メインコンテンツにスキップ
クロストラフィック

センサーフュージョン: 車両が人のように世界を感知

自動運転、ADAS、電動化には、路上における安全性を強化するために改善型の車両センシングソリューションが必要です。車両は、視覚的キュー、聴覚的キュー、触覚的キューが入り混じる中で、人間が行うように車両周囲環境を見抜く必要があります。

読了時間:5分

自動車の設計者は現在、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転車、電気自動車(EV)の市場の発展に関連するさまざまな課題に直面しています。ADASと自律走行車のコンピューターは機能を急速に強化させていますが、この機能に必要なデータの提供にはセンサースイートが必要です。設計者は、センサーパッケージの機能に向けた車両の自律システムのニーズに取り組み、車両が安全かつ効率的に機能できる十分な情報を提供する必要があります。また、複数のアプリケーションを用いてセンサーを選択すること(「センサーフュージョン」と呼ばれる機能)により、センシングデバイスに起因するスペースと重量を最適化する必要もあります。

ADASテクノロジーが前進し、自動運転機能も進展しているため、車両センシングが視覚能力やレーダー能力の段階では終わりにならないことがますます明確になっています。未来の車両には環境をモニタリングできる自動システムが必要になることから、車両のセンシング能力に対する要求が高まっています。こうした車両は、視覚的キュー、聴覚的キュー、触覚的キューが入り混じる中で、人間の行動が発生する車両周囲環境を見抜く必要があります。これらのさまざまな情報の組み合わせにより、車両はその環境の全体像を構築し、それに応じて適切なアクションを取ることができます。

EVの爆発的な普及も、乗客の快適性や安全性の実現に向けたロードノイズの管理に対する新たな要求を引き起こしています。内燃エンジンを持つ車両において、このエンジンは比較的一定レベルの背景雑音を発生させます。これは、イライラする、あるいは気が散るロードノイズをマスクする上で役立ちます。内燃エンジンがなければ、EVの乗客はロードノイズの感知レベルが高まり、不快感とイライラ感が強まることになります。その結果、ドライバーの集中力と安全性に悪影響が及ぶ可能性があります。

視線方向(line-of-sight)の域を超えるセンシング能力

運転支援センシングにおいて最も一般的な手法は視線方向センサーです。こうしたセンサーには、カメラ、レーダー、LiDARが含まれますが、これらが連携して車両の視程に入る障害物やハザードを検知します。これらのセンシング手法は効率的なADASや自動運転車テクノロジーにとって非常に重要ですが、全体像を提供することはできません。

聴覚と触覚は人間のドライバーにとって有益な情報であり、これは自動運転システムにも当てはまります。外付けのマイクロフォンは、視線方向センサーが感知しにくい、あるいは感知できないさまざまな潜在的ハザードを検知することができます。聴覚によって、緊急車両などの他の車両を、それらが視界に入るよりもずっと前に検知し、三角測量を行うことができます。舗装の劣化や砂利面といった道路の悪条件は、視覚的キューではなく聴覚的キューと触覚的キューによって捕捉されるロードノイズを分析することでより優れた評価を行えます。カメラは暴風雨を検知できますが、その深刻度は聴覚を使って判断する方が簡単です。

「聴覚と触覚は人間のドライバーにとって有益な情報であり、これは自動運転システムにも当てはまります。」
カート・デコスキー
事業開発エンジニア
モレックス

また、これらのセンサーは、継続的なコンディション・ベースのモニタリングによって安全性を改善することができます。車両そのものが発生させる音や振動を分析することで、自動システムは問題や不具合を早期に検知し、それらに対処することが可能です。これはADASに役立ち、自動化車両にも必要です。こうしたセンサーは、その運用に伴って発生するすべての課題に対処するための対策を講じることができなければなりません。

聴覚に加え、ドライバーは、車両が何かに衝突した(または衝突された)場合や、車両に薄氷などで何らかの異常な力がかかっている場合、触覚でそうした状況を検知します。精密な加速度センサーを使用して車両が知覚に触覚を追加できれば、車両のシステムは、視覚センサーでは検知できない可能性のあるさまざまな刺激に反応できるようになります。車両は衝撃の方向や力を検知することで、ブレーキをかけるか否か、警報を鳴らすか否か、単純に出来事を記録してレビューやメンテナンスに回すかを把握できます。この機能は自律走行車にとって特に重要ですが、もっと従来型の車両の価値も高めます。

センシングの改善で運転をもっと安全に

聴覚と触覚を持つセンサーの能力は、高速道路における安全性の強化に役立ちます。これらの新しいセンサーが、ドライバーの安全マージンと状況認識を改善し、「車載データ・センター」、つまり自律走行車に情報を提供する方法は多数存在します。

車内外のマイクロフォンを組み合わせることで、リアルタイムのロードノイズキャンセリング(RNC)を実現できます。これは、予測的なアクティブノイズキャンセリング(ANC)を超える改善ですが、周囲の音の「打ち消し」をサポートする能力といったいくつかの側面はANCと共通です。リアルタイムかつセンサーベースのRNCは、車両の外の予測不能な音を打ち消すことができるため、予測的ANCを改善させます。これらは、エンジン音だけではなく、劣化した舗装や風といったノイズ源から発生する可能性があります。小川のせせらぎや優しい雨音を思い出してみてください。こうしたノイズは鎮静効果をもたらし、ドライバーの危険な疲労、すなわち「高速催眠現象(ハイウェイヒプノーシス)」を引き起こす可能性があります。こうしたノイズを軽減することで、RNCは車内の静音性や快適性だけではなく運転の安全性を高めることができます。このテクノロジーは特にEVにおいて重要です。EVは、内燃エンジンによる背景雑音の抑制が不十分だからです。RNCテクノロジーがなければ、EVは乗客に高レベルの明確なロードノイズを伝え、ユーザーは不快感とイライラ感を感じる可能性があります。

