メインコンテンツにスキップ
画像

医療のデジタルトランスフォーメーションを加速する

ポール・シャフィン
医療および製薬ソリューション部門担当シニアバイスプレジデント兼社長

世界的なパンデミックによって、デジタルテクノロジーに大きく注目が集まりました。デジタル化というのは、単に物事の新しいやり方を提供するだけではなく、ほぼすべてのやり方を変えるものです。多くの場合、この変化は恒久的で、あらゆる垂直的セクターに浸透し、生産性の増加、実用的なインサイト、効率の向上をもたらします。実際に、デジタルトランスフォーメーションは定着しています。

コロナによって、無数の分野やビジネスでデジタルトランスフォーメーションが加速されたことは、疑いの余地がありません。この変化は、ほとんどが必然的に起こりました。ほぼすべてのものがオンラインで動いた時期に輸送上の利点をもたらしたからです。「ニューノーマル」の暮らしになるにつれ、この必然性は少なくなっていくかもしれませんが、利点は残っていきます。そして、このような利点を考慮し、業界のリーダーたちはさらにデジタルトランスフォーメーションを進めることに意欲的です。

何にでも出発点はあるものですが、デジタルトランスフォーメーションは、多くの市場セグメントや企業ですでに進行中であり、アプリケーションとその導入速度の両方を促進する、独自の理由によって必要とされています。医療がその好例です。デジタルトランスフォーメーションは、高齢化、糖尿病などの慢性疾患の増加、コスト上昇が重なって必然的に発生しました。そのため、医療は進化して、人々のいる場所に届き、個々人の固有のニーズに対処しなければなりません。この傾向を認識して業界全体がデジタルテクノロジーに移行し、コネクテッドヘルスの分野を大きく進化させました。医療の分野で起こっているトランスフォーメーションは逆戻りしないはずです。そして、コロナによって発生したより広範囲のデジタルトランスフォーメーションについても、同じことが言えるはずです。私は、この「ニューノーマル」を楽観的に見て、避けられない変化から多くのポジティブなことが生まれると捉えるべきだと確信しています。

自身もデジタルトランスフォーメーションを進めながら、フィリップス・メディサイズはパンデミックを通して操業を続けました。インスリンペンやアドレナリン自動注射器(エピペン)などの必要不可欠な医療デバイスや医療機器、ならびに、除細動器やカテーテルデリバリーシステムなどの機器用の部品の製造元として、業務を中止することは選択肢にありませんでした。行動規範を守り戦略的措置を取ることで、フィリップス・メディサイズの従業員は、できる限り安全に業務を続けました。私たちの業務やプロセスをかなり変更しなければならなかった措置もありました。安全な職場にするために、ソーシャルディスタンスが守れるように製造ラインを設定し直す、個人用防護具を提供する、プレキシグラスのついたてを設置するなどの手段が取られました。このような措置は、職場でのコロナの感染を最低限に抑える上で有効でした。

製品の需要が高まったため、キャパシティも上げなければなりませんでした。コロナの試験機器や呼吸器の部品を供給するサプライヤーとしてフィリップス・メディサイズは、急速に製造を拡大しなければなりませんでした。それには、製造ラインの拡大に合わせて既存の職場環境を設定し直すこと、顧客とリモートで協力して新製品を設計すること、サプライヤーと協力して重要な原材料の需要のピークに対応するクリエイティブなソリューションを見つけることが含まれました。

デジタルワールドに対する新しい医療プラットフォーム

パンデミックによって、医療の分野ではすでに進行していたマクロトレンドが加速しました。ソーシャルディスタンスと隔離が必要であるということは、必要な医療にアクセスする上で新たな課題に直面することを意味します。新しい働き方が迫られることで、プロバイダーとリモートで繋がるだけでなく、診断や治療も自宅でできるようにした新テクノロジーが、続々と登場しました。

もちろん、そのような新しいテクノロジーにアクセスできるのは限られたことではあり、新しいテクノロジーを活用できる機器を備えている医師を見つけるのも困難です。その大きなギャップを埋めるために、テクノロジーが強調されます。必要不可欠な機能を提供できるソリューションを中心に、関心が高まっています。

