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家電の世界市場で電気保安が前進

世界市場で競争に勝ちながらポジティブな顧客体験を提供することに努めている家電メーカーにとっては、安全性と品質が最重要事項です。しかし、消費者向けに設計された電気製品にはリスクがつきものです。危険な状態の多くが、人的ミスや家電製品の誤用、ショート、配線によって発生します。そのような事態を最低限に抑えるために、家電製品に内臓されている電気部品の信頼性は大手家電メーカーにとって最優先事項です。

家電製品の安全性:業界の優先事項

熱や火に対する耐性は、家電製品の設計における主な安全問題のひとつです。Austrian Standards Instituteの報告によると、過去数十年間で世界的な火災による死亡率は下降したものの、火災の大半(約60%)とほとんどの火災による死亡は、自宅で発生しているとのことです。家電製品が基本的な要因となっていることが多々あります。例えば、全米防火協会による2019年の報告によると、2012年から2016までの米国での住宅火災の原因の第1位は機器の放置で、第2位は電化製品の故障または誤作動でした。

メーカーは、潜在的に有害または危険な製品の不具合が認識されたら、消費者を守るために迅速に措置を取るよう努めます。安全性の懸念が発覚したという理由で、数百万というガス・電気コンロ、冷蔵庫、食洗機、衣類乾燥機・洗濯機、小型家電製品がリコールされることは随時起こっていますが、これによっていくつか問題が発生します。まず、リコールはメーカーにとって法外なコストがかかること。しかも、ブランドの評判が長期にわたって傷つきます。

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さらに、消費者はリコールに気づいて製品を積極的に登録し、推奨される措置を取らなくてはならず、消費者の行為をメーカーは信頼することができません。

その結果として家電業界は、製品と消費者の安全性を改善するための基準を策定し強化することを支援しています。ほとんどの家電製品の安全基準と認証は、広範囲に及ぶ試験、データ、業界内での協力を通して発展しましたが、依然として大半が自主的なものです。メーカー各社は、UL、グローワイヤーおよび/またはNiChromeの試験認定を満たす、または超越する高品質の製品を提供することで消費者を守ることに強い関心を持っています。

アンダーライターズラボラトリーズ(UL)基準

米国を拠点とする独立組織であるアンダーラボラトリーズは、一般的に家電製品に使用される配線システムやコネクターを含め、製品の素材に対する安全関連の認証・検証・検査・試験サービスを提供しています。デバイスおよび家電製品の部品に使用されるプラスチック素材の可燃性に対するUL94基準には、制御された研究室の環境で、小さな開放炎または輻射熱源に対する重合体(プラスチック)素材の可燃性を評価する小規模の試験が含まれます。

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UL94基準は、デバイスや家電製品に使用されるプラスチック素材の発火性質を評価するための方法を提供します。様々な燃焼試験で、スケール評価システム(HB、V-0、V-1、V-2)で素材の可燃性を特定するものです。UL評価が、素材の一般的な燃焼率を事前承認または確認するために使用される場合がありますが、家電製品やその他のアプリケーションでは耐火性と安全性が大きく異なることを理解することが重要です。また仮に、素材がULがV-0またはV-2と評価された場合は、NiChromeまたはグローワイヤーの要件を満たすとは限らず、追加試験を行うことになります。

グローワイヤー試験

国際電気標準会議(IEC)は、家電製品の過負荷回路または過熱部品の潜在的な影響を試験するため、グローワイヤー基準を策定しました。業界のほとんどが現在、家電用のコネクターやその他の部品に対するグローワイヤー試験遵守を要求しています。グローワイヤー試験の方法論は、IEC 60695-2シリーズでご覧いただけます。

無人装置グローワイヤー要件は、有人装置に対する要件より厳しいものです。この基準では、コネクターハウジング、コンダクターの断熱、0.20A以上の全回路のプリント基板を含む断熱素材が、グローワイヤーが過負荷状態になった際に発火に耐えることができなくてはなりません。この要件は、有人装置と0.20A未満の無人装置に対してはもっと低くなっています。

