産業とアプリケーション
顧客からよく聞かれる質問は、このコネクターは、このセットの電気信号で機能しますか?という質問です。今日、すべては高速で、特にデータレートは高速です。1Gbps以上の伝送を行うときは常に、デジタル信号の「読みやすさ」を損なう一般的な信号グランドとその後のグランドバウンスを除去するために差動ペアを使用します。これはボックス内接続のボード間でも、ボックス外でケーブルを使ったボックスツーボックスでもあてはまります。
1つめは コネクターのピン配列の設定方法を理解する必要があります。Impact™ または Impel™のバックプレーンコネクターを6Gbps、10Gbps、または25Gbps以上の速度で使用する場合は、ピン配列は心配する必要はありません。コネクターの設計者はシグナルインテグリティの専門家と協力して、伝送線をこれらのコネクターへパックするベストの方法を既に検討しています。
SFP+やQSFP+などのI/Oコネクターや現在の6Gbpsと14Gbpsで動作するそして願わくは未来の25Gbps(近距離)で動作するiPass+™ HDを使用する場合についても、同じことがあてはまります。難しい点は、これらのコネクターの1つが速度に関して限界に達した時、伝送リンクが長くなり、クロストークやコモンモードへの変換の制限が限界となったときです。
低速またはLVDS(低電圧差動信号)の場合は、専用のピン配列のない標準のコネクターを使用できますが、この話はブログ1つ分ぐらい長くなります。
2つめにデジタル信号において何が重要かについて理解する必要があります。伝送線内の接続の影響を完全に理解するには、どのように構成され、基準は何かを理解しなくてはなりません。
シャノンの定理とフーリエ変換の基本に戻って説明しましょう。シャノンの定理は、1つの正弦波に最大2ビットをパックすることができる、としています。これはデジタルNRZ(非ゼロ復帰)コーディングにも関係します。他にもPAM4などのセミアナログコーディングスキームがあり、この場合、信号から4つの異なる電圧レベルを読み取らなければなりませんが、深すぎる話のためここでは避けます。単に、RJ-45上での10ギガビットイーサネットの伝送はこのように機能するとだけお知らせしておきます。
NRZに集中し、デジタル人間が方形波を好む理由について考えてみましょう。方形波は、相対的に長い時間にわたり明確な「1」または「0」を示し、ビット間の変化は非常に速く、ほとんど時間がかかりません。このことは、長い距離にわたり並行して多くのデジタル信号を伝送する上で有利です。パラレルのデジタルリンクが、異なるディレイを持つ場合、つまり、一方が他方よりも速い場合でも、情報を読むためのオープンウィンドウが長くなります。PCの黎明期、この技術はパラレルプリンタポートで使用されており、これがプリンタケーブルの長さが限られている理由でもあります。人々はこの帯域幅が気に入りましたが(データレート×パラレルリンク)、より長いリーチを得るには、ずっと低い帯域幅でシングルレーンのシリアル伝送を使用しなければなりませんでした。
最近では私たちは、それぞれ8B/10Bのパラレルシリアル伝送を使用してディレイの違いの問題を克服しました。64B/66Bコーディングは、転送データの量を各5%、合計で20%削減しますが、異なるタイミングで現れても、1つのバイトに属する単一ビットを正確に特定することを可能にします。
NRZに戻る:方形波はどのように生成されるでしょう?
