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氾濫する通信プロトコルの中でインダストリー4.0に向かって確実に進化する

著者:ディーン・ドネリー
グローバルビジネス開発マネージャー

新世代の有望な通信技術であり、リアルタイムに近い速度でデータの収集と処理を行うインダストリー4.0により、産業オートメーションは大転換の時を迎えています。実質的に瞬時に利用可能になるこのデータは、超効率的で高度に接続されたインテリジェントマニュファクチャリングの新たなエコシステムの形成を推進します。確立され、関連付けられた業界の通信プロトコルの増殖とその伝統とは対照的なインダストリー4.0は、旧バージョンのフィールドバスなど従来型の産業オートメーションシステムの目には脅威のように映るかもしれません。それではシームレスなインダストリー4.0の未来に立ちはだかる障害とは何でしょうか?

おそらくどのシナリオでも避けがたい移行期間は、心理的な躊躇という自然な要素が関係しているでしょう。インダストリー4.0については、多くの相互に作用する要因が潜在的にこれを深刻化させ、なかでも2つのエコシステムによって歴史的に支配されてきた産業界の状況が挙げられます。これは閉鎖型とオープンソースに二分されるスマートフォンの状況と同じです。この比喩をさらに進めると、オープンソースの一層「オープン」な性質と、閉鎖型の独占システムは、いくつかのコミュニケーション言語が存在する産業オートメーションの現実に似ています。その会社の既存のコミュニケーション言語への忠誠とは関係なくシームレスに運用されるインダストリー4.0の未来は、インダストリー4.0の完全な実現を支えるオープンさのビジョンだと言えるでしょう。

モレックスが第三者調査機関であるDimensional Researchの協力で最近実施したインダストリー4.0の現状調査によれば、製造業の世界を作り変え、完全に自動化されたエンドツーエンドの製造により数十億ドル規模の収益を生み出すというインダストリー4.0の当初の構想は、いくらかの進歩は見られるものの実現には至っていないというのが大方の意見です。この調査は産業オートメーションのビジネスケースに基本的な瑕疵がないか精査し、また主な障害となるのは何だろうかという点について検討しています。

調査回答者は、「既存の通信プロトコルは制限が厳しすぎる」とし、39%は現在のリモートアクセスは限定されすぎていると考えています。しかし、36%は従来のソリューションは現在のニーズに適切であると考えています。通信プロトコル、特にリモートアクセスに不満があることは明らかで、また、回答はさまざまな形で、技術の導入に明確なハードルがあり、またITとOTの間の対立のようなものも障害となると答えています。

密接なコラボレーションが極めて重要

多数の通信オプションの中で顧客をどのように導くかという非常に現実的な課題に直面したモレックスは、密接なコラボレーションへの明確なニーズがあることを発見しました。実際、私たちは最大の障害は長年にわたる特定のオートメーションシステムに関するものであることに気づきました。そのインフラストラクチャ関係のサポートシステムや、それらのシステムの管理までもがすべて、何年も前に確立しており、そのシステムに関連して構築された収益性のあるビジネスモデルもまた、何年も前に確立しています。今日の問題は、リモートアクセスがこれらのモデルに対する脅威であるとみなされ得ることです。現実には、多くの産業シナリオにおいて、人による物理的介入がいまだ必要であり、つまり、純粋なリモート管理運用は数年先になる可能性が非常に高いと思われます。

たとえば、自動車オートメーションの分野では、今日の車両モデルそれぞれに必要な技術的アップデートの大半が、ファームウェアとソフトウェアです。これらはリモートで提供できますが、リモートアクセスモデルを可能にするプロセスへの移行が、実際の導入速度を鈍化させています。

ショップフロア自体が同じような状況を示しています。通信に関してはマシン間では8つもの異なる言語が使用されています。ProfinetやEtherNet/IPなどのデジタル言語は、DeviceNetやProfibusなどのレガシーオプションと競っています。業界における主要課題は、これから構築される新しい工場が、レガシー通信技術を使用し続けるように構築されることです。

業界がEtherNet I/Pなどの後の世代のイーサネットベースのプロトコルを採用すれば、イーサネット接続は速度面で大きな利点があり、より多くのデバイスに接続する能力もあるため、企業へ大きな接続をもたらすと期待されます。しかし、産業全体は色々な理由からそれを見逃しており、そのサービスレベルではイーサネットはコストが高くなります。現在観察される状況は、誰が、いつ、どの技術を使用するかについて混乱した状態であり、一連のプロトコルを効果的に接続するにはどうしたらよいかが見えてこない状況です。言語について心配せずに、データに焦点を当てることができる地点まで進むには、どうすれば良いのでしょう?

プロトコルにとらわれないことへのニーズ

この難しい状況を認識し、モレックスはプロトコルにとらわれない技術を使用して顧客に対応します。このモレックスの中心的価値観は、プロトコル、デバイス、およびネットワーク上のその他のデバイスに関わらず、機能的に安全なメッセージ機能を導入するよう業界を導く上で役立ちました。「機能的に安全」とは、どのメーカーのどのデバイスであっても、安全にネットワークできることを意味します。安全および安全ではないI/Oメッセージの両方が、同じデバイス上で統合されるため、デバイスを分離する必要がありません。

「実践的にプロトコルにとらわれない」とは、必要とされ要請されている機能的に安全なテクノロジーを組織に提供できることを意味します。たとえばモレックスは、Profinetテクノロジーのプロバイダーとして、モレックスコピテンスセンターを通じて技術開発とテクニカルサポートを提供し、Profinet仕様プロセスに積極的にエンジニアを参加させることにより、インダストリー4.0を推進するための主要な役割を担っています。

同じように、イーサネットの最新のバージョンであるシングルペアイーサネット(SPE)は、IIoTとインダストリー4.0の成長を推進することを目標とした規格の確立を意識的に試みています。この試みを先導するのは、シングルペアイーサネット産業パートナーネットワークであり、モレックスはその長年のメンバーです。

「実践的にプロトコルにとらわれないこと」の2つめのメリットは、特定のプロトコルを使用する代わりに、プロトコル間の通信を可能にするレイヤーを提供するという自由さです。これにより、投資を正当化し推進する、真にビルトインされた効率がもたらされます。

グローバル規模の変化をもたらすために、大手メーカーは、インダストリー4.0の未来に影響を与えると同時に、モレックスのようなプロトコルにとらわれないサプライヤーと連携する技術的な活躍の場を作る上で中心的役割を果たさねばなりません。技術的にプロトコルにとらわれないアプローチに対し、真の納得できるニーズと希望が存在します。どのようなデバイスでもネットワーク上にデプロイし、オープン環境で設定できる方法です。楽観的に考えると、アプリケーションの優位性が、アカウント所有権より重視され始め、特定の通信プロトコルに対する歴史的な偏見を軟化させつつあります。

インダストリー4.0の目標

産業オートメーションの通信プロトコルとシステムにおけるプロトコルにとらわれないアプローチを実装する第一歩では、比較的深く根差した文化的スタンスを「かき回す」必要がありました。次のステップでは、いくつかのハードルに取り組まねばなりません。グローバルな境界を潜在的に超えること、リモートアクセスを定義し洗練させること、そして新しいトレーニング手順とビジネスモデルを確立することです。インダストリー4.0とともにいくつの自動化セグメントを横断するときも、私たちを導く最重要ニーズは、前向きでしっかりかみ合った顧客との長期的な関係です。これらのユースケースは、モレックスブランドの約束である「Creating Connections for Life」の最高の具現化であり、私たちは顧客とのコラボレーションを推進してインダストリー4.0の最終目的へのスムーズな道を設定します。