グローワイヤー試験は、ワイヤーが過負荷状態になったっ際にコネクターの素材が溶ける、かつ/または、発火する傾向を特定するために作られ、プラスチックまたは樹脂のコネクター素材の
発火に対する耐性を測ることに特化したものです。グローワイヤー試験は間接的な炎を利用し、UL仕様内で概要されている直火の手法とは異なります。グローワイヤー試験に合格するには、コネクターが、IECグローワイヤー点火温度(GWIT)基準とIECグローワイヤー可燃性指標(GWFI)基準に具体的に適合できる素材で形成されなければなりません。

NiChromeワイヤー部品ベンチテスト

NiChromeワイヤー試験は、最大1000°Cまでの温度の過熱した電気接続の影響を模倣して、家電製品レベルに熱を接触させて行います。他の試験手法の温度より高い温度です。

NiChromeワイヤー試験には、複数のUL主要家家電基準が含まれており、試験を改善してIEC基準にまで拡大するよう継続的に取り組まれています。実際に、ULとIECが協力してNiChromeワイヤーベンチ試験のプロトコルを策定しています。

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大手家電メーカーは通常、この家電製品レベルの試験を行うプロセスで、製品本体を焼却します。新規の家電設計に対しては、25台から35台も焼却することがあります。試験のコストを内包するよう、モレックスは部品レベルでNiChrome濾過システム手順を行なっています。その後、その試験結果と当社の過去の経験に基づいて、火が家電製品の他の部品に燃え移らない可能性が高いため、試験に合格するであろうことを推奨します。

可燃性試験の比較

グローワイヤーとNiChromeは特定の電気系基準試験であり、ULがこの2つの試験と、UL94コンプライアンスに対する試験を含む他の試験を行なっています。以下が、一般的な家電製品基準の比較対照表です。

世界のメーカー各社は、自社製品と世界中の顧客の安全性を徹底するために、幅広い種類の仕様や要件に適合する、費用対効果の高い標準ソリューションを求めています。例えば、米国では国内で販売される家電製品に対してグローワイヤー試験が義務付けられていませんが、米国のメーカー各社はヨーロッパで自社製品を販売することが多く、その結果、グローワイヤー試験要件に適合しなければなりません。そのため、標準試験とグローワイヤー対応コネクターがほとんどの地域で必要とされており、世界の大手メーカーに好まれています。

UL–94グローワイヤーNiChrome
重合体(プラスチック)素材の可燃性と消火傾向を評価するプラスチックまたは樹脂素材の耐火性を測る過熱した電気接続の影響を模倣した熱接触試験
デバイスおよび家電製品に使用される部品家電製品に使用される部品家電製品に使用される部品
部品を開放炎または輻射熱源に晒す(直火)コネクターの中に圧縮した加熱したグローワイヤー要素を使用する(間接炎)1000°C(他の試験より高温)の熱源を部品に接触させる
部品レベルで試験する素材および部品レベルで試験する家電製品内で試験する

モレックスの優位性

世界の家電業界の顧客にニーズに応えて、モレックスでは、UL 94 V0およびグローワイヤー遵守の部品のポートフォリオを展開しています。また、樹脂を使用したMini-Fitシグマコネクターシステムなどのコネクターの設計も開始しました。この樹脂は、社内スクリーンテストおよびほとんどのエンドユースケース分析にて、完成品アプリケーションのNiChrome試験に合格しました。
モレックスグローワイヤー対応コネクターは、家電業界が義務付けている安全要件・環境的要件をすべて満たし、UL 94V0も遵守するよう、数多くの人気のスタイルをご用意しています。事実、数々のモレックスのワイヤー対ワイヤーハウジング、および電線対基板用コネクターは、UL 94-とグローワイヤーの両方に対応する素材を使用し、幅広い種類のハウジングスタイルとコンフィギュレーションを揃えています。さらに、電気的な安全性を強化するため、これらのコネクターの多くが家電製品アプリケーションで最高峰の機能を提供します。