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信頼性が試される:データ・センターの精度と性能を徹底するためのカギ

ヴィヴェク・シャー著
新製品開発ディレクター

クラウドコンピューティングの発展、モノのインターネット(IoT)、日常のテクノロジーのモバイルデバイスの蔓延によって、革新的で極めて効率的なデータ・センターがかつてないほど必要となっています。ますます複雑になる現在のデータ・センターが、機敏で適応力を備え、分配され効率的かつインテリジェントであることを徹底することは、歴史に残るほどの課題です。しかし、高温・高速で作動する、ほぼ近未来的なそのような構造のなかで、高いレベルの精度と性能を達成し維持するには、過小評価されがちでありながら重要な試験の分野を慎重に考慮することが必要不可欠です。

データ・センターの試験は、最適な性能を確実にする唯一の方法ですが、一体何を試験しなければならないのか?という質問が生まれます。データ・センター内の個々のデバイスは、さらに広い環境で役割を担っていることが多々あり、そこでは例えば、温度に幅があるなどの状態に晒される可能性があります。このようなデバイスに対する適格性のレベルは、過酷な要素に晒されないデータ・センタークローゼットに対して設計された製品とは著しく異なります。

データ・センター内で生存するよう設計された製品は、全拠点で究極の信頼性を実現する責任があります。ほぼまったく遅延なくデータを送受信し、「1」と「0]をチップからチップへ、ボックスからボックスへ、スイッチからスイッチへと守備よく送信することができなくてはならないからです。それを、ダウンタイムを避け、データ・センター内の能力を最適化しながら行わなければならないのです。これらは、ラックが活用されていない状態または非効率的に利用されている状態を避け、データとシグナルのインテグリティが維持され、遅延なくほぼリアルタイムの速度で送信されることを徹底するために必要な、信頼性の高い製品でなくてはなりません。つまり、データ・センターのパフォーマンスには、コネクターやケーブルアセンブリーの信頼性が重要だということです。

データ・センターの故障の高額コスト

データ・センターの信頼性は、稼働時間と低遅延の達成を重視しているので、このような製品を設計する際には、長期的な信頼性と効率性を追求しなければなりません。各ケーブルの性能やその性能の一貫性に頼ることができるのは事実ですが、エンドユーザーにとっては、どのような利点が得られるのか?ということが疑問となります。試験の利点を実証する最もシンプルな方法のひとつは、試験をしていない製品、もしくは不十分に試験された製品がオペレーターの効率性に与える影響を見ることです。

例えば、サーバースイッチに使用されるよう設計された製品が十分に試験されておらず、大量のサーバーの電源が入った後になってから間欠性の問題が発覚したら、一旦設置した後でのコンポーネントまたはラックの変更または修理にかかるコストは、ダウンタイムの面だけではなく人件費の面でも莫大です。ガイドラインでは、エンジニアが「ホットアイル」で作業できる時間は15分間であり、最低1時間のリカバリーが定められた作業/休憩のスケジュールとなっています。これを5000のラックがある拠点全体に拡大すると、稼働時間への影響は莫大となります。キャパシティを増大させるために時間を費やすべき熟練のオペレーターが脇に追いやられ、設置するかなり前に対処できた問題、対処されなければならなかった問題に取り組むことになります。

データ・センターとエッジハードウェア向けのオープンハードウェアプラットフォームを重視した革新的な取り組みであるオープン19プロジェクトは、どのようにしたらデータ・センター運営の効率性を改善できるかに対処しています。ハードウェアの相互運用性の改善は、この取り組みの主旨を裏付けています。策定されたハードウェアの基準によってコンピュータ、ストレージ、ネットワークのメーカーが、独自の競争力のある知的財産を守りながら、他を一線を画すハードウェアソリューションを作成することが可能となります。オープン19のもとで提案されているようなより標準化されたアプローチは、通常、素早いスワップアウトと起動時間を重視しています。より革新的なアプローチを使うことと、従来的なケーブルを使うことを比較すると、約6時間かかるところを75分ほどに短縮できます。

狭い製品に注力するだけでなく幅広く考えられたことで、112Gbpsの液体冷却システムの潜在的な利点についての調査が推進されました。信頼できる製品性能の重要性は、この革新的ソリューションでさらに強調されました。

さらに、より大きな帯域幅の追求が通信市場の主流となっている一方で、顧客は、次のデータ・レートの跳ね上がりに対してシステムを冷却するよう経済的に苦心しているかもしれません。先見の明がある人は、サーバー側でもスイッチでも、システム内でPCBA構造の大半を交換し、システム設計のより優れたモジュラー性と柔軟性を可能にする方法を模索しています。このアプローチには、空気の流れを妨げる素材の一部を排除することや、温度の問題を軽減するためにバイパスを導入するなど、可能性のあるテクニックを追加することが含まれる場合があります。

「温度が低いほど良い」というアプローチを採った組織は、ラックあたりのエネルギー消費を全体で25%も削減できたと報告しています。これを1万ラックのデータ・センターに置き換えると、年間で7桁という莫大な節約が可能となるのです。