テクノロジーが基本となるアプリケーションのひとつは、患者が体温・血糖値・血圧などのバイタルを定期的に測定できるデバイスと繋がる、遠隔モニタリングです。データは、インターネットを介して安全にクラウドサービスに送信され、そこでAIや機械学習などのテクノロジーを活用して分析され、保存されるか医師やその他の医療従事者に送信されます。このプロセスの次のステップは、テクノロジーを使って遠隔診断を提供することです。この場合は、機器自体にインテリジェンスが埋め込まれることがあります。デジタルテクノロジーの進歩のおかげで、この可能性が大きく高まっています。人工知能専門システムのレベルにまで到達する高度なアルゴリズムが、今では、患者が継続的に着用できる小さな電池駆動のデバイスに搭載されています。

身体的な接触が少なくなった世界では、考慮すべきその他の側面があります。患者が必要な薬を自分で管理できる、というのがその一例です。患者が処方された投与量を遵守しているかどうかを把握することが重要です。事故的にしろ意識的にしろ逸脱があれば、重篤な結果になり得ます。ここでも、テクノロジーが答えを与えてくれます。ケアの場が劇的に変化しても、ケアの義務を満たし、専門家による医療サービスに求められる説明責任を怠ることなく、回答を出してくれるのです。

自宅診断と薬の自己管理

デジタルトランスフォーメーションに抵抗がない業界にとっても、店舗での変化は著しいものとなるはずです。様々な自宅診断デバイスやドラッグデリバリーデバイスが大幅に増えて、市場に投入されることが予想されます。薬の管理の仕方も変わるはずです。Subcujectなどの企業のウェアラブル注射器など、この変化はすでに見られます。この革新的なデバイスを開発した企業は、フィリップス・メディサイズと協力して、液体薬品のデリバリーに必要な圧力を生成するために浸透圧を使用する、ドラッグデリバリーソリューションを製造しました。密閉容器に入ったあらかじめ測量された薬品が提供され、デバイス全体を1日中皮膚に装着することができます。薬品をデリバリーするエンジンは完全に水と塩だけで電力を得ています。モーター、電池、その他の電子部品は一切必要ありません。

これは革新的な設計の卓越した例ですが、大半のコネクテッドデバイスは高度な電子部品を通して可能となります。このビジョンを実現するには、デバイスが費用対効果良く、信頼でき、シンプルに使えるよう設計されなければなりません。デバイスは、タンパープルーフでもなければなりません。医療環境が進化するにつれ、需要が飛躍的に上昇する可能性が高く、サステナブルな形で設計されなければならないからです。つまり、複数回使用できるようにしたり、または、使い捨てモデルでなければならない場合はできる限りリサイクル可能にすることが必要となります。コネクテッドヘルスのテクノロジーを加速するフィリップス・メディサイズは、ここで、急速に変化するデジタル時代の競争力を提供します。

デジタルトランスフォーメーションは、コロナの脅威が収まった後も長期にわたって進化を続けるはずです。デジタルトランスフォーメーションとコロナは引き続きリンクしていくはずですが、トランスフォーメーションを支える推進力はコロナが去った後もとどまることはないでしょう。

医療の分野ではどのような変化が訪れるか、占わなくても予測できます。医療の場が患者に近づくにつれ、病院の一部は縮小することが予測できます。規模が小さくなり、「その場で」行う必要がある治療のみを提供することになるかもしれません。同様に、病院がさらに個人に合わせた医療、より良い結果を追求するためにデータを収集し解釈するデータ・センターの質に力を注ぐ一方で、今は「代替え策」と見られている自宅用医療機器が急速にデフォルトとなる可能性があります。

モレックスとフィリップス・メディサイズは、医療の進歩に積極的に参加し、患者・介護者・医師が必要なデジタルソリューションをリアルタイムで提供し、人々がより健康的でより豊かな人生を送るお手伝いをしていくことにコミットしています。コロナは、すでに進行していた医療の提供方法の根本的な変化を加速した、媒体に過ぎません。モレックスとフィリップス・メディサイズは、このような変化が引き続き加速し、個人や社会に大きな価値を創造できるよう、自分たちの役割を果たすことにコミットしています。