産業とアプリケーション
電子機器メーカーは実にたくさんの資源を使用しています。1台のコンピュータと1台のモニターを作るには、平均で1.5トンの水、539ポンドの石油、48ポンドの化学物質が必要です(2017年、Wang調べ)。昨年は5億台以上のコンピュータ、モニター、タブレットが消費者に販売され、このような資源の消費は上昇しています。
これは経済的にも膨大なものになります。例えば、半導体製造業界での製造工程における超純水(UPW)の使用については、
製造業者が水道水に1ドルを費やすごとに、超純水にするために20ドルが費やされ、排水を許容レベルに処理するためにさらに10ドルが費やされます(2000年、Infohouse調べ)。
同報告では、大規模施設では1日あたり300万ガロンのUPWを使用する場合があり、少なくとも大規模製造設備で使用される水の30%が特にエッチング工程と溶媒工程に使用されています。
資源効率の面でコスト削減の機会があると思いませんか? その通りです。そのためにはAR/VRメーカーは、現在の進化したアディティブマニュファクチャリング(積層造形法)テクノロジーを利用することができるかもしれません。
サブトラクティブマニュファクチャリングとアディティブマニュファクチャリングの比較
現在の製造業において最も一般的な手法であるサブトラクティブマニュファクチャリングが、資源の需要の根本原因となる場合があります。これは、大きな素材を削除する、あるいは「引き算する」ことで製品を製造する際に発生します。例えば、子供が大きな粘土のシートから小さな正方形を切り出すようなものです。必ずたくさんの廃棄分が出て、小さな断片を拾うのは一苦労です。
現在利用可能なサブトラクティブマニュファクチャリング手法はいくつかあります。最も一般的な手法のひとつがケミカルエッチングです。これは、大きな素材の塊から完成品を切り込むために化学薬品を使用します。
新興の手法であるアディティブマニュファクチャリングは、従来のサブトラクティブ手法によるムダを防ぐソリューションです。前述の粘土の例に戻りましょう。粘土の大きな塊から正方形を切り出すのではなく、容器から粘土を必要な量だけ正確に取り出せると考えてみてください。
3Dプリントなどのアディティブマニュファクチャリングテクノロジーは、現実になりつつあるコンセプトです。自宅で子供の写真をプリントするインクジェットプリンターとほぼ同じ方法で、銀や銅などの金属がナノ分子レベルで基板にプリントまたはスプレーされます。
「サブトラクティブ手法とは逆のアディティブ手法を使うことで、かつては不可能だった製品を開発することができます。今では、当初考えていたよりも少ない資源を使って実行可能なのです。」と、モレックスの高度開発マネジャー、ヴィック・ザデレージは述べています。
その結果?
- 廃棄が少ない
- ムダが少ない
- 労働費が少ない
- 過剰在庫が少ない
水だけにとどまらない懸念
サブトラクティブマニュファクチャリングでは水のほかにも、環境に深刻な悪影響を与える化学物質を使用します。エッチング工程では塩化水素やアンモニアなどの化学薬品に浸けることになり、その後水で洗い流し、その水が下水システムに排水される前に合法的な濃度を満たすまで加工されます。
これらの化学物質の組成についても、業界での精査が強化されています。2003年にRoHS標準が開始されて以来、コンシューマ製品の様々な物質(特に鉛、水銀、カドミウム)が制限され、その他のコンプライアンス基準がいくつか策定されました。大手メーカーの多くがRoHSやREACHなどの基準を超える独自の基準を策定しており、現在合計で180種類の物質を制限しています。このような制限の強化は、対象化学物質の価格を上昇させ、一部のサブトラクティブマニュファクチャリングのオペレーションコストに影響しています。
最先端
「革新的な企業は、アディティブマニュファクチャリングは大いに有望であることを理解しています」と、ザデレージは述べています。「AR/VR開発は、いくつかの画期的なアディティブマニュファクチャリングテクノロジーが進化して生まれる大きなチャンスを与えてくれました。」
ザデレージとそのチームは、ASEP(アプリケーション特定エレクトロニクスパッケージング)と呼ばれる非常に有望なアディティブマニュファクチャリングテクノロジーのひとつに取り組んでいます。
ASEPはナノ分子とスプレーオンテクノロジーを使っており、エンジニアは、現在市場で流通しているものより小さく軽量で高性能な製品を設計できるようになります。「ASEPは、水の使用を通常のサブトラクティブマニュファクチャリングよりも約90%削減でき、資源を有効活用できます。」と、ザデレージは続けて語っています。「RoHSやREACHに使用する素材は基準を遵守した、完全に再生可能な金属と熱可塑性プラスチックです。」
新興のAR/VR市場が、ASEPなどのアディティブマニュファクチャリングテクノロジーの第一のターゲットです。AR/VRアプリケーションは非常に要求が多く、電子的なスペースも極小のため、メーカーには今までにはなかった方法でエレクトロニクスおよび/または回路パターンをコンポーネントに適用することが求められています。ASEPテクノロジーはそれを実現する基礎となり、必要な労働力・化学物質・水を削減し、製造工程数を40%も削減できます。