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EV充電に関する主要2課題の解決

電気自動車(EV)業界で持続的な成長が実現されつつある一方で、EVを支える充電インフラはまだ開発の初期段階にあります。高出力で高品質なEV充電装置の提供に向けた技術革新は、自動車メーカーが目指すEV普及拡大のビジョン実現のために不可欠な要素と言えます。

自動車メーカー各社における電気自動車 (EV) の車両設計の改善が進み、世界の国々でEVがより広く受け入れられるようになるなど、EV市場はまさに急拡大しようとしています。UBSインベストメントバンク によると、世界の新車販売台数のうち、EV車が占める割合は、2025年までに20%、2030年までには50%に達すると予測されています。

しかし、このような数値的な見通しとは別に、EV化には過酷な現実もあります。たとえば、現状では航続距離が限られている、充電時間が長くかかる、公共の充電設備が不足しているといった理由で、EV車の購入をまだ様子見している消費者は多いのです。一方、政府による充電インフラの増設努力や、最近ではバッテリーテクノロジーの改善が進んでいることを考えると、EVの普及が大きく進む可能性もあります。

充電時間を短縮

まず、電気自動車 (EV) に対しては、ガソリン車の給油時間と比べて充電時間が長い、という批判が繰り返されてきました。

EVの充電にどれほど長い時間かかるかは、充電方法や車両の種類、製造時期によってまちまちです。アメリカ合衆国運輸省によると、個人の住宅に設置するタイプのレベル1の充電設備を使用する場合が最も遅く、充電には40~50時間が必要です。充電レベル2は個人宅と商業用の両方があり、充電待ち時間は4~10時間です。最速の充電方法が、事業者向けの直流式の急速充電 (DCFC) で、このDCFCを利用すれば、20分から1時間で80%の充電が可能です。

自宅に充電器があれば便利ですが、消費者は明らかに、スピーディーな充電の方を好むようです。2020年のFuel Instituteの調査によると、半数以上が、追加でお金を払ってDC急速充電の方を使いたいと回答しています。

メーカーは消費者が急速充電を求めていることをよく知っており、早急に充電設備を拡充できるよう力を入れるようになっています。そうはいっても、充電は単純に速ければよいというものではありません。あまり急速に充電すると、バッテリーに負荷がかかることで寿命が縮まり、性能が低下して、最悪の場合はバッテリーがほぼだめになってしまうおそれがあります。加えて、基本的に、バッテリーを長く使うほどに充電速度は落ちていくものなので、充電出力が高ければ高いほど速く充電できるとも言えません。

バッテリーの構成も充電時間に影響する要素ですが、バッテリーの設定はメーカーによって違うどころか、同一メーカーでもモデルによってあり得ないくらい違う造りになっています。バッテリー構成はメーカーにとって極めて重要で、EV車種ごとの差別化つまりスポーティな車種やとにかく安全性を最重視した車種等の違いを出すためにも、それぞれに構成を変えたものが使用されています。

一部のメーカーでは充電ステーションの拡充のために投資を行っていますが、これなどには各社のバッテリーの特性が関係すると考えられます。たとえばテスラは、自社EVをわずか15分で充電するスーパーチャージャーネットワークを米国内に設置しています。

充電器と相性の良いバッテリーをつくる

バッテリー構成のバリエーションの幅が大きい理由は単純で、それは、バッテリーには依然として大幅な改善が必要だからです。たとえば、今はまだ、すべてのEV車がDC急速充電に対応しているわけではなく、急速充電インフラのメリットはじゅうぶん行き渡っていません。

バッテリーに関しては、急速に進む充電インフラ拡充のメリットをEV車が完全に享受できるよう、実験とイノベーションが必要であることは明確です。ただ、EV用バッテリーの製造にはこれまで、難しさとコストという課題がついて回っていました。しかし、このような状況にも変化が見られます。

たとえば、バッテリーセルから監視システムおよび各種ポートへの接点構造に関しては、新たにフレキシブルプリント基板 (FPC) が使用されるようになっています。革新的なFPCを使うことで、ミスを伴いやすい手作業による数珠つなぎの接続作業が不要になります。FPCを使用した構成は、個別配線よりも劣化に強く、軽量であることから輸送コストの抑制にもつながります。

バッテリーをより短期間かつコスト効率に優れた方法で製造することで、メーカーは、新たな車両設計の方により多くの時間とお金を割くことができるようになるでしょう。さらに、安全な急速充電や、バッテリー寿命の延長を可能にする新たな技術を試みるための費用に回すこともできるようになると考えられます。

充電用インフラストラクチャの拡充

先に述べたような制約があるとはいえ、EVの航続距離は大きく向上しています。現在、多くのEV車の航続距離は、320~480kmほどになりました。

では、何が問題か?現状では、いったん遠出をすると、次の充電場所がなかなか見つからないという問題があります。充電設備の少なさはEV普及の障害となっており、デロイトトーマツの2022年グローバル自動車消費者意識調査 (2022 Global Automotive Consumer study) によると、EV車の購入を検討しないことにした理由として、14%の消費者が、利用可能な充電ステーションが不足していることに対する不安を挙げています。

このような形勢を変え、充電インフラを拡充するには、投資が必要です。前述の、テスラによる国内を網羅するスーパーチャージャーへの投資およびパイロットプログラムは、単なるスタートにすぎません。EV市場が力強く発展するには、もっと充実した充電ネットワークが必要になるでしょう。

New Business Models 新たなビジネスモデル

何か経済的な力が働けば、新たな充電ステーションをより早いペースで増えていく可能性もあります。たとえばアメリカ合衆国エネルギー省は最近、合衆国の政府機関と民間との協調による路車間 (V2X) インフラの建設に関する了解覚書を発表しています。これにより双方向充電機能を備えることで、日中は住宅や職場に置いたモバイルバッテリーに蓄電をし、電力需要のピーク時間帯には電力網に電力を戻すことが可能になります。

充電サービス事業者の中には、充電ステーションで別の収益を得る新たな手段を見つける会社も出てきています。たとえば、充電場所にデジタルスクリーンを配し、充電待ち中の客向けに近くのレストランやショッピングセンター、劇場などのプロモーション広告動画を流している事業者もいます。また、充電器側にカメラを搭載し、性別や年齢層、利用している車のメーカーやモデルといった顧客データを収集することを考えている業者もあります。ほかには、地元スポーツイベントの中継や、エンタメ、その他販促用コンテンツを表示すること等も考えられるでしょう。

事業者にとっての充電キオスクとは、目を惹くデザインやメッセージを顧客に見せることで、会社のイメージアップの機会を提供する役割も同時に果たすものになります。たとえば自動車メーカーの中には、「極上のラグジュアリー」、「先進テクノロジー」といった自社車両の価値観をデザインした充電キオスクを、ディーラーに設置し始めているメーカーもあります。

充電器の外観デザインは内部に搭載された装置の形状に大きく左右されますが、デザインの自由度も上がってきているようです。弊社の例では、さまざまな外観形状、寸法、塗装を選択可能なバスバーの設計を行っており、充電器を通して充電ユーザーに伝えたいイメージに合わせた外観仕様を実現すると同時に、生産性も考えた柔軟な製品づくりが可能です。

EV用バッテリーの充電とインフラストラクチャには依然、多くのハードルが残っていますが、前向きな勢いがあることは明らかであり、メーカーやサプライヤー、周辺企業それぞれが自由なアイデアやデザインで飛躍していける、今後が楽しみな領域であると考えています。

 

 

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