産業とアプリケーション
モレックス社医療部門のグローバルディレクターのイソン・マサーは、次のように述べています。「診断用ウェラブル機器市場においては、この市場の景色を一変するような画期的製品を送り込もうと、医療機器メーカーと技術系の革新的企業が揃って力を入れるという、興味深い動きが起きています。新たなアプリケーションには新たな要件が求められるため、設計エンジニアは、すべてのステークホルダーのニーズと、デバイスの設計コンセプトから商品化と販売規模の拡大までの製品ライフサイクル全般において、彼らのニーズがいかに影響するのかを理解していなければなりません。」
Dimensional Research社の協力の下、モレックスとAvnet社は2022年8月、「診断用ウェアラブル:医療用監視機器の未来」と題した調査を実施しました。調査対象者は、世界各地で診断用ウェラブル機器の設計エンジニアリングに関わっている603名の個人です。この調査では、ウェアラブルの採用のペースと、様々な立場の人々からウェアラブル機器の必要性を訴える声が高まることの影響を理解し、また、ウェアラブル機器の実現を妨げている課題や妥協点を評価するために、様々な質問を用意しました。
ニーズと認知の高まり
診断用ウェアラブルの用途拡大を唱える人の数は増えていますが、その内訳は多い順に、患者および消費者 (61%)、医師その他医療従事者 (47%)、在宅看護者 (44%) となっています。当然ながら、保険業者や、一部の医師やその他の医療従事者、医療技術者達は、現状まだ、使用者の範囲を広げることに躊躇あるいは反対しています。これに対し、今回の設計エンジニアの方々の回答からは、次の5年以内には、血糖値管理 (61%)、姿勢センサーと矯正 (59%)、呼気による疾病検知 (51%)、妊婦の健康観察 (50%)、感染症の監視 (49%) といった用途のデバイスを、消費者が直接入手するようになるだろうという強い期待感が伝わってきます。今後5年以内に販売が見込まれている、新たな医療用ウェアラブルの例としては、糖尿病患者の血糖値記録、睡眠モニター、歩行分析、モバイルCTスキャン、遺伝子異常、視力の衰えを観察する機器などがあります。
根強く存在する設計面の課題
将来に対する楽観論とは逆に、ほぼすべての回答者が、使いやすさに対する消費者の期待 (42%)、シンプルなユーザーインターフェースと充実したユーザーマニュアル (41%)、在宅医療環境が一定ではないことに起因する設計の難しさ (40%)、当局からの認定取得手続きの複雑さ (34%) といった設計段階における課題も挙げています。設計プロセスを進めにくくしているその他の課題は、コスト (38%)、耐久性 (37%)、電源 (35%)、極小型化 (33%)、データ収集 (30%)、および接続性 (30%) などです。実際に回答者の75%が、接続機能に制約があることが、現行ウェアラブルの健康状態の追跡と分析に必要なデータの収集機能に影響していると指摘しています。
今回調査で挙げられた、より小さなウェアラブルを設計する上での制約要因の上位5つは、センサー要素部品の小型化 (40%)、ハードウェア (たとえばコネクター) の小型化 (39%)、電源管理 (32%)、信号品質 (29%) 、熱管理 (22%) でした。原材料に関するイノベーションについての上位3位には、生体適合性、新材料に関する公開済みの機能および信頼性関連データ、および実際の使用環境における「装着テスト」シミュレーションが挙げられています。
関心を呼ぶ環境発電
全体的に、ウェアラブル機能の電源としては、患者の身体 (例: 体温、汗、心拍、動作、等) を用いた環境発電に相当な確信がうかがえます。また、環境発電分野の進展を推し進めるには時間とイノベーションが必要であることは認めた上で、動作 (49%)、体温 (35%)、汗 (13%) が最も有力な電源と回答しています。
世界規模のイノベーションを促進するために求められるコラボレーション
本調査の回答者のうち63%が、診断用ウェアラブルのイノベーションを最大限に推し進めるには、業界、政府、学術団体との間の強力な協働関係が求められると指摘しています。異なる集団間の協働が最も必要と回答した割合は、中国からの回答者が約75%で最大となっており、英国 (52%)、フランス (57%)、ドイツ (59%)、アメリカ合衆国 (61%) の各国の回答者の割合はほぼ等しくなっています。