産業とアプリケーション
原材料の供給から顧客への配送まで、サプライチェーンの旅は、シンプルなリクエストであっても予期せぬ複雑さと思いがけない出費につながることがよくあります。時間どおりの実施とカスタマイズ可能な配送オプションに対する顧客需要は年々増加しています。グローバルで複雑なサプライネットワーク全体でコストが上昇し、利益率は常に圧迫されています。さらに、コスト制御のための可視性とインサイトが欠如すれば、運用コストは上昇し、収益を圧迫していきます。
サプライチェーンは、期待どおりの価値を生み出していますか? 顧客サービスレベルを向上させつつコストを削減することは、顧客体験と収益性を改善する素晴らしい方程式です。しかし、このネットワークの方程式の変数を1つ変えた場合に、他の数字、または他のすべてにどのような影響があるかを理解しておく必要があります。サービスレベルを上げると、そのレベルを維持するために必要なエンドツーエンドのネットワークコストが上昇することがあります。供給拠点から顧客までの輸送距離を短縮する方法を検討している企業の場合を考えてみましょう。たとえば、在庫の保管場所を増やす必要がある場合、倉庫の場所や在庫の増加のための追加の運用コストがかかります。ここで必ず検討しなくてはならないのが、「追加コストはサービスレベルの向上に見合うか」という点です。
サプライチェーンのパフォーマンスを把握するには、ネットワークへの深い可視性が求められます。検討中の具体的変更がサービスレベルの向上とコスト削減につながるのか、それとも最適な納品パフォーマンスとサプライチェーンの機敏さには向上が見られないまま、コストだけが増加するのかを包括的に把握する必要があります。
これが、ネットワークのモデリングと最適化が重要となる理由です。これらをもとに、次のようなビジネスクリティカルな命題について答えを導き出すことができます。
- 当社のネットワーク拠点は、顧客に最適なサービスレベルを提供できるよう整備されているか?
- 複数ある物流センターのうち適切な場所に製品の在庫を確保しておくには、どうすればよいか?
- 顧客の声を反映したサプライチェーンソリューションを実現することで、顧客の要件を満たし、ロイヤルティを高めているか?
実世界におけるネットワークのモデリングと最適化 – モレックスの実例
ネットワークのモデリングと最適化が必須であることを例証するため、当社のグローバルロジスティクスチームが、モレックスのサプライチェーンのハブネットワークに関するオプションをどのように評価したかを見ていきましょう 1万8000社のサプライヤーと取引し、38か国に80以上の工場を持つモレックスは、グローバルなサプライチェーンの複雑性についての優れた例となるでしょう。当社ネットワークの全容を把握するために詳細な調査を行った結果、複数の地域の顧客に製品を供給するにあたって、東から西へ向かう、起点と終点のペアが明らかに存在することが分かりました。私たちは当社のサプライチェーンネットワークが顧客ニーズに合致しているか把握したいと考えました。また、製品在庫が適切な場所に保管されているか、保管されていない場合にはどの程度の物流コストが発生するかについて、詳細なインサイトを得ることを希望しました。さらに、複数のサプライチェーンハブが必要なのか、それとも1か所で目標とするサービスレベルを達成できるかを評価したいと考えました。
私たちはいくつかの主要な想定に基づくオプションをモデル化しました。たとえば、あるシナリオでは、サプライチェーンのハブを廃止し、ネットワーク全体を再構築した状態を想定しました。別のオプションでは、ネットワーク全体を単一のハブに接続し、カスタマーサービスレベルにどのような影響があるかを評価しました。また、1つのハブで起こった障害がネットワークに影響を与えるというシナリオを含め、リスクレベルとそれを軽減する方法についても検討しました。
移転を検討すべきハブの候補を特定するモデルも策定しました。このモデルでは移転の影響が示され、サプライチェーンの重心を特定の顧客に近づけた場合のコストへの影響についてなどの回答を得ることができました。そして、配送時間の短縮に対応する影響はどのようなものだったでしょうか? 結果は非常に情報価値のあるものでした。当社の広範なベースラインネットワークを活用した場合と比べ、サプライチェーンハブを1か所とした場合、2か所とした場合の財務的影響を明確に把握することができました。
そこからインサイトを得られました。想定されるサービスレベルの向上、想定の移転は関連コストなどを考慮すると、この変更を正当化するほどの大きなメリットはないことが判明したのです。なぜでしょう? ハブを顧客の近くに移せば距離は短くなりますが、製品が納入される西海岸の港からの陸路距離は大きくなります。費用対便益を考慮した効率的な最適化には、変更なしが正解でした。また、モデリングにより、移転後のハブで障害が発生した場合、カスタマーサービスレベルに影響する潜在的なリスクも特定されました。その結果、今回のケースでは、モレックスネットワークの変更は正当化されませんでした。別の顧客に同様のシナリオを評価する際にも、同じプロセスが考慮されました。
すべては顧客に帰結
モレックスのネットワークのモデリングと最適化への取り組みは、すべて同じ命題、つまり、サプライネットワーク全体でサービスレベル、機敏さ、コストを改善し、顧客の期待に応えるにはどうすればよいかという命題に帰結します。B2B(企業間取引)のプロフェッショナルは、私生活で享受しているレベルと同じサービスレベル、つまり、高度な「パーソナライゼーション」と、より機敏なサプライチェーンソリューションを期待しています。企業は勝ち残るために、卓越した柔軟性、スピード、機敏さ、レジリエンス、そして障害発生時にリアルタイムで対応する、最適化されたネットワークを備えた顧客中心のサプライチェーンで対応する必要があります。
ネットワークのモデリングと最適化は、今日のグローバル経済において競争力を維持しようとする企業にとって、まさに必要不可欠なものです。これこそモレックスが、サプライチェーンの基礎となる機能として、ネットワークのモデリングと最適化をサポートするシステム、知識プロセス、専門知識を持つ担当者に投資してきた理由です。