これを理解するにはジョセフ・フーリエに質問する必要があります。彼は19世紀に信号曲線は異なる周波数と異なる振幅の多くの正弦曲線の重ね合わせの関数であることを証明した偉大な数学者です。そのため、方形波は基本周期に、3次高調波、5次高調波、7次高調波などを重ね合わせたものです。詳しく見てみると、これは基本周期に、振幅が1/3の3次高調波、振幅が1/5の5次高調波、振幅が1/7の7次高調波を加えたもので、すべてが同期しています。
高次の奇数の高調波ほど方形波の形状に影響を与えないと結論できますが、詳しく見るためにExcelシートを作って正弦波の1/100ステップを作成しグラフを生成してみましょう。
基本周期+振幅が1/3の3次高調波
基本周期+振幅が1/3の3次高調波+振幅が1/5の5次高調波
基本周期+振幅が1/3の3次高調波+振幅が1/5の5次高調波+振幅が1/7の7次高調波
重ね合わせた「1」信号は常に基本周期の振幅の0.8(80%)付近であることがわかります。より多くの奇数の高調波を重ね合わせ信号に加えるほど、方形波の幅は広がりますが、0の線の部分での信号の立ち上がりは急になります。この立ち上がりが、信号がコネクターを通るときに最も重要な点です。コネクターとビアがシグナルパスの混乱の原因となり、速い立ち上がりが、隣接する信号とのクロストークを生じさせます。
より高次周波数の奇数の高調波を追加するほど、これらの高い周波数を伝送することのできる信号パス(PCBトレース、ビア、コネクター)が必要となります。すべてを効率的に行うため、5次高調波までのみ検討することにしました。それにより信号は方形波に十分近い形状となり、伝送線の要件は緩和されます。
たとえば10Gbpsの伝送線は5GHzのクロック周波数を持ち(シャノン理論によるNRZの場合)、3次高周波は15GHz、5次高周波は25GHzとなります。そのため、10Gbpsのバックプレーンコネクターは25GHzを伝送できますが、振幅は非常に小さくなります(基本周期信号レベルの1/5)。
伝送線の帯域幅は、25GHzをパスできるものとします。
立ち上がり時間は基本周期、3次高周波、5次高周波の重ね合わせとなります。
文献によく見られる式は
立ち上がり時間(ナノ秒) = 0.35/帯域幅(GHz)
さまざまなケースで
帯域幅(GHz) = 0.35 / 立ち上がり時間(ナノ秒)
となり、5次高周波25GHz信号の立ち上がり時間は14ピコ秒です!
Excelシートに戻って、5次高周波を含む10Gbpsの方形波に近い形状の信号の立ち上がり時間(信号の10%から信号の90%)では、y=0.08(0.8となる「1」信号の10%)とy=0.72 (0.8となる「1」信号の90%)の時間差は5.9ピコ秒です。
絶対振幅値を使うならば(「1」の信号は実際には1ではなく0.8しかないことを無視)、立ち上がり時間は、y=0.1からy=0.9で12.8ピコ秒となります。
これにより上の帯域幅から立ち上がり時間の式は正確ではないものの十分に近いことがわかります。
残念なことに人々は20/80の値を使います。そのほうが良く見えるからですが、さらにフーリエの分析の現実から離れてしまいます。
なぜ立ち上がり時間が重要なのでしょうか? デジタル世界は私たちにアプリケーションのための立ち上がり時間を調整するツールを与えるためです。そして立ち上がり時間は薬のようなものです。大抵の場合、必要以上の場合は、良くないのです。
そのためFPGAで立ち上がり時間を調整できる場合は(あるいは、立ち上がり時間の異なる、異なるチップを選択できる場合は)ニーズを見て検討します。立ち上がり時間がゆっくりだと、高速道路のバンプ(伝送リンク内のインピーダンスの断絶)となる、クロストークが減ります。
コネクター業界は5次高調波のデータレートを含む周波数に届くSパラメーターでサポートします。コネクターの時間領域反射(Time Domain Reflectometry:TDR)データを測定し、システムの実際の立ち上がり時間と比較する必要があります。立ち上がり時間を短くしてシステムを拡張した場合、コネクターが立ち上がり時間のニーズに対応しているか特に注意を払わなくてはなりませんが、スムーズに設計されたシステムではその必要はありません。
最近、顧客に、G S+ G S- G S+ G S- G構造を、0.635mmピッチの2列 SlimStack™コネクターのG S+ S- G S+ S- G構造へ再計算する際に、139Ωではなく128Ωのインピーダンスを使用する理由について質問を受けました。私は意図的に選択しました。なぜなら顧客は240MHzのキャリアの「わずか」480MbspのUSB信号と1.2GHzの5次高周波を扱わなければならないからです。
立ち上がり時間の計算は、0.35を1.2GHzで割ると0.291ナノ秒、つまり291ピコ秒となります。システム内に存在しない50ピコ秒の立ち上がり時間を検討する必要はないでしょう。
以下をご覧ください。バイトとビットと周波数と立ち上がり時間を理解するためにロケット科学のような精密さは必要ではありません。ジョセフ・フーリエを見習って、データレートの基本周期の5次高調波を使えば、何が重要か、本当のニーズは何か、コネクターは何を実行できなければならないかを理解することができます。