産業とアプリケーション
ケーブルアセンブリーの設計は家を新築するようなものです。つまり、屋内の他のエリアの配置を支える基礎の設計から始め、建物まわりを設計していきます。家屋の基礎部分は、家屋の全体的な強度、形状、将来的に屋内に入るもの(例: 家具、映像記憶物、人)から検討を始めます。家の新築とほぼ同じように、その基礎、すなわちこのケースにおいてケーブルアセンブリーの金型用ツールは、有益な内容物(コンタクト、PCBなどのコンポーネント)を最終的にカプセル化することになります。高品質のカスタム医療用ケーブルアセンブリーの製造は通常、適切な金型の設計と製作から始まります。
金型用ツールの設計要件
美観的または触覚的考慮から外型を設計するのか、あるいは機械的安全性の向上、容易なカプセル化、独自のストレインリリーフを目的として内型を設計するのかにかかわらず、金型設計はほとんどの新規ケーブル開発プロジェクトの重要な部分です。ケーブルまたはコネクタープロジェクトにエンクロージャー、ハンドル、スイッチ、カスタムのノーズピースが含まれる場合、エンジニアリング作業と設計作業も必要です。
設計要件には以下が含まれる可能性があります。
- カプセル化: 重要コンポーネントを封止するための内型(例: PCB、レジスター、コンデンサー)
- 柔軟性: 柔軟性を高めるために、ストレインリリーフは、構造的完全性、柔軟性、ケーブル材料とコネクタやグロメット間の全体的な堅牢性を維持します。
- グリッピング: 使いやすくするための、コネクターのオーバーモールドに組み込まれた滑り止め付きのフィンガーグリップ。
- セキュリティ: コネクターを正しい位置に固定し、使用中の断線を防ぐラッチ機能。
- ハンドリング: 柔軟な操縦に向けた独自設計のハンドル。多くの場合、外科的アプリケーションに望ましい。
金型用ツールの設計では多用途性を最大限に確保できる可能性があります。つまり、金型のコンポーネントを互換性を持たせて設計するということです。多くの場合、特定製品の構成は顧客によりさまざまです。互換性のある金型用ツールによって、さまざまなケーブル径、リード線の数、スナップなどに対応できます。金型用ツールは一般的に、SolidWorksやPro/ENGINEERなどの3Dモデリングソフトウェアを使用して設計します。
金型用ツールのコンポーネント
インサート成形用のツールを構成するコンポーネントは汎用的で、一般的に以下のものが含まれます。
- 金型キャビティ: 金型キャビティは成形コンポーネントの本体を製造します。
- ローディングバー: オーバーモールドのプロセス中に、コネクターのハウジング、ピンなどのコンポーネントを金型内の正しい位置にしっかりと保持します。
- グリッパーバー: オーバーモールド中にストレインリリーフから出るケーブルを正しい位置に保持します。多くの場合、同じコネクターでさまざまな全径のケーブルを使用できるようにするのが望ましく、グリッパーバーツールがストレインリリーフツールと別の場合は、これを簡単に実現できます。
- ストレインリリーフ; コネクターとケーブルジャケット材を接合し、潜在的に封止する、ソリッドまたはセグメント化されたベンドレリーフを成形するツールの一部分
金型ツールの設計
使用目的や機能によって金型ツールの全体的な設計が決まりますが、ケーブル材やコネクターの選択も重要な役割を果たします。既製のコネクターやカスタムコネクターの場合、ケーブルアセンブリーには通常、内型、外型、ストレインリリーフという3つのツールが必要になります。多くのコネクターメーカーは、カスタムオーバーモールドのストレインリリーフに対する代替策として組み込み済みのスリップオン「ブーツ」を提供しています。既製のコンポーネントを使用することで全ツールコストを削減できる可能性がありますが、組み込み済みブーツにかかるコストは通常、カスタムオーバーモールドのストレインリリーフよりも高額になります。このプログラムの全期間にわたり、カスタムオーバーモールド ストレインリリーフは一般的に、パーツコストが比較的安価であることからコスト削減につながるでしょう。すべての製品要件に適合する既製のコネクターを入手できない場合、カスタムコネクターまたはハイブリッドコネクター(既製コネクターの改良版)を設計することが可能です。一般的に、カスタムコネクターには、コネクターハウジング、ノーズピース/コンタクトインシュレーター、ラッチ、その他のコンポーネントを成形するための複数のツールが必要です。製品設計を考慮することに加え、金型用ツールの設計立案時にも重要な考慮事項があります。つまり、成形される材料、ショットサイズ、最終的に成形される部品の肉厚、ツールの製造に使用する原料などです。
インサート成形の場合は特に、ゲートの位置とサイズが重要な役割を果たします。ゲートは、溶融プラスチックが金型に射出される時に通過するオリフィスです。肉厚を均一にし、ひけを抑制し、成形ボイドを排除し、ゲートの痕跡を減らすことはすべて、ツール設計で考慮すべきポイントです。金型用ツールを設計するエンジニアは、材料のフローと組成も考慮することになります。一般的に、ポリウレタンの場合、Santoprene®やPVCといった熱可塑性樹脂よりも大きなゲートが必要です。
容易に視認できる補助線(パーティングラインとも呼ばれる)は、分割された2つの金型の接合部分で発生するもので、一般的に望ましくないとされています。バリ(金型からはみ出した余分な材料)を減らせるように金型用ツールを設計立案することも、設計時のもうひとつの考慮事項です。
超音波溶着用のツール