内部・外部マイクロフォンとRNCセンサーを用いたアクティブノイズキャンセリングは、騒音レベルの非常に高い建設用トラックや農業用車両、航空機などに使用することができます。これらのアプリケーションにおいて、ノイズキャンセリングは疲労防止に貢献するだけではなく、環境騒音レベルの抑制によって操作者の聴覚を保護する上でも役立つ可能性があります。センサーを使用して音をリアルタイムで測定することによってこうした手段の有効性が高まり、室内のノイズが操作者に与える悪影響を抑制できます。

外部オーディオセンサーは、ADASが車両の周辺環境の完全な状況を構成する上で支援します。これらのマイクロフォンは、潜在的なハザードの方向と動きを三角測量することで「音を可視化」し、車両の視覚センサーとレーダーセンサーでは確認不可能なギャップを埋める上で役立ちます。緊急車両の接近を正確に測定したり、死角に隠れている車両を追跡したり、こうしたセンサーは貴重な情報を提供することができます。

自律走行車はセンサーを活用してその環境を監視し、聴覚センサーと触覚センサーが重要な役割を果たしています。マイクロフォンは、カメラとレーダーが感知できる内容のギャップを埋め、その車両の周囲の全体像を構成することにより、同じような形でADASアプリケーションに情報を提供します。タッチセンサーによって車両は衝撃や外力に反応することができ、これは自律走行車両にとって重要な機能です。車両が高度なADAS能力を獲得し、その周囲を自動で監視し始めるにつれて、こうしたセンシング能力は重要な安全マージンを提供するようになるでしょう。

コンディション・ベースのモニタリングを通じたマシンの健全性の改善も車両の安全性向上に役立ちます。多くの場合、聴覚センサーと触覚センサーは、エンジンやシャーシのノイズの変化を分析することで機械的欠陥をドライバーや他のセンサーよりも早期に検知できます。これらのセンシング能力は、不具合のある、あるいは摩耗したコンポーネントを早期に検知することで車両のメンテナンスや修繕にかかるコストを削減しつつ、路上での危険な不具合の発生件数を抑えます。

車両設計におけるセンサーフュージョン

センサーフュージョンの概念は、車両の個々のセンシングデバイスが複数の機能を持ち、さまざまな機能や能力を実現させつつスペースと重量を最適化するというものです。この多機能性は極めて重要です。自律走行車やADASテクノロジーのセンシングニーズにおいてますます多くの情報が要求されていますが、個々のセンサーの数を無限に増やすことは不可能です。設計者は、情報を複数のシステムや機能に提供できるセンサーを使用する必要があります。

多機能の聴覚センサーと触覚センサーを設計作業に組み込むことは、自律走行車やADASを実装した車両の安全性と能力を高める上で極めて重要です。エンジニアがこのようなテクノロジーを設計プロセスに組み込むことが可能なタイミングが早ければ早いほど良いです。センサーエンジニアリングにおける確かな基盤および顧客志向の順応性と柔軟性を両方とも提供する企業と連携することが重要です。現在路上を走行する車両に100万個を超えるセンサーを提供しているモレックスは、エンジニアリングの特殊な専門知識、コラボレーティブな設計の柔軟性、グローバルな製造拠点を活かし、車両センシングの課題に対応するカスタマイズソリューションを提供しています。

モレックスはSensors Converge 2023において、新しいPercept製品ラインのRNCセンサーがさまざまな路面の影響をどのように検知・解消しているか実証するデモを行っています。ご参加いただくと、多様な路面を走行する車両で、このセンサーの感知内容と作動しているノイズキャンセリング手法間の相関関係をご覧いただけます。ノイズキャンセリング機能が組み込まれたドライバー席のサンプルも展示されており、参加者はロードノイズの緩和をご自身で体感していただけます。

複数の知覚から得られるフィードバックを取り込むことで車両が人の行動の世界を感知できるようにするテクノロジーは、自動運転に向けたこの道筋の次なる重要なステップです。モレックスのエンジニアはコンサルティングを提供し、Perceptの聴覚センサーと触覚センサーが車両のセンシング能力を強化できる方法をOEMにご理解いただけるようサポートします。つながって完璧なセンサーパッケージを構築しましょう。

関連コンテンツ


オートモーティブの接続性

コネクターで自動車のさまざまなニーズに対応

オートモーティブ用コネクターは、絶え間ない振動、極端な温度、予測不可能な天候パターンにさらされることから、最も厳しい条件下でも確実に動作する必要があります。モレックスは、常に狭いスペースにおいて機能性とデータ速度を高める先進的なオートモーティブ接続ソリューションでお客様を支援します。

頑丈で信頼できるコネクター

DuraClikコネクター

モレックスのDuraClik 2.00mmピッチの電線対基板用コネクターは、端子リテーナーオプション付きで、高い防振性が必要なアプリケーションに安定した嵌合と高いPCB保持力を提供します。

 

 

シェア

関連コンテンツ


関連製品


アクティブノイズキャンセリング(ANC)