産業とアプリケーション
諺にもあるように、必要は発明の母です。世界的なコロナの大流行が続く今、これがこれほど真実味を帯びている時代はないでしょう。私生活や働き方のパターンが劇的に変化し、私たちが慣れ親しんできた伝統的なパラメーターも変化しました。ビジネス(特に新規ビジネス)において、これまでは対面でのミーティングや、CESやエレクトロニカのような主要見本市での商談が中心でしたが、出張の選択肢が減ったりキャンセルされたりしたことで、私たちは皆、新たなコミュニケーション手段を取り入れています。デジタルトランスフォーメーションが定着するにつれ、対面での「アナログ」なやり取りからデジタルな関わりへと急速にシフトしています。
ビジネスの世界でいわゆる「ロードウォリアーズ」、アジアでは「宇宙飛行士」(常に空中にいる)と呼ばれる人たちは、いまや主流となっているバーチャルミーティング プラットフォームで、ルーチンと慣行を適応せざるを得なくなりました。しかし、Zoom、Google Meet、Microsoft Teams、そして中国ではTencentといったプラットフォームに大きく依存していることが課題となっています。お客様と話しながら、価値を示すにはどうすればいいのでしょうか?
企業は常に、変革し、適応し、お客様との関係を維持する能力を持つ必要がありましたが、今日、これは過去には不可能だったかもしれない方法で手を差し伸べる意欲を意味します。例えば、販売チャネルは「ニューノーマル」に迅速に適応しなければなりません。通常ならば企業が見込み客を工場や施設、または展示会に招待し、直接会って話をするのが一般的ですが、現在ではこのような面談は不可能である場合もあります。モレックスのような企業は迅速に適応し、「バーチャルショールーム」コンセプトのようなデジタルソリューションを考案して導入し、重要な見込み客やお客様とのコミュニケーションの維持における成功を迅速に証明しました。カスタマーサービスは、このようなデジタルイノベーションと変革の中心にあり、その可能性は無限です。
モレックスは、コロナが蔓延し始めた際に、当初は既存のお客様や将来のお客様との関係を強化する方法としてアジアで考案されたバーチャルショールーム プラットフォームを議題に押し上げました。最初は自動車分野に重点を置き、「自律走行」、「新エネルギー車両」、「電気/電子アーキテクチャー」をカバーする2か国語プラットフォームを立ち上げ、中華圏およびASEAN地域全体のユーザーに、これらの急成長分野の主要情報へのアクセスを提供しはじめました。
稼動開始後、瞬く間に人気を博し、お客様からのフィードバックは熱狂的かつ好意的で、多くの新たなコンタクトやビジネスチャンスが生まれました。販売チャネルの観点からは、あらゆる形態や規模のお客様との効率的なコミュニケーション手段を示しています。
バーチャルショールームで扱われるその他の分野は、データ/通信になるでしょう。焦点となる主な領域は、5G基地局ソリューション、ラックサーバー、ブレードサーバー、ストレージ、アクセスポイント、スイッチ、ルーターなどの企業ネットワークおよびデータ・センター、AAU、BBU、5Gスモールセルなどです。続いて、2021年にはコンシューマー/IoTの両方が稼動開始する予定です。
現在オンラインでの行動の追跡に利用できるリソースには、ウェビナー、インタラクティブなフライスルー デモンストレーション、アプリケーション例などがありますが、これはこのようなバーチャルリソースを継続的に調整・更新・修正・改善できることを意味します。例えばIoTのようなデータソースから得られるお客様のニーズに対するより良いインサイトと理解は、企業がそれに応じて提供する製品を調整し、より幅広い聴衆に対応するために新たな製品やサービスを導入できることを意味します。
このような変革的デジタルツールは、企業経営にもパワフルな上流効果を及ぼします。アナリティクスに焦点を当て、マーケティングなどの分野で大量のビジネスデータを統合し、これを製品設計にフィードバックすることで、バーチャルインタラクションの影響が全体に及ぶようにします。
ポジティブな「カスタマーエクスペリエンス」は、すべての企業の対外的なインタラクションの解決策として位置付けられるかもしれません。このバーチャルショールームのコンセプトは、デジタルトランスフォーメーションが企業とお客様、パートナー、見込み客との関わり方をどのように形成できるかを証明するものです。確かに、私たちは世界的なパンデミックの真っただ中にいますが、このコンセプトはすでに、将来のカスタマーインタラクションのツールとして大きな可能性を示しています。
モレックスはすでに、分解アニメーション、インタラクティブ フライスルー デモンストレーション、アプリケーション例などのツールを備えたウェビナーやバーチャルショールームのコンセプトを、お客様とのディスカッションに活用しています。最近では、モバイルアクセシビリティによって、これはより簡単になりました。このようにデジタルデータの新たな情報源を活用することで、企業は顧客の行動に対するより深いインサイトが得られ、高度なパーソナライゼーションとアクセス性の向上を通じて、それに応じてカスタマーエクスペリエンスを調整できます。
デジタルテクノロジーの進歩により、世界のビジネス環境は縮小の一途をたどっていますが、地理的な観点から見ると、デジタルトランスフォーメーションは世界各地で顕著な違いが見られます。例えば中国では、5GワイヤレスネットワークやAIなどのデジタルテクノロジーの開発を加速させるため、政府は今後6年間で1兆4,000億米ドルをデジタル経済に投資する計画を立てています。技術大手のアリババグループとテンセントホールディングス社は、クラウドコンピューティングとデータ分析主導のソリューションを提供し、中国における広範なデジタルインフラの構築を支援する一方、ファーウェイ社は5Gネットワークインフラと5GおよびIoTを活用した開発プロジェクトの開発を続けています。
中国企業は今後3年間で、デジタルトランスフォーメーションに最大1兆米ドルを費やすと予想されており、モレックスが実施したバーチャルショールームのような取り組みは、相互利益の好例です。モレックスのような企業がデジタルトランスフォーメーションを採用する重要な理由は、業務効率化、カスタマーエクスペリエンスの向上、製造の柔軟性・品質・スピードの向上、省エネルギー、新たなビジネスチャンス、リスクの軽減にあります。
いかなるデジタルトランスフォーメーション イニシアチブの場合でも、顧客のボトムラインは「私はそれから何を得られるのか?」でなければなりません。その点、企業がデジタルトランスフォーメーションを取り入れて需要の変化に適応し、顧客との関わり方を変革し、変化をシームレスに実行できれば、急速に変化する世界で将来的に成功する可能性を定量的に高められます。