプロジェクトの状況をすぐに把握できるようになります。

古いものを捨て、新しいものを取り入れる

初期バージョンのNPD 1.0は、ヒット率/成功率、コスト回避、見積書の正確さなどの古典的なKPIを監視するための手動プロセスに依存していました。2020年に採用されたNPD 2.0では、これらKPIを、より意味のあるKPIセットを使用して、モレックスの全部門にわたって、より体系的なアプローチに置き換えました。

  • アーキテクチャー関係のコスト:BOMおよびCAPEXの目標値と実績値の比較。目標が達成できなかった場合、NPDチームはギャップを解消するためのアクションプランを作成する必要があります。
  • サプライチェーン向け設計:リスク評価とリスク緩和に注目して、早期段階でリスクを正確に評価し、まだ時間がある段階で必要なリスク緩和策を定義することを目的としています。
  • 調達のためのデザイン: 「最高クラス」の優先サプライヤーと強固な関係性を築くことを目的とします。詰まるところ、これは単に最高の部品を最安価格で購入するという問題ではありません。サプライヤーによって実際にサービスが提供されているのか、サプライヤー・顧客・エンドユーザーにとって付加価値があるかを問わなくてはなりません。
  • 製品開発から発表までのサイクルタイム:この段階では、プロジェクトが軌道に乗っているか、重要な成果物を遅れることなく達成することに注意して調達の期限が守られているかを確認します。

NPD 2.0では、これらのKPIのすべてのデータが、アクセス可能な統一された方法で記録され、量産段階を通じて参照可能であることを保証することができました。この一貫した取り組みにより、NPDチーム間の連携が可能になり、個々のプロジェクトの状況に関するすべてのデータが即座に利用できるようになりました。重要なのは、モレックスのNPD 2.0は、製品の開発ライフサイクルのすべての段階において、既存のプロジェクト開発プロセス(PDP)と緊密に連携していることであり、チームメンバーがNPD 2.0の全面的な採用に向けて移行する際の「学習」時間を最小限に抑えながら、NPD 3.0に向けて前進しています。

NPD:回り続ける水車

モレックスのNPDは、良い意味でも進歩的な意味でも、回り続ける水車にになりました。2021年、NPD 2.0はNPD 3.0にアップグレードされ、NPD調達データの可視性がさらに高まります。たとえば、調達組織は、BOMコストを可能な限り低く抑えるために、個々のコンポーネントや部品番号、その指定サプライヤーを含む、新規プロジェクトのより詳しいBOMデータに即座にアクセスできるようになります。

モレックスでは、Power BIソフトウェアを使用して4つの重要なKPIに応じてプロジェクトを明瞭なビジュアル形式で完全に整合させ、次のようなクエリに対する答えを即座に提供できます。

  • KPIは順調か?
  • どのプロジェクトがKPIを満たしていて、どのプロジェクトが満たしていないか?
  • 特定のプロジェクトのステータスは?

KPIにおいてデータが健全とみなされると、回答は肯定的になります。特に、全部署にまたがるデータ入力の動きと使用されているRPMツールの統一によって互換性のないソフトウェアやハードウェアのボトルネックが解消された場合がそうです。

RPMツールという天才

SAPのRPMツール(Resource & Portfolio Management)には、4つの重要なKPIにスポットライトを当てたKPIの概要に沿って、すべての新規プロジェクトの優先順位の詳細が取り込まれます。BOMコストとCAPEXコスト、最終優先サプライヤー、リスク評価 また、収益創出や新規市場開拓など、優先順位を構成する各エンジニアの独自の視点を、会社全体のみなし優先順位に適切に反映させることもできます。この統合的なアプローチの統一性とデータの整合性により、時間のかかる複数の形式の手動レポートの作成が不要になり、データの同化が合理化されるため、効率性が向上し、市場投入までの時間が短縮され、イノベーションを付加価値に変えることができます。

NPD 3.0でモレックスは、パイプラインにあるすべてのNPDの機会を完全に可視化し、NPDデータを連携させて活用することを約束します。これには、製品コストの「全体」管理や、ビジネスおよび顧客の優先事項に沿ったサプライヤーとのより「包括的な」交渉も対象になります。モレックスのNew Product Development 3.0の新しい世界では、イノベーションが重要な位置を占めています。