最適なシグナルインテグリティを実現する設計

データ・センターには無数の回路やコンポーネントのインターフェイスが集まっています。この環境では、インピーダンスの移行や不適合が電子的な性能に影響を与えます。つまり、一貫して正しく作動する製品を製造するためには、製造を特定の許容範囲で維持しなければならないということになります。

これを達成するにはどうすれば良いのでしょうか? モレックスは随時、製品を製造するためのプロセス・プロトコル・素材を継続的に革新しています。それはすべて、製品設計の複雑さを軽減しながら、厳しい特定の許容範囲を遵守する必要性によって推進されます。

あるチップが1または0を別のボックスの中の別のチップに送信する際には、その1か0が受信する側のチップによって極めて明確に理解されなければなりません。そして試験を行なって、特定の許容範囲内で設計された通りに製品が作動することを保証します。このプロセスは、どの部品でもどのロットでも、製品が一環して顧客の要件に合うように作動することを徹底します。そして、パケットロスやシグナリングを妨げる間欠性などのばらつきがあってはなりません。

より多くのデータを演算する

イーサネット側と、ネットワークスイッチとサーバースペースの間のサーバー内の両方で、より広い帯域幅になることでチップがより強力になると、2つの異なるデバイスがデータ・レートを駆動します。その結果、少ない時間で多くのデータを処理するプロセッシング力が高まります。また、シグナルの送信とスループットが増加し、高速ネットワークとアプリケーションを作動するために必要なレベルの性能が向上するということでもあります。

このような加速するデータフローを良好に送信する構成要素となるのは、ケーブルかPCB、あるいはプロセッサーとチャネルの末端の間のパスに固有のコネクターです。目的は、受信(RX)側へのコネクターとケーブルを通して、このような構成要素の間のシームレスな送信を徹底することです。

このことは、革新的な相互接続の専門家にもかなりの要求を課し、製品のわずかな機械的許容範囲を保証するなど、含まれる多数の要素をどのように扱い、遵守するかを非常に正確に行う必要があります。データ・センターの場合は、機械的な差異が究極的には電子的な差異を意味します。

データ・センターを大きな視野で見ると、いくつかの重要な考慮事項が挙げられます。データの連続性に問題があったらどうなるのか? 品質の観点から見ると、ラックにますます多くの部品・製品・ケーブル・スイッチが徐々に構築されると、スイッチを切り替えることで急に間欠性の問題や、何らかのシグナル損失の問題が発生した場合に、データ・センターには何が起こるのでしょうか?

この現実的なシナリオでは、通常、欠陥のあるサーバーを交換し、欠陥のあるスイッチを交換し、ホットアイルのケーブルを抜き、ケーブルを再度差し込み、ラックを再度試験しなければなりません。技術者が貴重な時間を、実際に機器をインストールして新しいアセットとキャパシティを立ち上げて起動するために使うのではなく、ホットアイルで費やさなければならない場合は、当然ながらデータ・センターの生産性が落ちます。

価値ある学び

上記で概要したようなシナリオを避けるためには、接続製品の一貫性が必要となります。業界のベンチマーキングでは、電子的な不一致によって発生し得る多くの問題が明確に定義されました。これは、今後の指標となります。

このような重要な製品の製造におけるイノベーションの重要性は、かつてないほど高くなっています。モレックスの積極的なデジタルトランスフォーメーションの取り組みによって、冷却要素が適切に機能するようにしながら、特に最小化コンポーネントに対して一貫性を実現するグローバル製造戦略が生まれました。当社の複数年にわたる多額の投資によって、プロセスとリソースを微調整し、自動化製造を導入しながら量と一貫性の両方を達成することができました。

コネクティビティとはインテグリティ、何よりもシグナルと電源のインテグリティを実現するものです。データ・センターのインテグリティが維持されたら、様々な複雑なシステム全体のパフォーマンスが維持されます。

安全で効果的なデータ・センターソリューションは、製造されるすべてのケーブルアセンブリーのすべてのシグナルペアを網羅する包括的な試験を実施し、業界をリードする一貫した品質管理を行うことによってのみ可能になります。そうすることで顧客は、それぞれのケーブルの性能とパフォーマンスの一貫性を信頼することができるのです。

この厳しい試験を行うことで、顧客が自らそのような試験を行わなくて済むようになります。これは、時間と費用だけの問題ではありません。光ケーブル配線のコネクティビティやターミネーションなど、技術的に複雑な問題は専門家、つまり、比類なきコネクティビティ体験の歴史を構築し続けているモレックスのエンジニアの手に委ねられます。

その結果は? 効果的に実装を管理すること、つまり欠陥のあるケーブルのトラブルシューティングを後で行わなければならないリスクを排除しながら、直ちにインストールできるようにすることは、稼働時間を最適化し、顧客の時間と費用を節約し、市場投入まで、ROIまでの時間を加速します。