超音波溶着は、コネクターの本体やハウジング向けの、インサート成形の1つの代替策です。通常、2ハンドのプラスチックシェル(別名: クラムシェル)が射出成形されます。このシェルは、超音波溶着のプロセスを通して適切な取り付けと封止を実現できるように設計されています。シェルのうちの1つは通常、嵌合シェルと接触するスパイクエネルギー検知器とともに設計されます。超音波振動に起因するエネルギーは、強力で一般的には恒久的な接合をコンタクトが生み出すタイミングで材料を溶融させます。
超音波溶着用のツールには、部品が保持される金床(アンビル)や入れ子、振動エネルギーを増幅させ、接合する部品に振動エネルギーを搬送するホーンが含まれます。金床やホーンは通常、アルミニウム合金、チタン合金、ステンレス鋼で製造されます。超音波溶着用ツールの設計と製造は、多くの場合、使用を計画している超音波溶着機のメーカーと契約します。
同一金型からのノットカット
金型用ツールは多数の材料から製造することができます。医療用ケーブルアセンブリーの製造に最もよく使用されているのは、アルミニウム、ステンレス鋼、硬化鋼です。金型用ツールの製造に最適な材料の選択は、生産量とプログラムの予測寿命によって決まります。金型材料の2大タイプとして以下のものが挙げられます。
アルミニウム:
- 小規模量産での製造に一般的に使用される
- 試作品の製造や、ツールと部品の設計の実証によく使用される
- 軟性の材料であるため、耐用年数が比較的短く、硬化鋼よりも製造されるパーツが少ない
- ツール製造のリードタイムが短い
- スチールよりも低コスト
硬化鋼:
- 大量生産での製造に最適
- 実証済みの設計や仕様凍結された設計に適している
- 耐用年数に優れ、通常は最大100万パーツに対応
- 一般的に製造コストは高いものの長寿命
また、ツールの材料の選択は、使用される樹脂にも左右されます。熱可塑性樹脂(PVC、TPE/TPR、TPUなど)は、加熱してコールドモールドに射出される常温成形材料です。これらの樹脂は、アルミニウム、ステンレス鋼、硬化鋼の金型を使用して成形することが可能であり、通常、製品の設計、機械的仕様、コストなどの考慮事項を踏まえて選択されます。ほとんどの熱可塑性樹脂は、アルミニウムまたはステンレス鋼を使用して成形できます。
液状シリコンゴム射出成形(LIM)のアプリケーションの場合、冷却された液状シリコン樹脂をホットモールドに射出すると、そこで加硫が発生します。そのため、シリコン樹脂を流し込むツールには硬化鋼が使用されます。液体シリコンはよどみなく流れ、熱可塑性樹脂に比べてバリに強い傾向があります。したがって、シリコン金型は、どのような材料であっても金型からバリとして漏出する隙間が事実上存在しないようにするために高精度で設計・製造する必要があります。
シングルキャビティ金型またはマルチキャビティ金型
製品の寿命期間全体における製造ボリュームは、いくつのキャビティを設計してツールに組み込むべきかを検討する際の重要な要素になります。マルチキャビティ金型は一般的にコストが高いものの、一度に2つ以上の部品を成形できるため、アウトプットを増やし、成形済み部品1個あたりのコストを抑制することもできます。シングルキャビティでツールを設計・製造すると、マルチキャビティツールよりもコストを抑えることができますが、先行コストが製造単位コストの高さで相殺される可能性があります。
コラボレーションとタイムライン
顧客とのコミュニケーションと設計情報は、ツールの設計と納期達成にとって非常に重要です。顧客のエンジニアリングチームとケーブルメーカーのエンジニアリングチームの間で早期に定常的な連携を構築することはプロジェクト全体において重要ですが、製品設計の仕様が凍結されるまでの間、その重要性はもっと高まります。ツールの製造は通常、プロジェクトの中で8~14週間という最長のリードタイムを持つ項目です。ツールを組み立てている間に、ドキュメントを完成させ、コンポーネントを発注します。週次の設計レビューを計画することは、顧客とケーブル製造パートナーの双方が目標どおり、予定どおりに進んでいること、そして既定の製造要件に適合していることを確認する上で役立ちます。
ツールのオーナーシップ
通常は、OEM顧客が製造ツールの支払いを行うことから、その所有権を持ちます。この場合、そのツールは、そのツールの所有者の製造部品にのみ使用されます。場合によっては、OEMは、独占的使用でなければ、ツールのコストとオーナーシップを共有する選択をすることもできます。アフィニティなどのケーブルメーカーの場合、共通するコネクターやコンポーネントのツールを所有し、非独占的な基準でツールコストをほぼかけずに使用できる可能性があります。
概要
金型用ツールの設計は、ほとんどのカスタムケーブルアセンブリーに欠かせない部分であり、概念から設計仕様凍結に至るまで、プロジェクトの基本的な焦点にする必要があります。コネクターやケーブルアセンブリーがどのようなものになるか、それがどのように使用されるのか、そしてその製品の望ましい寿命を理解することは、ツール設計にとって極めて重要です。
アフィニティのエンジニアリングチームは、金型用ツールの設計から、医療用ケーブルアセンブリー向けの機械的・審美的な機能への対応に至るまで、何十年にもわたる経験を有しています。次の新しいケーブルやコネクターのプロジェクトはぜひ当社にお任せください。
詳細につきましては、最寄りのモレックスのセールスエンジニアまたはアカウントマネージャーにお問い合わせいただくか、アフィニティ(電話: +1 949.477.9495)にお電話いただくか、電子メール(custcare2@molex.com)でお問い合わせください。