産業とアプリケーション
消費者が自動車に一層多くの機能を求めるようになり、自動車業界では大きな変革が進行しています。2020年11月にモレックスが行った「自動車の未来」調査によれば、2030年の自動車の標準的機能は、主に技術革新と顧客需要により推進されるとされています。
たとえば、先進運転者支援システム(ADAS)や自動運転(AD)アプリケーションへの関心の高まりにより、インテリジェント車載ネットワーク(IVN)と配線システムの重要性が高まっています。重要性が見過ごされがちですが、ケーブルとコネクターは車両の神経システムを形成し、車両内での高速で中断のない信号伝達を可能にしなければなりません。
先進運転者支援システム(ADAS)や自動運転(AD)が提供する新しい機能的なシグナルは、それに伴うレイテンシー、周波数、帯域要件をサポートできなければなりません。これらの必須コンポーネントはまた、IVN全体で増加するデバイスと電子制御ユニット(ECU)にシームレスに対応し、最高レベルの性能と機能を確保しなければなりません。
シングルエンド?差動?
システムアーキテクチャと性能のニーズに対応するため、シングルエンドと差動のどちらのケーブル/コネクターソリューションが適しているかについては多くの議論があります。10月に行われた車載用SerDesカンファレンスにおいて、私はこのトピックで深く掘り下げた話し合いを主導し、インサイトと見解を提示しました。
シングルエンド(同軸ケーブルの両端を同軸コネクターで終端)と差動(ケーブルの両端に完全にシールドされた差動コネクターの付いたシールドツイストペアまたはシールドパラレルペア)の間の選択は厳密にアプリケーションによります。異なるプロトコルを持つアプリケーションの数が増え、配線の複雑さと重量が増すにつれ、最良のアプローチを選ぶ作業は複雑になっています。
シングルエンドと差動ケーブルの一般的な違いは、後者は2つのケーブル導体で信号を送るのに対し、前者は1つだという点です。導体のペアは異極性を持ち、環境からの干渉シグナルを打ち消すことができます。差動ケーブルにはいくつかの種類があります。シールドツイストペア(STP)は、ツイスト導体の構成によりノイズを抑制しますが、シールドパラレルペア(SPP)とは、ほとんどの部分で並行の2つの導体を指し、ツイストの減少により得られる物理的な長さにより優れた挿入損失(IL)性能を可能にします。
シールドツイストペア(STP)はノイズを均質化し抑える上で役立ちますが、シールドパラレルペア(SPP)とは2つのケーブル線がまっすぐであることを意味します。
ケーブルのシールドにも色々な種類があり、ケーブルの材質も関係します。車両内での配置場所も、材質を決定する要因となります。たとえば、頻繁に開け閉めされるドア部分にケーブルを設置するならば、柔軟性がなければなりません。たとえば、ケーブルがエンジンコンパートメント内に置かれるのであれば、ケーブルアセンブリーの温度規格を摂氏125度に設定しなくてはなりません。一般的に、バックグラウンドノイズを抑えるには差動ケーブルのほうが優れていますが、シングルエンドと比べてより高価で重くなります。
この点に関して人々の立場をより理解するため、私は、どちらのアプローチが長期的には勝利するかについて、SerDesカンファレンスの参加者たちに問いを投げかけました。面白いことに、過半数の人が、差動ケーブルが将来の成長余地が大きいと回答しました。
標準化とコラボレーションが鍵
車載用SerDesアライアンス(ASA)の長年のメンバーであるモレックスは、非対称SerDes技術の標準化支援を約束しています。ケーブル/コネクターソリューションプロバイダー、インテリジェント車載ネットワークサプライヤー、自動車OEMの間で、異なるアプローチの潜在的な長所と短所に対応しつつ、OEM戦略に合わせた設計を確保するためのコラボレーションが必要になることは明らかです。
もう1つの重要な調整は、チップセットメーカーとの調整です。チップ開発者との戦略的協力関係により、ケーブル/コネクターソリューションは、OEMへの最良のコスト構造で最高品質のソリューションを提供できるようになります。規制の強化も、主により広範な安全性イニシアチブの結果、高速コネクターの必要性を間接的に推進し続けています。
変化し続ける要件
インテリジェント車載ネットワーク(IVN)とADAD/ADは、ケーブル要件を変化させ続けており、より多くの車両がより多くの接続とより多くの信号伝送を必要としています。次世代機能は、システム全体を信頼性の高いフェイルオーバーに対応させるため、ニーズの増加する無停止バックアップを必要としています。
一方、高いデータレートは別の重要な配線上の課題を突きつけます。品質のより高いケーブルが求められています。信号伝送に関する定常的な品質調整と改善は、コネクテッドカーの配線における主要課題の1つです。さらにケーブルは、環境雑音、電磁干渉(EMI)、およびその他の干渉信号から保護される必要があります。このため、定期的な早期のケーブル接続試験が必要となり、障害発生時の迅速なトラブルシューティングも求められます。
コネクテッドカーの存在が年々現実性を増すにつれ、ケーブルとコネクターはますます注目されるようになっています。2021年、登録されるアプリケーションとプロトコルの増加により、関与する全員が希望する結果を得られるよう、標準化が議論の中心となりました。